鐘の音が響く時――…。( 初心者のための小説投稿城 )こんにちは!!! 2012/02/14 15:44 No.0
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主な登場人物。
・秋空桔梗 (女) 17歳
・柏原紅葉 (男) 17歳
鐘の音が響く時――…。( 初心者のための小説投稿城 )こんにちは!!! 2012/02/14 15:44 No.0
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主な登場人物。
・秋空桔梗 (女) 17歳
・柏原紅葉 (男) 17歳
看護師さんがそう言うと、紅葉の顔から笑顔が消えた。
「じゃ、行って来るわ」
紅葉は移動可能なベッドの上で仰向けになった。
「紅葉…」
私はか細い声で紅葉の名前を呼ぶ。
「御守りなら持ってるから心配すんな、じゃあな」
紅葉は笑顔で運ばれて行く。
私はその後を静かに追った。
紅葉が手術室に運ばれて行く…。
待って…!!
本当は離れたくないの…!!
一秒でも一緒に居て!!
私が手を伸ばしても到底紅葉に届く訳でもなく、手術室に紅葉は入って行った。
手術室の扉は閉まり、私はその目の前で座り込んだ。
手術って何時間で終わるの?
何時終わるの?
紅葉…死なないよね?
そう思うだけで自然と涙が太ももに落ちてくる。
上を見上げると、『手術中』と言う赤いランプがついている。
…結局私には何も出来ない。
紅葉の為に出来る事が何一つ見つからない。
私って生きてる意味なんてあるのかな?
ふと私の心の中に“後悔”と言う二文字の言葉が残る。
後悔…。
私はこんな時にまで馬鹿だよね?
…そう言えば、紅葉は月になりたいとか言ってたよね?
私が‘太陽’で紅葉は‘月’で…凌君と凜ちゃんが星で、朱希は雲…。
ショコラは空だっけ。
月ってやっぱ満月?それとも三日月?
…そこら辺、分かんないや。
私は地面から立ち上がり、手術室の横にあるソファに座った。
…でも何で太陽?
全然明るくないし、寧ろ無責任だよ?
紅葉は何処を見て私を太陽だって判断したんだろう…。
性格?
それとも見た目?
…どうなんだろう。
「ふぁ〜」
それにしても眠たい。
私は急激な眠気に襲われて、ソファに蹲って目を瞑った。
―――――――…。
あれからどれぐらい眠っているのだろうか…。
不意に私は目を覚ました。
「あら、やっと起きたわね」
私の隣にはお母さんの姿が。
お母さんは花束を抱えていた。
「お母さん…」
「結構爆睡だったわよ…、良く眠れたかしら?」
「うん…てか、今何時?」
「もう夕方よ…今は6時をちょっと回った所」
夕方…?
もう8時間以上も寝てたんだ…。
「紅葉は…?」
「…それが困難みたいで…」
困難だって…?
そんなの…嫌だよ…。
「後、何時間で終わるか分からないの…。
でも最低3時間はかかるって言った所ね…」
「3時間…」
その言葉が頭の中で何度も木霊する。
「もう嫌…!!!」
私は立ち上がり、その場を逃げ出した。
はぁ…はぁ…。
あれから私は病院を出て家に向かってたんだ。
病院に居るのがどうしても嫌だった。
嫌で嫌でたまらなかった。
病院に居ると最悪のビジョンが頭を過る。
それだけは避けたかった。
私の足はいつの間にか寺の境内に居た。
家には入りにくくて私は鐘突き場の鉄格子の所に座り込んだ。
もうどうすればいいんだろう…。
そう思った直後だった。
『何してるの?こんな所で』
その声に私は寺の出入り口を見ると、一人の少女がこちらを見ていた。
年齢は約14歳ぐらいの女の子で、髪は栗色で背中までストレートヘアーである。
二重目の瞳に、綺麗なピンク色の唇。
いかにも気品のある女の子だった。
帽子は麦藁帽子を被っている。
服は白い清楚のワンピースで、胸元に白いリボンがついている。
靴はサンダルだった。
身長は155pぐらいだった。
『何か悩んでるの?』
少女は私の隣に腰掛ける。
「うん…、私馬鹿なの…物凄く。
好きな人が頑張ってるのに…その場から逃げたんだもん…」
『何で逃げたの?』
「病院に居ると最悪な事ばかり考えてしまうの…」
私は蹲って答える。
『…好きな人が頑張ってるのに、自分だけ逃げるなんて不公平だよ?
一緒に戦おうって言う気にならないの?』
少女のその言葉が心に重く圧し掛かる。
「思わない…よ」
『そうやって自分を傷つけても何の得にもならないわ。
返ってくるのは“苦痛”だけよ?
ま、気づけるまで自分を痛めつけて苦しむ事ね』
少女の毒舌な口調に私は心が折れそうな気分になる。
「そんなの…!!「貴方には一生分からないと思うわ!」
「その男の子…知らないわよ?死んでもいいの?」
この少女は私を弄んでるの…?
口調も軽々しくて心が痛む。
「……」
「何も答えないのね、そのまま逃げてしまえば楽よ?逃げちゃえばいいのにね」
この少女は私を試しているの?
「…私は逃げない。貴方にどう言われても逃げないよ」
「…じゃどうするの?」
「向かうよ…何処にも逃げないよ、私は信じる…!!!」
私は右掌を強く握り締めて、鐘突き場から降りた。
『そう…それを訊いて安心したわ』
少女はそう言ってその場から降りて、私に笑顔を見せてくれた。
「えっ…?」
『それと、何時も私に逢いに来てくれてありがとうね』
少女はそう言うと、霧が少女の全体を包むように消えて行った。
何なの…今の……。
まさか幽霊!?
でも‘逢いに来てくれてありがとう’ってまるで私を知ってるみたいな言い方だった。
それに紅葉の事だって…。
それに、あの子が消える前何か奇妙な物見たような…。
気のせいかな?
悩んでいてもしょうがない。
…病院に戻ろう。
そう心の中で呟き、私は寺を飛び出した。
私は息を切らしてでも、全力疾走で紅葉の居る隣町の病院に向かっていた。
ただ、此処から隣町まで歩きだと大分時間がかかる。
車だと10分ぐらいで着くが、歩きだとその2倍、20分は余裕でかかる。
それでも私は病院に向かっていた。
足が裸足だから、少し足の裏が痛い。
でも右足の裏はハンカチで包んでいる為、あんまり痛くない。
「やっと着いた…」
30分かけて病院に到着した時には、辺りは暗闇に包まれていた。
痛い…痛いよ…。
私は足元に目をやると、両足は泥だらけだった。
そりゃ走って来たし、途中で沼に浸かっちゃうし。
うぅ…合わせる顔はないのと同じかも。
そんな泥だらけの足で私は病院の中に入った。
病院の中に入ると、辺りは薄暗かった。
ロビーには誰も居ない。
天井の蛍光灯も点滅しながらついている。
「桔梗!?」
その声に私は立ち止まった。
前方を見ると、明らかに誰かが居た。
でも辺りは薄暗いので、顔までは認識する事が出来なかった。
でも藍だって事には分かっていた。
前方の影は、私に近づいた。
「アンタ…何処行ってたのよ!!」
藍は私に近づくと、私の右頬を思いっきり叩いた。
ヒリヒリした痛みが徐々に頬全体に伝わっていく。
「家に帰ってたの…」
咄嗟に嘘を吐く私。
「紅葉が頑張ってるのに、アンタは逃げてどうすんの!!
死んでもいいって言うの!!!!?」
藍の‘死’の言葉に私は涙を流した。
死…。
そんな言葉を訊くの今日で二回目だ。
「私…逃げないもん…逃げないから…」
「そんなの口先だけじゃない!!アンタはそれを行動に移した事ある?」
藍の尖った言葉が私の心に突き刺さる。
「アンタは何時も紅葉に迷惑掛けて、無責任で身勝手で人の気持ちなんて考えた事無かったんでしょ!!
紅葉はアンタに優しいからそんな言葉投げつけないけど、内心ではそう思ってるよ!!
あたしは今、紅葉に変わってアンタに説教してるのも分かってるの!?」
私は唇を噛み締めた。
微かに血の味もする。
「紅葉の手術…後2時間ぐらいで終わるみたいよ」
「えっ!?」
私の驚きの声に藍は冷たく言い返した。
「なんて…言うと思った?」
藍の言葉は嘘の言葉だったんだ。
一瞬でも信じた私が馬鹿だ。
「でも、本当の所…どうか分からないんだけどね」
「ま、とりあえず椅子に座ろう!あっちの椅子で」
藍は強引に私の左腕を引っ張り、通路に入って行く。
「……」
私は黙って藍に着いて行く。
強引な所は昔から何一つ変わってない。
「さ、此処に座って」
藍は私を手術室の近くのソファに座らせる。
座らせると言うか座らせたに近いけど…。
「で、何で紅葉と向き合おうとしないの?
アンタだけ逃げてたら、紅葉も逃げて行くと思うよ」
何時になく藍の言葉は私の心を目掛けて投げつけて来る。
まるで八つ当たりのように…。
「紅葉が何で肺ガンの事、今まで桔梗に黙ってたか分かる?」
藍の言葉に私は首を横に振る。
「全部桔梗の為だったって事も分かってる?桔梗を苦しめない為に今の今まで黙ってたんだよ?」
藍の顔を見ると、目元に涙が滲んでいた。
泣きたいんだ…きっと。
「苦しめない為って…?」
「…本当は肺ガンって分かったのは、2ヶ月前なんだってさ。
でも2年前に肺炎になったんだってさ…紅葉」
藍はポロポロと涙を零しながら言った。
肺炎…だって?
訊いてないよ…そんなの。
だってあんなに元気だったのに…。
「ま、紅葉には口止めされてたからあえて言わなかったんだけどね。
でも紅葉を絶対責めたら駄目だから!!何が合っても絶対怒っちゃ駄目だから!!
分かった?」
「…うん」
私はただ頷く事しか出来なかった。
頷く事は出来ても、私の心は晴れる事は無かった。
“肺炎”と言う二文字の言葉が頭の中を走馬灯のように駆け巡る。
何で言ってくれなかった?
私の為と思って言わなかった?
何でそんなに気遣うの?
「ねぇ…藍、紅葉は何で私だけ言わなかったの?
何で藍には言ったの…?」
私は震えた声で藍に問い掛けた。
「そんな事も分からないの!?
紅葉はアンタを守りたいの!!傷つけたくなかったのよ!!」
…えっ?
傷つけなくない?
私を…?
「傷つくアンタなんてもう見なくないのよ…紅葉は」
藍は苦しそうに言った。
「そこまで気遣ってくれる紅葉を桔梗はどう受け止めるの?
紅葉は言ってた。“アイツを守れるのは俺だけだから”って嬉しそうに…」
「それって何時…?」
「去年よ…放課後にいきなり呼び出してそれ言ったの。
“藍もアイツを支えてやってくれ”とも言ってた」
…何処まで紅葉は私を気にしてくれるんだろう…。
何処まで…私を――――…。
「あ、もう9時じゃん!もういいや、明日も学校休もうっと」
と、呑気に言う藍。
「私を傷つけるってどう言う事?」
「…要するに自分の放った矛先(ほこさき)が桔梗に向くって事。
あれ?説明になってないような…」
矛先…?
「…紅葉はアンタを傷つける度に、自分を傷つけてるの。
きっと身体にはその‘証’も残ってると思う」
藍がそう言った直後だった。
『手術中』と言う赤いランプは消え、手術室の扉がゆっくりと開いた。
「桔梗…手術終わったみたいだよ…?」
藍がそう言って私が横を振り向くと、移動ベッドに乗せられた紅葉の姿が目に映った。
「紅葉…」
私は紅葉に駆け寄り、必死に問い掛けた。
紅葉の口元には酸素マスクがつけられ、目を瞑っている。
どうやら眠っているようだった。
「紅葉…!!」
血も通ってる…。
きっと大丈夫。
「あの…柏原さんは大丈夫なんですか?」
藍は落ち着いた口調で言った。
すると、紅葉の担当医らしい人物がこう告げた。
「手術は無事成功致しました。ただ5年未満は再発の可能性があるので覚悟しておいた方が良いと思います。
まだ治った訳ではありませんからね」
担当医はそう言って紅葉と共に去って行く。
でも、紅葉は助かったんだ―――――…。
良かったぁ…。
安心したせいか全身の力が抜けた。
「ちょっと桔梗!!」
藍のお陰で私は胸の疲れが少し取れたような気がした。
紅葉は生きてるんだ…。
神様が救ってくれたんだ…。
良かったぁ…。
「紅葉は生きてるんだよね?嘘じゃないんだよね?」
「嘘じゃない嘘じゃない。嘘だと思ってるならこれでどうよ」
藍はそう言って私の両頬を横に引っ張る。
「いだだだ!!!」
「ね、嘘じゃないでしょ?夢でもないの」
「やったぁ…」
どうしよう…素直に喜べない…。
「顔が何時も以上にニヤけてるよ?」
藍はニヤニヤしながら言った。
「藍だってニヤけてるよー!!」
私もニヤニヤしながら言った。
「さ、紅葉の様子を見に行こう!!」
此処に来て藍は凄く機嫌が良さそうだ。
「あ、でもまず桔梗が行きなよ、あたしは後でで良いからさ」
紅葉はすでにベッドの上に寝かされていた。
看護師さんも居ない。
紅葉の傍には私の知らないたくさんの機械。
その中の一つの機械は心臓の心拍数を表していた。
心拍数の数値は『40』になっている。
安定なのかな…。
「き…きょ…う…」
紅葉の苦しそうな声が私の耳に響く。
えっ?
私は紅葉の顔を見た。
相変わらず荒い息を吸ったり吐いたりを繰り返している。
今のは空耳だろうか?
いや、違う。
空耳なんかじゃ…ない。
紅葉の右手が微かに動いていた。
「紅葉…!!」
私は両手で優しく紅葉の右手を握り締めた。
すると、微かに紅葉が握り返してくれた。
「桔梗…俺…生きてるんだよな…?」
紅葉は涙声になって呟いた。
「もちろん!!生きてるに決まってんじゃん!!!」
私は目元に溜まってた雫を全部流した。
「…夢ん中で朱希に逢って来た…」
朱希に?
「…俺は守ってられないから、後は頼む。って軽々しく言いやがった」
紅葉は苦しそうではないようだ。
息も整っている。
「一瞬、カチンって来たけどな」
紅葉は笑いながら言う。
「そっか…」
「桔梗、指輪つけてるか?」
紅葉に言われ、私は左手を紅葉に見せる。
「もちろん、紅葉は?」
「俺も嵌めてるよ」
紅葉は左手を私に見せる。
そこにはちゃんと薬指に指輪が嵌めてある。
「これって友情と愛の証なんだね…私と紅葉の」
「随分と大げさな言い方だな」
紅葉は笑いながら呟き、口につけていた酸素マスクを外す。
「ちょっと…大丈夫なの…外して」
「大丈夫だ、そんなに心配すんな」
紅葉は微笑んだ。
無理してる感じもない。
「ねぇ…私を傷つける度に自分を傷つけてるって本当なの…?」
私が言うと、紅葉の顔から笑顔が消えた。
「…藍から訊いたんだろ?」
「…うん…ごめんなさい」
本当は訊いちゃ駄目なんだって分かってる…。
でもどうしても理由が訊きたいの…。
本人の口から真実を知りたいの。
「…本当はこんな事言いたくないんだけどな」
紅葉はそう言うと、服の袖を捲り上げた。
そこには包帯が巻かれてあった。
「これが俺の傷だよ、見せたくないから包帯がしてあるけどな。
でも見たいんだろ?なら見せてやるよ」
すると紅葉は腕の包帯をスルスルと外し始めた。
「…っ」
私は思わず目を逸らした。
見るに耐えなかった。
全体的に切り傷なのだが、その中心にゼリー状の血と古い血が混ざり合っていた。
「逸らすのも分かる」
すると、紅葉はまた包帯を巻き始めた。
「…何でこんなになるまで抱えてるの…私に少しぐらい押し付けてよ!!」
「ごめん……」
紅葉は優しく私の身体を抱き締めてくれた。
「無責任だから?身勝手だから?迷惑掛けたくないから?
私だって紅葉の役に立ちたいよ…ずっと守られるのは嫌だから…」
紅葉は黙っている。
「亀みたいにさ…卵の殻を破って前に進んで行くじゃない?
私らもあんな風に前に進めたらいいのにね」
「…ごめん、本当にごめん…」
紅葉は必死に涙を堪えていた。
「これから抱え込まないで、私に何でも話してよ…」
私は紅葉の背中をそっと撫でる。
「ありがとう…桔梗」
紅葉は優しく私の口を塞ぐ。
と、その時だった。
「紅葉ー!」
藍の声で私達は離れる。
藍のせいで場の雰囲気は台無しだ。
「何だよ…藍かよ…」
紅葉は呆れ顔で言った。
「悪い?てか、今チューしたでしょ?バレバレだよ?」
と、ご機嫌な藍。
「何?悪いか?」
と、堂々としてる紅葉。
「いや別に悪くないんだけどね…人前でチューするのはどうかと思うんだけどね」
藍はニカッと笑う。
「完全にからかってるだろお前…てか、桔梗に口止めしてた事何でバラすんだよ!!」
「別にいいじゃん、今しか言う時無かったんだから!!
後ね、あたしが紅葉の変わりに桔梗に説教しといてやったから気にしなくて結構よ」
と、笑いながら言う藍。
この二人は何処まで仲が良いんだろうと間じかで見る私。
この先もそんな関係が続くといいな…。
「ちょっと桔梗!紅葉を何とかして!!」といきなり振られ戸惑う私。
「はーい…」
私は渋々了解した。
エピローグ
それから2日間ぐらい、紅葉は病院に居て、その次の日に無事退院した。
その時にはお母さんや紅葉のお母さん、凜ちゃん、凌君、藍まで来てくれた。
紅葉のお母さんは顔を真っ赤にして、怒っていた。
そんな様子に見向きもしない紅葉は至って冷静だ。
「さっさと行くぞ」
紅葉は強引に私の腕を引っ張った。
「ちょっと何処行くのよ…!!」
強引に私を連れ去る紅葉に必死に抵抗するが、無理だって事は分かっている。
私は渋々紅葉の後に着いて行く事にした。
「此処…」
紅葉が私を連れて行った所は、私の境内内にある鐘突き場だった。
「何で此処なの?」
「何でって約束したじゃんか、復帰祝いに此処鳴らそうって」
そう言って紅葉は鐘突き場の鐘突き棒から垂れ下がってる紐を握る。
そんな約束したっけ?
私は度忘れしてしまったようだ。
ま、いいや。
「そうだね…」
と、誤魔化す私。
「今、嘘吐いただろ?バレバレだけど」
と、笑う紅葉。
やっぱ抗えない敵は紅葉だな…。
「…さ、鐘鳴らそうよ」
「シカトかよ、そーゆうの止めてくんね?」
と、紅葉は文句を言う。
「シカトじゃないよ…ただしょーもない話すんなって事!」
そう言って私は紐を両手で握る。
「しょーもないって失敬な、ま、いいや」
「よーし、鳴らすぞ!!えーい!!」
私と紅葉は息ピッタリに鐘を鳴らした。
ゴーンと鈍い音が辺りに響き渡った。
「これでOKなんだよね?」
「俺に振るな」
「そう言えば昨日…此処で女の子に逢ったんだよ」
「女の子?」
紅葉は悩んだ顔をする。
「うん、身長はこれぐらいで、14歳ぐらいの女の子だった気がする。
髪は栗色で、性格は毒舌だったなぁ…」
私は上の空で言った。
「へ〜」
興味なさそうに紅葉は呟く。
「また逢えるといいなぁ…あの子に」
私は鐘突き場を降りて、上を見上げた。
空は真っ青で吸い込まれそうな澄んだ青色。
雲一つない碧天(へきてん)。
「綺麗…」
言葉に表せないほどの美しい空――――…。
「何呑気に空なんて見てんだよ…」
背後から紅葉の声がする。
「煩いなぁ…せっかくの雰囲気が台無しじゃん」
私は頬を膨らます。
「雰囲気なんてないない」
コイツはどうも人の文句を言う。
はっきり言ってウザイ。
でもウザイ所が何処か憎めない。
狡い(ずるい)奴だ。
「ねぇ…この先の未来に私達は居るのかなぁ…」
不意に呟く私。
「居るさ、絶対」
「そうだよね…もし、二人で生きる事が出来たら何かご褒美くれる?」
「何でプレゼント方式なんだよ…嫌(や)だよ」
おお!!!
何か知らないけど…紅葉は拗ねてる…!!!
「じゃ、また考えとくね」
そんな紅葉を無視して、私は寺の出入り口から外に出ようとした。
「俺の言う事は無視かよ…身勝手な奴…」
紅葉は呆れ顔で私の右手を握る。
「ちょっとっ…」
「何?嫌?」
冷たい目線で私を睨む紅葉。
此処でドS発言するのか?
「嫌じゃ…ない」
「自分に素直になれよ、泣き虫猫」
紅葉は笑いながら私の手を引っ張って行く。
「そのあだ名、止めてー!!!」
私は顔を真っ赤にして怒るが、紅葉はヘラヘラを笑っている。
「今から駄菓子屋に行くか」
その発言は一体何処から来たんだ?
「…はーい…」
私はただそう呟いて、紅葉に着いて行った。
でもその時の私はまだ知らなかった。
この後に待ち受ける“運命”と“絶望”を目の当たりにする事になろうとは…。
誰にも分からなかった。
[続編に続く…]