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カルーシアの竜人

 ( 初心者のための小説投稿城 )
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丸大豆★magy2TXjCl_bH4

お初です!初小説です!読んでくれたら幸いですーー。

初心者なので読むに耐えない文章かとは思いますが生暖かい心で見守ってください☆
ちなみにファンタジー系に。。。なる予定です。

2011/09/12 19:48 No.0
記事メモ2012/03/30 20:20 : 丸大豆★magy2TXjCl_EP8

◆登場人物◆


竜崎礼奈(リュウザキレイナ)・・・主人公。ピッカピカの高校一年生。ボケと突っ込みのハードワークをこなす。

                 異世界に飛ばされるかわいそうな子。


ナーガー・ネ・ギー・・・レイナを異界へ導く謎の長ネギ。喋る。女らしい。(ぶっちゃけどうでもいい)


アレス・・・カルーシアの護国の竜。


リカルド・ヴァン・カルーシア・・・カルーシアの王子様。まさかのどS。


ハルドル・ヴァン・カルーシア・・・カルーシアの王様。見た目がどう見ても20代。


クリスティーナ・バーロット・・・女竜騎士。金髪碧眼の頼れるおねーさん。


ローランド・ルーケンハイド・・・竜騎士。紳士的で優しい性格の青年。


※カルーシアとは国名です。上記2名はカルーシア王家の人間なので苗字に国の名を冠してます。


※この物語は登場人物が大量に出てきますが8割ノイズです。上記だけ分かってればそれなりに楽しめます☆


 ◆あらすじ◆

主人公がネギ抜いたら異世界にいった。

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丸大豆★magy2TXjCl_EP8

数十分ねぎに怒鳴られながら歩いた。
非情にうるさいしうざかったが、一々返事をするのもおっくうなので半分はスルーしていた。

 幸いさっきのかわいそうな熊と緑の悪の化身(ドラゴン)の他には珍獣もーじゅには遭遇しなかった。
これで一安心。
 してらんねぇええぇ!!

と、とりあえず、人探そう人!もしくは生命体!!村娘Bとかでいいから!!
珍獣猛獣に会わなかったってことはもしかしたら人里が近くにある証拠かもしれない。えっ?何?動物なんて寄り付かないほど極悪環境??

そんなの信じたくないし信じない。そんな可能性ない、意地でもないって言ってやる。ねぇーから!

2011/10/17 00:05 No.9

丸大豆★magy2TXjCl_EP8

やっぱ人里があれば畑もあるだろう。畑があればもちろん農民が育てる、ここで動物対策がある。
出たばかりの新芽や収穫前の作物を食われたら元も子もない。
だからそこでウサギ用の罠を張ったり、猪狩りをしたりするんだろう。
それに農村なら猟師と兼業するものだっているはずだ。
小動物や鹿、または鳥なんかが標的。それで絶滅したハトの話を知っている。
だから多分動物が少ないのは人が近くにいるいる証拠だ!・・・と思う。


 願わくば、ドラゴンやら巨大ラフレシアなんかが出てきたので、中世ヨーロッパ風の農村があらんことを・・・


別に日本の古式ゆかしき集落でもいいんだけどね。

ただ、お願いします。どうか高層ビルが屹立していたりアステカ神殿が建っていたりするのだけは止めてください。



 高層ビルなら空気読んで欲しいし、アステカだったら神への供物に捧げられてしまう。
その死に方だけはゴメンだ。心臓ぐりぐりなんて見ているだけで胸が痛む。心臓だけに。
そんなくだらなさ過ぎることを考えてると、右手にぶら下げたネギが声を張り上げた。
「むっ!見よ!!木が少のうなっておるぞ!」
「えっ?あ、ホンマヤー!わーい!!」
「行くぞウスノロよ!向こうに村があるやも知れんな!」
「は、はい・・・お嬢様。。。」
従者ってみた。
これは森つーか林って感じ。
なんだっけ?雑木林っぽい。なんとなーく人の手が加わってますよ感がある。よっしゃあ!当たったぜ!イェイ!
 その辺に茂りまくってる草やら低木やらを掻き分け、明るいほうへ進む。
葉ががさがさいって落ち、足元でバキッと枝の折れる音がする。
入学1ヶ月ほど履きなれたびみょーにフィットしてないローファー(茶)の表面にすこし傷を作った・・・最悪
そして、こんな状況でもローファーを気にすることが出来る私最強!・・・ヒトリツッコミー
「だぁ、誰かいませんかーーー?」

   ――――― いたよ。

            何かいたよ。

バナナのような香りのするアイボリー色のリンゴが実っている木々がいくつも並んでいた。・・・・どんな味だよ。
そして、それを摘みに来ている・・・・多分、村の奴。
ツルか木の枝で編んだ籠を背中に背負っているのは、村娘B


















ではなく、オレンジ色したニンジンだった。
疑うべくもなくニンジンだ。
大きさ30cmくらいの。
もーさんじゅっせんちってなんだよーもー☆
定規かよものさしかよ小学校でもらったアレかよ!!



「シューーール・・・・。」

村娘ニン・ジン子はわたしを見てきゃっ、と女の子らしい悲鳴を上げた。
何だよきゃっ、っておい何だよコラwww
それにくらべわたしは、シューーール・・・・。だし・・・なんだコノ差。おい、何かあるのかコノ差ァ!!
「に・・・・ニンジンが・・・!ニンジンがぁ・・・・!!」
「何だ?どうしたのだ??」
右手に持ってたお嬢様(ネギ)がコクビをかしげなさった(敬)
 ・・・そっか。ネギからすると同じ人なんだね・・・。
あれ?・・・人じゃねぇえーーー!!!
「うわぁぁあああぁあ!!何だよコレェ!何コレェエエェ!!!!!!
どーしてこの世界に来て会うのが熊とかドラゴンとか野菜ばっかなのォオーーーーーー!!!!!??
ギャーーーーーーーーーーーー!!!!」
 ニンジン娘はひぃい!!と怯え村のほう?へと走っていった。
フッ。だが所詮は野菜の足・・・!そんな遠くへは逃げれまい!

 ・・・とか思ってたら何?何ですかーー??何か集団で来てたの??騒ぎ(私の絶叫)を聞きつけたごつい男性×3が来た。
何かニン・ジン子と2,3言葉を交わし

「ねぇ?ネギ?彼らは何を話しているんだろーー?何を喋ってるんだろーー??私をどーするきだろー??」
ひきつる!!笑顔が超ひきつる!!!
ネギは無言だった。

「ウオォーーーーー!!!!」
「うギャーーーーーーーーーーーーーっす!」

男性×3に取り押さえられ、拘束。

・・・やっと、人間に会えたのに・・・。
多分、あそこで叫んだのが駄目だった。
勢いでやった。反省はしていない。

2011/10/18 20:07 No.10

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8




 さて、どうするか。
私は簡単に言うと護送されている。 台車の上で、 ごそーちゅー。
軽トラの荷台に乗っかってるような心地だ。 超ガタガタいうんですけど。
前を一体の馬に引かせている。 ちなみに、私の横には先程のバナリンゴかごに入っている。
…… これから出荷かな?

 でも、 これはイロイロまずいって、 つーかどこに連れて行く気だよ!!
本日一体何回ヤバイ目に遭った? 人生で滅多… いや、確実に、 絶対ない危機に何回直面した??
 はい、即答できません。 歯がゆいな。
男のうち、1人はポジション御者よろしく、 1頭の馬を御していらっしゃって、2人の男は私の両サイドに座っている。…逃がさない、 ということか。

お前を逃がしはしない。
 ――― …変な決意まで、感じるのは気のせい? むしろ木の精??

ちなみに、ネギの奴は、 ひっとらえられて後、 何か村長にあわせろー、 と騒ぎたてあいつだけ村の中に入った。ネギはいいのかよ……。 私はだめだったのに……。

 さぁ、 このまま連行される私! ってどーすりゃいいのコレッ!?
やべぇ、 すっげーガタゴトいうからケツが地味に痛い。
とりあえず、コミニュケーションを図ってみた。
「ポっ…ポンジュース…?」
フランス語調。あれっ?何か違う気がするーーーー!!!!
「えっ?の、飲み物かい……?」
連行係のおじさん(右隣)が少々困った、といいう顔でたずねた。
 やっぱ、無茶振りでしたか。 おかしいな、 普通にコンニチワ言っただけなのにね…。サーセン…。
「い、いえ! ただの挨拶です!!」
おじさんは、 何だコレ? というような異物を見るような目で私を一瞥した。
 おじさんの心しょうが悪くなった。(かもしれない。)
だが、 何を思ったのか、いきなり、ハハハハと笑い出した。

2011/10/26 19:11 No.11

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

…… 何だ? コレは… 私に対する軽蔑の笑い声か…?(← 違います.)

これから、 連行だというのに、 ポンジュースを求める愚かな小娘を笑ったのか…?
(↑ ※だだのレイナの被害妄想です。)

 そして、 ニコニコしながら話しかけてきた。
「いや, あんたも災難だったなお嬢さん。」
なんだ, すごいフレンドリーだぞ…?
そ、 そうか! 惑わされるな私!
これは相手を油断させ、 安心したところで情報を得ようとする心理戦!
「どーしたって、 魔人族がこんなとこに…? しかもあんたは若そうだしな。
 まぁ、 魔人族は長寿だから見た目通りの年齢じゃないだろうがな。 見たところハルマーク人みたいだけど。そうなのかい?」
 おじさんの口調はとても優しげだ。しかし、コレは同情したフリをして相手を油断させるための話術ッ!!(※再びただの疑心暗鬼です。)
「おい、 オッサン。 やめろよ。」
私の左に座ってる男…こっちは年齢的にお兄さんだ。 しかも、先輩ってくらいの年の、 でもそこらへんの高校生と違うところは髪が染めたんじゃなくて、 天然モノの茶髪ってこと。
あと服も、 ガチおとぎ話の村人Aって感じの服装だった。
 お兄さんがけだるそうに言った。
「こいつだって、 きっと好きでこんなところに居る訳じゃないだろ。
きっと何か『理由』があるんだから聞くなんてことすんじゃねぇよ。」
「そっ…そうか、 いや、 ごめんよ。 そんなつもりじゃなかったんだ。」
い……いい奴ぅーーー!!
予想外にいい奴ー!! だが、 これはいい奴アピールをして、 信頼を勝ち取ろうとする薄汚い魂胆!!まちがいない!
(※やっぱし人間不信です。)

おっさんは微笑みながら見てくる。 そこには邪心の欠片もないだろう。
「俺の娘も数年前までこんなだったなー。 今じゃ隣村の男と結婚してな。 あんた見てるとあの子を思いだすんだよ…。」
ピンポーン。 どこかで、 インターホンのチャイム音よりちょっとオクターブ高めの音がした。
聞いてねぇのに何か語り出したんですけどこの人!?
オッサンに良く見られる光景です。
スルーしよう。無視無視。

2011/10/27 18:41 No.12

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8


「何言ってんだよ、 もう6年前の話だろ。」
「あれ?もうそんなに経っちまってるか??」
「物忘れかよ。 まったく。」
「そりゃそうと、 お前、 お袋さん元気かい??」
「ん? あぁ、 母さんなら元気さ。」
「そりゃ、 よかったよ。 冬に風邪こじらせてたから皆心配してたんだ。 女手一つであんたを育ててくれたんだァ。 強い女の人だよまったく。」

「そうだな、 迷惑ばっかりかけた…。 俺も、 恩返ししねぇとな。」

ピンポーーーーン。 またしても何か鳴った。 もうさっきからピンポンピンポン何よ意味不明。

卓球なら出来ねぇっつーの。
「お嬢さん、 寒かないか? 悪いねぇ。 縛ったままで。」
「イ…イエ… オカマイナク……。」
「何かあったら遠慮なく言えよ。 できるだけのことはするからな。」
「ならポンジュース頂戴」
こうして心配してくれるフリをしる男たちに無理難題を突きつける私.
フン… わたしを騙そうたってそうはいかないぞ!!(※ポジティブ人間不信です。)
「あっはははは!!おもしろい子だな〜〜!緊張しなくっていいよ。」
馬を御者ってる男がカラカラ笑った。
顔は良く見えないが、声的に若そうだ、20代くらいだろう。
つーか緊張してな(ry

2011/10/30 19:11 No.13

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

「そーいえば、 オレ…。」
ギョシャが何か言い出した。



「コレ終わったらさ、 オレ。 幼馴染の●●ちゃんに告白しようと思ってんだ。」



ピィィイインポォォォオオォン!!
立ったーー!変なところで何か立ったァーー!!??


「もういいよーー!! これ以上私に優しくしないでよーーー!! 自分が如何に駄目人間か思い知らされるから!!
 しかも 、さっきからへんなフラグ立ってるし!」

 大声を出した私に対し、生暖かいマナザシを下さるのは三人の男たち。
見るなー。そんな目で私を見るなーー!!
 頭上でバサバサッ、 という羽音がし、 ジュウシマツのようなくちばしがあかい、白い鳥が飛び去った。
そのうち1羽が私たちの台車へと降りてきた。

「おっ、 フラグ鳥じゃねぇか。」
「フッ、フラグ鳥ーーーー!?」

…なんて素敵な名前……って危ない! 危なすぎるよ!! その名前!?
確実に死へと繋がっちゃう匂いがするんですけど!?
「滅多に鳴かない鳥でよォ、 平和なところにしか来ねぇんだ。」
「そ…その鳴き声って…一体……。」
「ぴんぽーん、 って鳴くんだ。」
「か、かくてーーーい!」
死亡フラグ建てすぎました。
死んだよ、これ確実に死んだよ自分!何でこんな物騒極まりない鳥がいるんですか異世界!
ほら、ほらほら、なんかゴソゴソ言ってるぞ?むこうの草原から砂塵が見えるんですけど…!?

「ゲロカァアアァァアアァァス!!!」

こ…この、 かわいそうな鳴き声は…!
「げ、 ゲロカスノーレ・グオッレ・マーディロッヒ!?」
「違う。 ゲロカスノーロ・グオッレ・マーディロッヒだ。」
オッサン。 世界一どうでもいい訂正ありがとうございます。

2011/11/02 20:59 No.14

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8


「ぎゃーー! オッサンもお兄さんもやべぇよ! にーげーてー!」
とりあえず、 台車の角(木製)に向かってがんがん体当たりしてみる。
無駄なこととは分かっちゃいるけど、 やめらんねぇ!
イヤッホォォォ!! この痛感!! アハン!! … という風に目覚めないので安心してください。ここでMになってたまるかァァァァ!!!!
「お嬢さん…落ち着いて。」
「暴れんじゃねぇよ。」
オッサン&先輩が体当たりする私を止めた。
 でも、力入れすぎじゃね…?毛細血管何本かいったよ……?
うぅ〜…クマ怖ぇーよ…!

「心配しなくっても大丈夫だ。 フラグ鳥のあるところにゲロ熊は現れるんだ。 そして、フラグ鳥を襲うなんてことは決してしない。」

「へ、 へぇ〜。」

セーーフ。セェェッフ!!
クマさんは私たちの台車の横をダダダダダと猛ダッシュで駆け抜けていった。
砂塵が舞っている。うっ …目に入る…。 痛い・・・・、くそうっ!! 目から汗が・・・!!
「… 何か凄いね。」
「フラグ鳥は平和と幸運を告げる鳥だァ。 こいつがいりゃ、 縁起わるいこと言ったりやったりしてもどーしてか大丈夫だったりするんだよ。 不思議な鳥だよな。」
つまり、超強力かつ簡易性、 持ち運び簡単。 しかも繰り返し使用できるフラグクラッシャーってわけ。
今ならお値段5000円。 さらに今から1時間限定でもう1羽! さらに、サービスとして飼育セットもつけちゃいます! ダイアルはこちら! 0120(以下略)


「よっかったぁ〜〜! じゃ、 この鳥さんいれば安全だね!」
「そうだなァ.」

2011/11/08 16:42 No.15

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

 石造りのゴツゴツとした壁の中の通路をカツーンカツーンと、 靴音が良く響いた。
両端には、 衛兵って感じの甲冑を着た人たちが両脇を固めている。その手にはなにやら映画でよく見る長い槍。さっきから一言も喋ってくれない。 ってそりゃそうか。
やがて、 ドアに前にたどり着く。
観音開きの重々しいドアだ。 イメージは映画館とかコンサートホールのドア。 開けたら漆黒の闇が待っている。
 が、今回私を待っているのは、 多分…真っ暗とはいかないだろう。


ギィイー…とよくありそうな、 木々のこすれ、 軋む音。
そして、 ぱっ と明るい光がさしてくる。

 宗教裁判 という文字が頭の中にふわりと浮かんだ。
さっきの廊下と同じく、 石づくりの壁。 全体的に上品な光沢のあるマホガニーみたいな木目の机がずらりと並んでいる。 そこには11人の黒い法衣を着用していらっしゃるやる気満々の裁判官が鎮座していた。 わたしはとっさに裁判員制度で選ばれた裁判員の姿を探した。 … いない。
やはり、 コノ世界では裁判員裁判はないようだ。 … 法律は完璧じゃないんだよ!こらぁー!
 でも、裁判所の形式は『こっちの』 …日本とあまり違わない。 形式が同じだ。
ほら、 ニュースとかドラマでよく見るアレ。
被告人席とか裁判長の位置、 検察側の位置。 弁護側席。 でも傍聴席は見当たらない。
多分、 この裁判所は最高裁じゃなくって簡易裁判所、 とかいうレベルだろう全国に438か所。 慢性的に人手不足らしい。 いや、でも11人も必要か?

ってな感じにがちがちの緊張しMAXです。
人生初公判に心臓バックバクなのです。
 いや、 始まんのは裁判じゃないんだけどね。
どうやら尋問、 らしい。

2011/11/14 22:34 No.16

丸大豆★magy2TXjCl_EP8

私を連れてきてくれた男三人衆は「多分、 大丈夫。」と言い、 そのうちおじさんは「俺が証言しちゃる。 何、 不利なことは言わない。」とも言った。
 残念ながら、 私から見て右側の席に弁護人は…いなさそうだ。
「えっと… イイデスカー??」
 私は正面の裁判長と思わしき老人に聞いた。 白いもふもふした顎ヒゲを蓄えている。
だが、 その代償としてだろうか、 頭はつるりとしていた。 かわいそうに。
裁判長はちょっとびっくりしたらしく、 驚いたような顔をしたが、 年長者らしくコホンとひとつ咳払いし、 冷静さを取り繕った。 …何に驚いた?
「何ですかな? 普通は法廷が開始してから…」
 その裁判長の言葉を途中でカットする。
「弁護人とかなし?」
 最後まで台詞をいえなかったのがイラッときたのか、 すこしムッとした口調で裁判長は言った。
「…ありませんよ?…だってきみは有罪ではない。…それとも、 既に何か罪があると?」
「い…イエ!!」
 yeah、じゃないよ、 いいえだよ。
慌てて言いつくろった。 裁判長はふんっ。 と鼻息を吹いた。
鼻息荒ェーよ。
 すると、 こっちを見て 「他に質問はないか?」 と聞いてきた。
「あっ…ありません...。」
 クッソー…公民は得意じゃないんだよ。
かなりたどたどしい口調になったと思う。いや、 だって恐ぇーもん。


2011/11/15 20:25 No.17

丸大豆★magy2TXjCl_EP8

「それでは、 只今より尋問を開廷する。 尋問官および議長…」
 この人の名前だろう。
カタカナ語が発せられた。 思ってたんだけど、 どーして外人風なのに日本語喋ってんだろこの人達。 ってそこはファンタジーな異世界だからで別にいいか。
長々と副議長っぽい人。 多分法廷書記。 の順で名前を呼び上げ、 裁判長(固定)は開廷の言葉を述べた。
「まず、 被疑者へ問う。 名は?」
「えーっと…竜崎レイナです。」
 やっぱし何か裁判官の方々は怪訝そうなイブカシゲーな顔をした。 何だよ何か文句でも!?
「…妙な名前ですね。 リューザキか…。あまり聞か…」
「ウワァーーーップッ! 名前はレイナ! 竜崎は苗字! 苗字、 名前。 の順番なんです。」
 裁判長は一瞬何をいってるのかわからない。 と言うような顔をしたが、 とりあえず納得したことにしたらしい。 フム、 と言って次の問答。
「年は?」
「じ…15です。」
 今度は皆々更に えっ!? という顔になった。
… いや、そんなにびっくりすることかコレ!?
確かに高校生にゃ見えないって言われるけど!? だって此間まで中学生だったもん!
でもそんな顎外れるほどじゃなくね!??
ガクカンセツが外れたらしく、 しきりに顔を横に振っていた。
「では、 あなたは何処から来たのか。 」
 Q3、 きみはどこから来たのか。
人類共通の謎ですね、 わかります。
何処から来たのか、 我々は誰なのか、 そして、 何処へ向かってゆくのか。
「ちがーう!! そーではないッ!違うぞ間違っている! そんな哲学的なことを聞いているのではな
く、 ただ出身地を聞いただけだ!」
 あ〜… Where are you from? ってことですか。 ここは素直に日本!って言うべきか?
「ネ…ネギを抜いて…」
 あ れ ?
Q&Aが成立しない。
言葉のドッチボールだよコレ!!
 裁判長またしても苦い顔ー!!すっげー苦虫噛み潰して飲み込もうとしたけどノドにひっかかってうまく飲み込めてねぇって顔−!!誰か水もってこいよ 苦虫すっげー苦そうだよ!
後ろの裁判官諸兄もガヤガヤいっている様子。
見かねた一人が立って言う。
「君は…その…ハルマークからの不法入国者、 ではないのか?」
 ハ…ハルマーク?
春マークとは何ぞや? それは若葉マークや枯葉(※紅葉です)マークって感じの??
何やら桜舞い散る出会いと別れのマークみたいだ。
もしくは、貼るマークか。 どこでも貼れて剥がせるから繰り返し仕えるマーク…
「えっ? はるまーくって何…?」
「何と! 自分の国さえ分からないと言うのか!?」
ハルマークはマークじゃなかった。 国だった。チャンチャン♪
ってそんな国しらな(ry
「裁判長!発言の許可を!」
 多分40とかそこらのオッサンがバッと挙手した。
学校の倫社の先生っぽい。
「ウム。 許しましょう。」
 裁判長の許可が下りた。
すると、 さっきの倫社の先生はすくっと立ち上がった。 そして私のほうをまっすぐに見据える。
黒の四角帽子をちょい、 と上にむけコホンと、 咳払いを一つし発言を始めた。
 もしかして咳払いするルールがある?
「被疑者は恐らくハルマーク人かと思われます。
しかし、 保身のため…無知を装ってとぼけているのではないか、 と。
故に、 これ以上問答は不要。 一度身元を裁判所、 もしくは地方役所で預かり、 証言や状況調査を集めて後再び審議するべきと思われます。」
 …何かもっともなことを言っていやがる気がする。
すると右から四番目の席に座っている若そうな感じの裁判官が挙手した。
これは挙手って言うよりなんか例の…人差し指を突きつける感じの挙手なんですけど…。

「異議ありッ!」

 異議ありキターーーー!!

2011/11/16 18:02 No.18

丸大豆★magy2TXjCl_EP8

若そうな裁判官はバシィ!と机を叩きキッと倫社の先生を睨みつけた。
「あなたは一つ見落としている!」
 いいぞー!かっこいいぞー。
「何を言う。 私はこの少女も慌てて今、 自分のおかれた状況が理解できないだろうと。
しかも、 かなり慌てふためいているではないか。 自分の国の名前さえ分かっていない。 または、 保身から答えようとしない。 ならば、 一度尋問から何からやり直し法廷へ再提出。 そしてそれを踏まえたうえでの審議にしようではないか。 と、私は言っているのだが?」
 倫社の先生は帽子に手を当て、 理路整然と、 若い裁判官を見下したように言った。
しかし若い裁判官は怯まない。
「そうですね、 確かに。 あなたは一見正しいことを言っている。 が、 しかし、 あなたは言及していない。 何故、 この少女が我が国の言葉を話せるか、 についてね!」
「くっ…!」
 ダメージリアクションまで律儀だ。
そう言えばコレやっている間って裁判長とか私は棒立ちじゃね?
「もし、 被疑者がただの髪の色が濃いだけの我が国、 カルーシアの国民だったなら? それではこのような尋問会はただの時間の浪費です!」
「異議ありっ!」
 倫社の先生から異議出ましたー。 さて、 どう切り返す?
「もし、 我がカルーシア国民ならば、 ハルマークを理解できないはずがない! その程度の教育ならば農村部でも行き届いているはずだ!それに、 彼女の名前は苗字、 名前の順番だった。
この名前形式はカルーシアでは使用されていない!よって以上より被疑者はこのカルーシアが民ではない!!」
「ぐっ…。名前を反論材料に使ってくるとは…反論なし。」

 確かにそうだ。
うん、 そうですね。
名前言っちゃったしね。 ごめん。
「静粛に。 これより尋問官命令です。 被疑者はカルーシア国民であるという可能性は薄い、 が、
  しかし、規則により尋問を続けさせてもらいます。 よって、 尋問を続行する。」
白熱議論を交わしていた二人は席に着いた。
「尋問官命令には本会中一切の問答、 及び反論を禁ずる。 よろしいですね?」
 副議長ポジの方が言った、 多分この台詞を言う為だけにいるんだろう。
「では、 被疑者。 あなたが如何にしてこの国へ渡ってきたか証言するように。」
 証言開始ってやつですか。
うーん…語るほどのことはしてないよ?
っていうーか何から言えばいい…。

2011/11/21 19:37 No.19

丸大豆★magy2TXjCl_EP8

「あのぉ…ネギを、 ネギを抜いてですね。 ヒカリの道を通り抜けてきました。
 なんだっけ。 そしたら森の中に着き、 何かでかい熊に襲われました。」
「その熊とは何ですか?」
「うーん…本名は忘れた…。 ゲロカス熊ってゆうやつ。」
「ゲロカスノーロ・グオッレ・マーディロッヒか。」
 よく言えるなすげぇな。
「ゲロカス熊を知らないのか?アレならば喋れるようになった子供なら即座に本名を覚えるのに?」
 そ、そうなんですか…。
「裁判長! これは、 証拠かもしれません。」
 先程の若い裁判官がまた喋った。
はい。 何の証拠かな?
「証拠の提示…ですか? 一体何を…?」
 裁判長に激しく同意ー! しかぁしッ! なぜか自信満々な若手裁判官は得意げに言った。 明瞭な声で。
「被疑者はバカな可能性があるッ! ということです!!」
 ほぉー…なるほど、 その手があったか〜… ってえぇぇぇえぇ!!??
「ハァ!?ちょ。ちょ待てやコラーー!あのね!確かにね認めますよ!?そりゃ裁判官やってるあなたたちからすると私間抜けだよ!バカかもしれないよ!?でも、ナニソレー??異世界の常識知らないからって馬鹿扱いはなくね!?てゆーかそんなことで乗り切れるわけなくね!??冷静に考えて無理だよねフツーに無理ですよね!!??」
「(無視。) と、 言うと…君はこの少女が『常識はおろか、 自分の国。 自分の名前さえ分からないアホである。』 …と言いたいのかね?」
「無視してんじゃねー!!」
「はいッ! その通りです! するとどうでしょう? 被疑者の証言は最初から信じるに値しない。 もしくは真偽を審議する必要がある!! …シンギだけにねっ!」
「テメーも語ってんじゃねーー! つーか聞いたよ!?いま、 駄洒落言ったよね!?ナニ上手いこと言ったって顔してんのー?寒いよ!めっちゃ寒いよ!氷点下だよ!?南極大陸だよ!」
「うむ…一理ありますね。 その仮説が本当ならば被疑者にはナニやら別の意味で拘留しなければなりません。」
 裁判長は思慮にあふれた難しい顔をなさった。 死ねばいいのに。
「異議アリ!」
 おぉ!? この深みのあるバリトンヴォイスは!?

2011/11/29 18:17 No.20

丸大豆★magy2TXjCl_EP8

大体30代中頃くらいの男が挙手していた。 あなたが神か。
「発言を認めます!」
 裁判長のやや興奮した声が響く。 腐ればいいのにね。
30歳くらいの神様はやはりお約束の咳払いをし、 この世界に生きるもの全てを包み込むような愛に溢れたマナザシを法廷に座る迷える子羊達へとお向けになられた(二重敬語)。
「お待ちください。 この少女をその…アホと決め付けるのは早計です。 」
 そうだそうだー!!
「まだ、 我々はこの少女を知らない。 …しかし、 やや妙なところはありますが、 この少女は普通の人  並みの知能は持っていると 私は思うのです。」
「ムッ! …ほほう。 あなたは私の仮説に異議を唱えられるわけですか。 では、 その証拠をご提示頂こう!!」
 若い裁判官は自信満々、 前途洋洋を疑ってないようだ。
「証拠… というのもおこがましいものですが、 このような物でよければね。
 さっきあなたはおっしゃいましたね。
『もしくは真偽を審議する必要がある!! …シンギだけにねっ!』 …と。」
「たっ、確かに言った! だがそれが何か?」
「上手いジョークだと思いますがね。
…しかし、 ここで重要なのは”アナタ”の証言ではない。
この後の被疑者の突っ込みです。」
「突っ込み…?」
 一体何を真剣に議論しているのだろう。 もしかして、 アレか。 アホの子かー!?
しかも、 雰囲気は刑事ドラマ法廷編さながらどこまでもシリアスだ。 ピン、 と張った糸が…それこそ触ればこっちの指が切れそうなくらいピン と張りつめた糸だ… 激論を飛ばす二人の間を渡っている。
冷ややかな 何となく青白い光さえ纏って。
 そして、その糸は切れる。
「それはこれですっ!
『いま、 駄洒落言ったよね!?ナニ上手いこと言ったって顔してんのー?寒いよ!めっちゃ寒いよ!』
…お分かりでしょうか。 この意味が。」
「意味…?ッ!?」
 若手は何か痛いとこ突かれた。 みたいな顔をした。
もう、 どうでもいい…。
「そうです、 ダジャレを理解するだけの知性を持っている! …これでもあなたは被疑者をアホといいますかっ!」
「くっ…!」
「ちょwww どんだけ馬鹿だと思われてんの私www。」
 思わず語尾がおかしくなってしまったじゃないか。
「さらにっ! 『キョニュラーの定理』によると!被疑者はさほどアホじゃないはず!」
 なにか定理出されましたー! それはピタゴラスの定理っぽい物でしょうか。
「その定理を適応するとBカップはさほどアホではないのです!」
「おー…神感謝いた…するかぁぁぁあぁああ!! 何!? 今何つった!? えっ? Bカップー!?」
「『キョニュラーの定理』 …それは今より約100年前に立証された意味不明の定理。」
「分かってないんじゃん! 意味不明って意味分かって無いじゃん!」
「知能レベルと胸の大きさは反比例する、 というモノ…。」
「しねーよ!? ってゆーか何で立証されてんのそんなセクハラ定理ィィ!」
「ちなみに、 キョニュラー自身はFカップという見事な胸を持ち。 さらに三ヶ国語を極め、 法学者として名を馳せた才媛であった。 と。」
「キョニュラー自信が反証じゃねぇの!? それって意味無いんじゃないの!?」
「例外は存在するということでしょう。
と、いうのはおいといて。 じゃ、証言続けちゃってください。」
「イ、 イェッサー…。
ボソッ(おいといていいのかよ・・・)。」
「いいんです!」
「じっ、地獄耳!?」
 聞こえてたよ裁判長に!
すいませんでした。 でも、 スルーしていいかよくわからなかったんです。 いまでは反省している。
ま、 訳の分からん定理で何とかなったけど。

あっ、 そう言えば…

私、 すっげー言わなきゃいけないこと言ってないじゃん。

2011/12/02 19:18 No.21

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8


「えー…そ、 その… わたし、 見ましたぁー。 ドラゴンを。」
 裁判長は怪訝な顔をして聞いた。
「はい?」
「だぁーかぁーらぁー! 何か逢った。 ドラゴンと!」
 裁判長はやっぱし不思議そうな顔。 もしかして頭おかしい子だと思われたりしませんよね?
野菜が喋る世界ではドラゴンはメジャーではないのかもしれないl。
「ドラゴン…? あ、 魔人族の竜の呼称でしたね。
 その竜はどのくらいでした? 大きさや色を答えられますか?」
「うーん…だいたい、 建物の三階から四回…ってところ。 緑色っぽいかんじ。」
「三階から四階… ソード級では…?」
「そーどきゅー? 超弩級…?」
 さっきネギもそれっぽいことを言ってた気がする。

このドラゴン見ました発言に法廷は一時騒然。
社会科の先生っぽいのも、 私を馬鹿よばわりした若い異議アリ!さんも。 ダンディーに変態なこと言った巨乳理論裁判官も、 「何だと!?」といいたそーな目でこっち見てくる。
かなり視線が痛い。 心も痛い。

「魔人族が、 竜と… 襲われたりしませんでした? というか、 一体だけでしたか?」
なぜか妙につっかかってくる裁判長。 え、そんなに心配なことですか。
そんなレアケース何ですかこれ。 …でも、 まぁ、 素直に答えておこう。
「一体だけでしたよ。 襲いかかって…? えー…分かんない。 すぐ逃げたから。 でも、 …カンなんですけど…襲う気はなかったと思う。」
うん、 これだけは何か自信ある。 多分、 襲う気…いや、 それどころか警戒さえしてなかったんじゃないかとさえ思うんだ。
タイミング的にも  …いまさらだけど、 私ってあの竜に助けられたんじゃないかな。。。
「そしたら、 竜が何かしゃべって。」
「喋って!?」

「馬鹿な…竜が喋る? 竜が喋るだと!? 」
「幻聴だろ……! というかそう思い込んでるだけだろ!」

 かなり失礼な発言が飛んだ気がする。
「はぁ? いや、 多分フツーに言ったよ。

  ゴブジデで、 って。」

 裁判官共は今にも何だとぉぉぉぉ!! と凄まじい雄叫びを上げんばかりに喚いた。
いや、実際上げてる奴もいた。
なにやら人生最悪の宣告を下された、 って模様。

 あっれー? 自分あっれー?

これはもしかして、 やっちゃった? 踏んじゃった?
地雷踏んじゃったかなーー?
そして私の脳内には意味も分からず『ネコふんじゃった』がループ様式エンドレスで流れてくる。
 あっ、 このBGM良いわ
「竜の言葉を解すとは……! 少女よ! 大志を抱け!」
「Girl be ambitious !」
「イエス! マイプロフェッサー!(レイナ)」
「だが金への大志は抱くなっ!」
「ではなくっ! もし、ハルマークの手の者なら…!」
「魔人共に竜の思考が分かると!? 馬鹿な!」
「もしくは保身のためのハッタリでは…!」
「もういい! 貴様のハッタ理論などアテにならん!」
「何ィ!?」
 まさに大混乱〜。
しまった。 これ自分のことだよ。 何客観視してるし、 冷静になってる場合ではない。
とか思ってたら、さっきのダンディ・変態がややテンパった声色で何やら告げた。
「ともあれ!皆様方! 竜と意思を交わす、 などと下手をしたら国が… いや、 この世界が揺らぎますぞ!  …もしこの娘本物ならば、 最早我々だけで対処しきれる話ではありません。
 至急、王都へ伝令を飛ばし指示を仰ぐべきです! すぐに連絡の手筈を!」
「ま、まて…! 事を急ぐな…。 早計ではないか? いましばらく…。」
「何を言うか!
 もし、 この娘以外にも竜の意思が分かる魔人がいたらどうするのだ!?
急がねばカルーシアが滅… いや! 人類が滅亡するやもしれんぞ!」
「滅亡…だと…!?」

 どうやら完全にやばいことになっている。
そして完全に私放置されてるー。
置いてかれてるぅー。

その、 証言からいきなり人間滅ぶレベルまで飛躍した法廷をまとめるべく、裁判長は正義の木槌を振り上げた。
「静粛に! せーしゅくにィィィーーー!!」
 ガンガンと机を叩くが興奮しきってオーバーヒートした裁判官達はなかなか黙らない。
木槌の音さえ聞こえていないだろう。
半ば…いや、 完全にパニックなのだ。  …私も。
 正直、 何がなんだか分からない。

  その時だった。

「せぇーしゅくにィー!!せーしゅく… 」

バリィィィイーン。

 ガラスが割れる音がした。

2011/12/07 20:08 No.22

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8


 割れる、 なんてものじゃない。木端微塵になる音だ。
周りに赤、 青、 透明のキラキラした綺麗な欠片が散らばる。
それはシャラシャラと音をたて地面へと落ちていった。
 法衣の裁判官は皆地に伏せる。
見かたによれば、地へと跪いている様にさえ見える。

私は伏せなかった。

 本当は伏せなきゃヤベェ思ったんだけど、 つい、 うっかり見とれていた。
飛び込んできた黒い人影に

 ……ってゆーか、 人?

本当に人?

だって、人なら。
「フツーないでしょ、 羽は。」

その人はコウモリみたいな翼を持っていた。
 縦は大体座高の高さ位。 横は両手を広げても有り余るほど。
ポールのような太めの骨にビィンと張った艶やかな翼。 …なんだか凄い飛べそう。 耐久力ありそう。
色は深い海のようなオーシャンブルー。

死神の鎌さえ思わせるようなカーブを描く翼を持つ『人』のほうも、 すごい美形だった。
 ちょっとツンツンしている藍色の髪は男性にしては長く肩にかかるくらい。
顔は鼻筋がスッ、 と通っていて切れ長の涼しげな瞳がのぞく。
つまり、 すっげーイケメン。

 でも、 正直びっくりしたのはその目。
…こんな目、 外国人俳優でも見たことねーよ。

――― 金。

琥珀色、 というのか黄色とオレンジ足して2で割った色合い。
 さらにピッカピカ光っちゃってるから、 確実に金の眼だ。

そして、 人間とは思えないような、 藍色の髪と金色の瞳を持つ男は言った。

「よォ、 レイナ。」

2011/12/11 13:31 No.23

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8









 藍色の髪の人間なんて見たことない。
しかも金色の眼なんている訳がない。
身長だいたい170センチくらい。 ゴツイ黒い革コートのイケメンは確かに言った。

私の名前を。

「えっ? えぇ?? えーー??」
 え、 三連打ァ!
「ね…えーっとぉ…私あなたのこと知らないんだけ…」
 知らないんだけれども、 と言おうとして急に言葉がつまった。
何かが自分の中で囁いたから。
 それは、 とてもとても小さな、 でもしっかりとした。 遠くのほうで何か囁くような声。

――― ××××の…×××。

「え? 何? 扇風機荒らす?」
 彼の名前だろうか。 荒らしか、 こいつ。

じゃなくってぇぇぇぇ!!!?
えっ? 何?
今の何ィィーーーー!?

幻聴!? もしかしてもしかしなくてももしかしての幻の声!?
ヤバくね自分! ついにここまで来たかッ!
荒らしさんは青いコウモリ羽をバッサァーとはためかせ、 怪訝な顔でこっちをちらっ、と見た。
「レイナ、 だよな?」
「え? だから何で知ってるの? 知り合いだっけェ…?」
 生態不明の美青年は多分18とかそこら。
先輩、 とか大学生ってトコロだろう。 はい、 私には無縁。
肩にかかる髪をハラリ、 と払いそいつは言った。

「オレがレイナつったらお前はレイナなの。 見た瞬間からレイナって感じだったからレイナなの。
どこの誰かが言ってもお前はレイナなの。 仮にレイナじゃなかったにしてもレイナって呼び続けんの。、オレは。 未来永劫。 いいか、今日からお前はレイナだ。 分かったか? はい、分かったら大きな返事! 後、 片手挙げてからの自己紹介!! って 、やれよ。 なんかオレ寂しい人になっちゃってるじゃん。 まぁ 、いいや。 いや良くないけど。 ともかくお前はレイナ…。 」

 途中に入った倒置法・・・・。何故倒置法?? そして、お前は人なのか?? 寂しい『人』なのか??

「はい、レイナです! レイナだから!大丈夫だって! 自信持てよ!
そこまで主張しなくっても当たってるからOKOK!

で!! あんた誰ー!?」

 本当はあんた何!? って聞きたかっんだけどね。
だって怪しいでしょ、 コイツ。 特にその羽の謎について喋らせたい。
 すると、 伏せていた法衣の男たち (11人もいる!!) がむくむくと蘇生し始めた。 …大丈夫か?
「大丈夫、 問題ない。」
平気らしい。
 11人のうち1人があっ! と声をあげた。
「あっ…あなたは……!?」
「ア… アレス様!」
 アレス様?
どうやら、 この場を荒らしたのはアレス様みたいです。
さっき変な枕詞が付いてた気もするが、 まぁいい。 それは多分気のせいだ。
 アレス様、 とやらはステンドグラスをぶち破った状態のままふわふわと浮上している。 羽はついているが羽ばたいてない。 すーっと浮かんでいる という表現が相応しい。
見るからに偉そうだ。 様、 付けだから実際偉いんだろう。
「アレス様…何故ココに…!?」
 胸理論の中年裁判官がやっとのことで搾り出した声音で聞いた。
見ると若手裁判官は呆然として、 裁判長にいたっては知的な顔を台無しにしてポカーンと口をOの字に空け、 口輪筋を緩ませていた。

2011/12/17 12:03 No.24

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

 そんなことやってたら石畳を駆ける音が遠くから聞こえてきた。 時折少しガチャガチャと金属音がする。 足音の数は脚四本。 つまり二人分。 私は自分で言うのもなんだが耳がいい。
物凄い速さで接近してくる。
「ここですか!?」
「アレス殿!」

 法廷の扉を思いっきり開けて、 二人の人間がそこに立っていた。
翼はない。 とりあえず、 頭髪もアレス様ほど人間離れはしていない。
だが、 日本在住の女子高生が滅多にお目にかかれる色ではない。
 一人は男性。 ミディアムヘアの真っ赤な髪。 燃えるような赤毛、 というよりは完全に赤い。 いい表現じゃないけど血糊で染め付けたのかというくらいのファイヤーレッド。
その下の顔は、 カッコイイの一言に尽きる。 目はメラニン色素少なめの薄い茶色。 年齢はだいたいアレス様と同じくらいか、 顔は温厚な人柄なのだろう、 穏やかで整った顔立ちだがどこか険を少し含む。
ちなみに服装は某世紀末のような肩鎧……? みたいなビィーンってやつと、 こげ茶色の革ジャン。 胸のところから黒いベルトが左右に下がっている。 全くもって用途が知れない。 意味無いんじゃない?

 もう一人は女性だった。 こちらは腰まで届くんじゃないかって位長い透けるような金髪を頭頂部で高く結い上げた髪型…つまりポニテね。 ボーンチャイナの陶器のような白い肌。 長い睫毛に縁取られた晴れ渡った空を思わせる澄んだ碧い瞳。 体格は女性らしく華奢でスレンダーなモデル体型。 だが服装は青と銀を基調とした色合いの鎧姿だ。 金髪碧眼の美人さんだが己の美貌を武器にして生きるタイプではなく、 どっちかっていうと凛々しい女騎士。 青と銀をベースにしたビバファンタジーな鎧姿! って感じだった。 同じ女として是非リスペクトしよう。
 そんなマブい二人組が突入してきた。 マブいは死語かな?
 その二人を見て、 上空のアレス様は訳知りの顔で、 言った。
「おっ、 来たか。」
 やっぱりアンタの知り合いか。

2011/12/19 22:09 No.25

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8


↑すいません。 ワードパットで書いてたらミスりました。

この前の一文が抜けているので見なかったことにしてください。

2011/12/20 14:35 No.26

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

「まさか、 もうこの事態を…?」
「流石護国のアレス公だ! アレス公万歳!」
「はやくヴァルハラにお知らせを! 陛下にお知らせし、 至急御前会議を!」
「いや! そんなことより慰謝料払えよ。」
「そ、 そうだ! そのガラス代を弁償してください!」
「そーだそーだ! どのステンドグラスはハンス爺さんが老体に鞭打って作り上げた逸品だ! 弁償してください!」
 何か論点がおかしい気がする。 ってか、 ハンス爺さん誰やねん。 と、いうかこの人一体…?
私はコウモリの如き翼、 黒を貴重とした革製の服。 そして人間か疑いそうな美形、 でも人間ではありえない髪と眼の色。 以上のことからひとつの結論に至った。

……こいつ、 悪魔じゃね?

と、言うことは。
魔人族(悪魔っぽい何かだろう)かどうか判断する魔女裁判のまっ最中に悪魔がステンドグラスぶち破って殴りこみに来たと。 違うつってんのに全く信じて貰えないどころか…
  ……これじゃ自白じゃねーか!
よし! 今すぐこいつとの関係性を否定しよう。

「ちょっと待ちなさい。 私はあんたのこと知らないんだけど…。」
 上空15メートルくらいを浮遊するアレス様に言う。
すると、 何か正気に戻ってきたらしい裁判長がびしり、 と言い放った。
「こら! アレス様にむかってなんと言う口の利き方をする!」
 怒られた。
「す、 すいませんでした……。 でも! マジ、 あなた知りません!」
「レイナひでぇ……。」
 アレス様の心証が悪くなった!
「そんなことより弁償! 弁償!」
「そうです! こんな田舎町でガラスは高級なのですぞ!」
「中央の尺度で物事を考えんでいただきたい! 事件は会議室で起こってるんじゃない現場で起こっているんだ!」
 いや、 メッチャクチャに言われてるアレス様www
悪魔をココまでボロクソ言ってただで済むと思うなよ人間! くらい言ってやればいいのに。
 いや、 それ以前にアレス様って偉いんだよね。 偉い人なんだよね?
この裁判官共が恐れを知らない勇者たちなのかそれともアレス様がヘタレなのか。
まさか馬鹿……? それともアホ?? フムムム……。

 だが、肝心なアレス様は人間共の言動など意に関しておられない様子だった。 どっちかって言うと私に『おめーなんか知らねーよ。』言われたことがショックなのかこっちを真顔でじーっと見ている。
 そんな顔で睨んだって怖くないもんね〜。

 すいません。 嘘です。 金色で睨まれるとかマジで怖いです。 止めてください。 閻魔大王には連行しないで……


 そんなことやってたら石畳を駆ける音が遠くから聞こえてきた。 時折少しガチャガチャと金属音がする。 足音の数は脚四本。 つまり二人分。 私は自分で言うのもなんだが耳がいい。
物凄い速さで接近してくる。
「ここですか!?」
「アレス殿!」

そして、 No 25へ (No 25内容をもう一回投稿します。 もうしわけありませんでした。)

2011/12/20 14:37 No.27

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

そんなことやってたら石畳を駆ける音が遠くから聞こえてきた。 時折少しガチャガチャと金属音がする。 足音の数は脚四本。 つまり二人分。 私は自分で言うのもなんだが耳がいい。
物凄い速さで接近してくる。
「ここですか!?」
「アレス殿!」

 法廷の扉を思いっきり開けて、 二人の人間がそこに立っていた。
翼はない。 とりあえず、 頭髪もアレス様ほど人間離れはしていない。
だが、 日本在住の女子高生が滅多にお目にかかれる色ではない。
 一人は男性。 ミディアムヘアの真っ赤な髪。 燃えるような赤毛、 というよりは完全に赤い。 いい表現じゃないけど血糊で染め付けたのかというくらいのファイヤーレッド。
その下の顔は、 カッコイイの一言に尽きる。 目はメラニン色素少なめの薄い茶色。 年齢はだいたいアレス様と同じくらいか、 顔は温厚な人柄なのだろう、 穏やかで整った顔立ちだがどこか険を少し含む。
ちなみに服装は某世紀末のような肩鎧……? みたいなビィーンってやつと、 こげ茶色の革ジャン。 胸のところから黒いベルトが左右に下がっている。 全くもって用途が知れない。 意味無いんじゃない?

 もう一人は女性だった。 こちらは腰まで届くんじゃないかって位長い透けるような金髪を頭頂部で高く結い上げた髪型…つまりポニテね。 ボーンチャイナの陶器のような白い肌。 長い睫毛に縁取られた晴れ渡った空を思わせる澄んだ碧い瞳。 体格は女性らしく華奢でスレンダーなモデル体型。 だが服装は青と銀を基調とした色合いの鎧姿だ。 金髪碧眼の美人さんだが己の美貌を武器にして生きるタイプではなく、 どっちかっていうと凛々しい女騎士。 青と銀をベースにしたビバファンタジーな鎧姿! って感じだった。 同じ女として是非リスペクトしよう。
 そんなマブい二人組が突入してきた。 マブいは死語かな?
 その二人を見て、 上空のアレス様は訳知りの顔で、 言った。
「おっ、 来たか。」
 やっぱりアンタの知り合いか。

2011/12/20 14:38 No.28

丸大豆★magy2TXjCl_EP8

 入り口を完全に無視したアレス(敬称略)と違い、 入り口を律儀に確認して入ってきた二人組みの男女に対し裁判官共は結構普通に、 それなりに礼儀を尽くして対応していた。

「あなた方は…… 竜騎士団の……。」
 裁判長はちょっと夢うつつのぼやーっとした声だが、 先程のアレス(敬称略)よりかはだいぶ落ち着いた対応だった。 その裁判長の言葉に対応したのは赤い髪の男。

「いかにも、 我らは王都ヴァルハラより参りました。 カルーシア竜騎士団ブラックスピア隊隊長。 ローランド・ラーケ・ルーケンハイドです。」

 やけに長い名前だ。 しかもなんかとにかく何でもいいから突っ込んどけという名前だ。
ルーケンハイドって何となくドイツっぽい感じがするんだけどローランドってイギリスとかその辺じゃない? いや、 知らないけど。
 すると隣に立っていた金髪の女性も言った。

「同じく、 カルーシア竜騎士団ホワイトスピア隊隊長。 クリスティーナ・ヴィクトリア・フォラ・バーロットです。」

 ……あんたはもっとカオスだったな。
 かなり意味の分からない自己紹介だったが、 裁判官の皆様はそれで十分だったらしく、 口々に「おおっ!」とか「ならばもう安心だ!」 とか勝手なことばっかり言って納得した。
 変態定理の中年ダンディや異議ばっか主張する若手を見たが、 奴らも何か一安心、 といった表情を浮かべている。 ってマジですか。

2011/12/24 18:19 No.29

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

「裁判長。 突然の来訪申し訳なく思います。
 さらに唐突で申し訳ないが、 我々竜騎士団から提案があります。 この子の身柄は我々竜騎士団のほうで保護させてもらう。」
 ローランド、 と名乗った好青年はこっちのほう優しそうな目でを見てきた。
「と、 いうことでいいかな?」
 と、 裁判官たちに問いかけた。 完全にアレス(敬称略)はスルー。
裁判官たちは感極まったように声を漏らした。 おい、おーい?
やがて、 起き上がった裁判長が声を張り上げた。
「では、 皆様方! このような状態ですが… この場は致し方ない。
 被疑者の身柄はカルーシア竜騎士団に一任する。 ということで議決に致します。 皆様方承認を。」
「「「異議なし!」」」
 凄ぇー。 全会一致どころか声までそろってるよ。
「では! これにて閉会!!」
 そして、 裁判官たちは全員直立不動の体勢。
手を帽子にバッとやり。 その帽子を一気に取り去った。

そこから現れたのは必要以上に輝く、 美しいハゲ頭。

この世のいかなる穢れも知らない、 無垢な輝きを放つハゲ頭。

11人分のテカテカハゲが一斉におじぎしている。

「ギャァァァアアァァァアア!!」
 本日、 お馴染みの大絶叫。

2011/12/29 18:02 No.30

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8



 ハゲをここでカミングアウトされるとは予期していなかった。
そりゃ、 ネギ抜いたらGO異世界! だのクマには襲われーのドラゴンに遭いーのさらには魔女扱いされーの悪魔の如き美青年がガラス粉砕して弁償代請求されーの。
……こっちに来てからトラブルばっかだな私。

 だがしかし、 ここでハゲを11人一斉カミングアウトとか、 ある意味一番デンジャラスじゃね?

思いっきり叫んでポカーンとしていた私に長ったらしい名前だった気のする女性が
「さぁ、 行きましょう」 と促した。うん。 そうだね。 行こう ってどこに?
「王都ヴァルハラですよ。」
 これには赤髪の男が答えた。 尚、 この間も移動は続いている。
二人とも実にテキパキした無駄のない動きだ。 しかし、 さほど急いでいるようには見えない。
ただ清清しいまでに合理的ってだけ。
「おーとバルハラー?」
 オートマッティクの略じゃない。 嘔吐でもな……忘れてくれ。
「お醤油かけたらおいしいんですか?」
「食べられませんよ?」
「おいしいんじゃないかな?」
 まともな反応とノリが返ってきたし。
とか何とか言ってるうちになんと外まで出てきた。
すぅーっと思いっきり息を吸い込む。

 うん、 シャバの空気だァー!

さらに気分的には半紙に墨汁で『勝訴!』ってやりたい。
「うわっ……。」
 どうやら異世界でも天体現象は同じなのか、 空は茜空。
赤からほんのりピンクへグラデーションしていき、 ご丁寧に端のほうでは夜の色が滲んでいる。 なかなか綺麗だ。
 確かに帰宅時にはちょっと日が傾いてた。 15時くらいだった気がする。
けど、 まいったなぁ……。 と痛感した。 こんなに時間経ってたんだ。
「うわー……タイムイズマネーだよ。 こんなはやく3時間くらい経つとは思ってなかったーー。」
「タっ……? 何ですか? それ……?」
 異世界人に諺は通じないようです。
「あ、 あぁ、 ごめんごめん。 時は金なりってことー。」
 そういうと、 ブロンド美人は何か納得した。
「あっ、 それですかー。 よく陛下もおっしゃってますね。」
 どんな王様だよ!? まさかマネー王!? 異世界人とどうでもいいトコでリンクした。マネー王の統べる国、 そして王都ヴァルハラ…… って一体どんなトコだろう…。
って思いを馳せてると、 なにやら遠くから何か飛んでくるではありませんか。
 最初は鳥かと思った。
 この世界の鳥は油断ならないフラグ鳥だ、 せっかく立った救出フラグを折らせてたまるかーー!
意味もなく構える。 上空の相手に何が出来るというのか、 いや、 何も出来ない。
 だが、近づくにつれてその実体はだんだん見えてくる。
 ン? なんか鳥じゃねーぞ? なんか違うぞ?
鳥よりゴツゴツしてて…速い。 もの凄んごく速い。 空のチーター。
いや、 むしろジェット機に近いんじゃないのアレ!?
 だが、 例の轟音はなし。 周辺住民からの苦情があったのだろうか。
「えーっと…、 アレは一体……。」
 金か赤かどっちかに聞こうとしたら ジェット機こっち来る。
「ゑ?」
 いや、 待てよ。 ちょ…おま…
その速度でこっちに来るなし! マジ即死するわ!
 で、 そのときその『モノ』の正体が分かった。
もし、 ここがアメリカならブルーエンジェルス。
もし、 ここがアフリカなら巨大な鳥さん。
 しかし、 ここはアメリカでもアフリカでもなく、 多分地球ですらない…っぽい。

しかも、 野菜が言葉を喋り、 魔人族なるものが闊歩し、 人々がふぁんたじーな服を纏うこの世界において、 空を駆るものは… 一つだ。

 背中から左右へ広がる二つの羽が風を切っている。 …ブレーキのつもりですか。
鋼のような硬質の灰色の体。
古代の恐竜の如きフェイスを縁取る、 カブトっぽく進化をした骨格? 角かも。
 ここまで言えばもうアレしかない。 UMAなんて言っても無駄無駄ァ!

 ドラゴン本日2体目ぇー!!

2012/01/02 23:42 No.31

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

ドラゴン殿はゴォーっと音を派手に立てながら急降下してきた。 胴体着陸準備−。
 と、 90度くるっと上へ竜首を上げて停止。
イメージとしてはハリウッド映画か時代劇でも馬がヒヒーン! ってなるやつ、 あのゴジラとプテラノドン足して2で割った感じ。
 急ブレーキの反動か一呼吸遅れの翼がバサァーと空を切る!
ので当然風が来るぅー。 すっげー風がくるぅ〜〜!
「ちょ…うわっ。」
 台風直撃。 私は転ぶ。腰が地面に直撃。うわっ・・・・将来私の腰は大丈夫だろうか・・・・?
だが、今は自分の中にある羞恥心が勝る。
くっそー。 スカートがぁー スカートがァァ!!
幸い後ろにはだれもいナッシング。 セーフ。 セェ ―――― ッフ!!
 まっ、 下に短パンはいてるんですけどね。 は? ダサい? 言っとけ。

「荒い着地ですね。」
 赤髪のローランド、 なるカッコイイ人は言った。
すげぇなお前、 この状況で平然としていられるとかマジすげぇな!?
肝が据わっているのかそれともド天然なのか。 できれば前者希望。
「少し威嚇しただけだ。 そうだろ? グラム。」
 おいコラ、 砂塵で何にも見えねーよ。 でも、 声的に……かなり若い。
グラムって何じゃい、 グラムって、 単位か? キロとかミリとかのグラムか!?
「イントネーションが違いますわ。」
 イントネーション注意2回目ー。 3回目からはレッドカードで退場かな?
主人公退場でこの話は終了! 愛読ありがとうございました!

2012/01/03 22:17 No.32

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

はっ!! 今自分は何を!?



やがて砂塵が晴れていく。暴走(ドラゴン)ライダーの正体やいかに!?
「えー…。」

 声から予想はしてたけど若かった。タメだ。同じ年だ。高校男子だ。外見は相変わらず変わってるけど、服装はローランドと一緒。こげ茶革ジャン。用途不明の革紐。

 頭はさっきの裁判官たちとは対を成すようなふっさふさの……栗毛。
これと言って特徴なさげの栗色だけど、髪質は柔らかそうでやや癖がある。男でこれはズルイでしょ。
 その優しい色合いの柔和な髪とは対を成している顔。
切れ長な瞳は、紫水晶。深みのある綺麗なアメジストだが、宝石によくある冷ややかさをたたえている。冷たい感じだが顔は整っている……これは…、えーっと…そうだ『端整』
淡麗じゃないよ、キリンビール。
 端整な顔の少年が灰色のドラゴンに乗っておりました。このドラゴンはどうやらグラム。
クマの後に出会った三階建て緑ドラゴンほど巨大ではない。体は筋肉隆々というより鎧で覆われている。だが……このドラゴンは強いだろう、おそらくさっきの緑ドラゴンと同じくらい、いや、もしかするとそれ以上
 ともかく、初めて同学年に会ったぞ! これなら話も通じそうだ。心境とか、心境とか心境とか

「で? コノ黒いのは何だ?」

 少年はドラゴンの背の上から見下ろしす形をとっている。
 私は周りを見渡した。黒いものはなにもない。…が、多分この下には石油が埋まっているはずだ、石油って黒いはず、彼は恐らくそれを黒いモノと言ってるんだろう。ここはファンタジーの世界だから彼は特殊な目を持っているはずだ。そして地下に眠りし石油が見えているいるのではないだろうか? 私ってここまで推測できる凄い。
「多分石油じゃないっ?」
 満面の笑みで言ってやる。
そしてそのあと繰り出すドヤ顔。
一方少年は
「……なるほど、お前は燃えるゴミか。」
 などとのたまい、まるで本当にゴミでも見るような氷点下マイナス13度くらいのマナザシで私を見た。
「いいえ、わたしは燃えるゴミではありません。」
「じゃあ何だ? 燃えカスか?」
 一瞬、何か不安になった。もしかして言葉通じてないのかな?
会話が噛み合わない...
「あの〜……すいません。私の言ってること、分かる?」
「黙れゴミ。」
 聞こえなかったのかな? もう一度トライ。
「え〜っと……だから私の言っ……」
「腐れゲス。 あっ、 やっぱ腐るな臭いからな。 腐るんなら誰も見てないところで孤独に腐れ。 そもそもゴミに存在価値など有りはしない。 かつて形あったものの成れの果てがお前だ燃えるゴミ。」
「う〜ん…? もしかして通じて…」
「おい、 さっさとコレを焼却処分するぞローランド。」



「う、 うぜぇぇぇぇえええええええ!!!!!」

2012/01/13 18:15 No.33

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

 うざい。もの凄くうざい。限りなくうざい。うざいを超越し、宇宙の彼方まで飛躍したUZAI!
何なんだコイツは!? うざいのレベルを超えたうざ野郎だ! あのネギも相当ムカつくがあの比じゃない。コレに比べればアレは天使だ、聖母だ。 お歳暮にネギはちょっとまずいか?

「ちょ…何なのコイツ。初対面で人のことゴミ呼ばわりって何様だよ!?」
「ハッ! いちいちうるさいぞゴミ。いいや、燃えクズ」
「だぁーまぁーれぇー!! ゴミって言った奴がゴーミー!! やーいやーい!」
「ちょ…大丈夫ですか? 落ち着いてください(ロ)」
「 裏切るのかぁぁぁぁ!!」

 竜上の少年はニヤっと笑った。言葉で言ってないが目は口ほどにものを言う。
アメジストの瞳曰く 『勝った』

「 何か騒いでんなどーしたよ?」
「ア、アレス様ァァァァ!」
 アレス様が案外普通に出口(もしかして出入り口?)から出てきた。入場の仕方があまりに過激だったことから色々学んだのだろう。
「遅かったですね、アレス殿」
 ローランドが爽やか挨拶をする。営業スマイルではなく爽やか100パーセント、純国産の笑顔だ。憎いぜ旦那ァ。
「それがな、下の奴らに弁償代請求されてな。とりあえず、後で支払うからーって話しつけてきた所だ。 全く人間はどうしてこう欲深いんだ。別にガラスの1枚2枚減るもんじゃねーだろ」
 アレスが全然爽やかでもなんでもない返事をする。
最初から割らなければいい話だ。自業自得だ。
「最初っからちゃんとした出入り口から入ればよかったんですよ……。だから先走らず我々と共に行きましょうと。」
「残念ながらソレは人間が欲深いのでも何でもありませんね。アレス殿が全部悪いんです。ガラスの1枚2枚は減るものですよ!」
 ローランドとクリスさんが見事に心境を代弁してくれた。 アレス殿ははぁー、と何か諦めたような悟ったような変な溜息をつき。
「ま、オレが支払うんじゃないからいーか。」
 と、何か開き直りやがった。
何故か爆走竜ライダーの栗髪少年がチッ、と舌打ちをした。
「おっ、リカルドじゃねーの。よっ! 着いてたのか。」
 舌打ちで気づいただろお前。絶対ェーそうだろ。
誤魔化すなよさっきまで知らなかったよね存在見てなかったよね?
 アレス殿はリカルド、という栗色アンド紫眼に挨拶。性格はともあれ彼はそれなりの敬意を払われているようだ。もしかしてドラゴンライダーだから? ドラゴンライダーリカルド。
「いいからさっさと行くぞ。さっきからテメェは何してんだコラ。付き合ってやったんだから感謝しろ」
 アレス殿相手でも容赦ないようです。
悪魔だぞ相手は。さては貴様アレか。契約者か! 契約者はドラゴンライダー!
ドラゴンをも文字通り尻に敷く毒舌男子は悪魔をも下僕にしちゃうそうです。

2012/01/16 09:47 No.34

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

「いや感謝つってもオレは……」
「黙れ」
「いや、だから付き合えなんぞ一言も言ってな」
「聞こえなかったのか、黙れ」
 完敗だね、こりゃ。
コイツ外道すぎ。腐りすぎ。
さっき私のことをゴミ呼ばわりしていらっしゃった様だがこいつの心こそゴミだ。
アレス殿たじたじ。さっきから思ってたんだけどアレスって凄いの? 雑魚なの??
「どの道、てめぇに付き合えなんてオレは一言もいっちゃいねぇぞ? 勝手に来たんだろうが」
 アレスの反撃、反撃のアレス。 入れ替えてみても駄目か。
対するリカルドとやらは相変わらず竜の背から見下ろす体勢で言った。
「何を言っている。貴様には自分が何をしでかしたかまだ分かってないのか? ゴミ2号。 『護国』がイキナリ消え去ったかと思いきや『ブラックスピア』、『ホワイトスピア』の隊長が二匹ともいなくなる。
ヴィルフリートも今いないのに、一体王都を空けるなんぞ何を考えている?  王都の守備を疎かにしてこの隙を国賊共に狙われたらどうする気だ?」
 なるほど、彼は中々冷静な奴なようだ、理路整然としている。
ちゃんと筋は通っている……と思う、難しくって良くわかんないけどね。
伊達にドラゴンで爆走したり、悪魔と契約したりしている訳ではないのかもしれない。
「オレとしてはローランドだけで良かったんだがな、クリスが……」
「当然です、ローランドに出来て私に出来ない筈がありません。ですから私も同行したまでです。」
 いや、クリスさん、あなたの負けず嫌いが全ての元凶だったりするの!?
 なんだか自信満々なクリスさんの横でローランドはヤレヤレといった様子でリカルドって奴に対して言った。

「……その件に関しては大して問題ないのでは?  こーゆー時の行動については、ブラックスピア隊副長と俺の従騎士に指示してありますから。」
「……」
 以外や以外。ローランドの一言で黙ったぞ!

案外こうゆう人種はローランドみたいな奴にやんわりと言われちゃうと跳ね返せないのかもしれない。
あぁ、勉強になります。将来役立つかも。
 うん、役立つ役立つ。役立…たねぇよ! こんな奴他にいてたまるかなんですけど! 世界に2人として要らねぇわ!

「……お前は良くても他がよくない。ブラックスピア隊に支障はないだろうが残念ながら上の奴らは相当慌てていたようだが? 革命前夜かと大騒ぎだったぞ。」

「それで、逃げ出してきたってわけですか」
「逃走か? テメーのやりそうなことじゃねぇか」
「逃亡ですか… 対応がめんどくさくなったんですね、わかります」
「フン、『連れ戻しに来た』に決まってるだろうが」

「いや、どっちにしろやってること一緒だろ…」

2012/01/17 19:18 No.35

丸大豆★magy2TXjCl_EP8



「下らん話はもういいな。 さっさと行くぞ。」
 リカルドがひどく不機嫌そうに言った。
本当に不機嫌なんだろう。ザマァ。
 ローランドとクリスさんは「そうですね」と軽く相槌ちを打ったがアレスだけ何か反発していた。
やーめーとーけー
「あ゛ぁ? 人間の分際で命令すんなやコラ」
 相等怒ってるよコレーー!
かなりお怒りのアレス様、悪魔は怒ると何するんだろーか……。
もしかしてやっちゃう? 怒って火吹いたり隕石落としてきたり雷鳴轟くイカヅチ落としていざ地中滅亡だったり!?
 せめて魂食っとくぐらいにしとけよ。そしたら最大1名様(1命様?)の犠牲で助かる。
世界が。
「ハッ、命令して何が悪い? お前はただオレに従えばいいんだよ。 低能が」
「おまっ……テメェ…・・・」
 ……ダメだ。
 ダメだコイツらーーーー!!!!
人で言う常識ってモンがない!? 常識の『常』の字は常習犯の『常』デスカー!?
「ちょ、えぇぇえぇぇ!? お前らもっと仲良くしろよ! もっとイロイロ合わせろよ!
アレスはそこ逆らうなし!! リカルドは挑発すんなよただでさえうぜぇんだから!
おぉーたぁーがぁーーいぃーー契約者でしょ! けーやくしゃぁーー!」
 ハァ?何言ってんのお前?
そう言われなかったのはアレスの優しさだろう、が、顔で言ってた。
表情に超出てた。
「えー? ケイヤクシャじゃないの? そこ」
「……何を言ってる、 ゴミ。」
 こいつはフツーに言いやがったよ。
「契約……強いて言えばオレの契約者はコイツじゃないんだけど
もっとデカクて歳のいってる男だ」
「マジでー!? うっわー、てっきりコイツかと思ってたし!だってチョー態度デケーじゃん。
 フツー悪魔に対してココまで偉そうなのって契約とかした相手位じゃね?」
「へっ? アクマ?」
 あっ、クマでしょうか。いいえ、ゲロカスグマです。 って違ぁう!
「そのー……え? 何? アレス様って悪魔じゃないの? 麗しきイケメンデーモン閣下じゃないの?」
 アレスは金色の眼をピカピカさせて困惑な表情を浮かべた。
イケメンは思いっきりアホ面をしても様になっている。ちょっとオマヌケでも顔がよければそれでいいわよーオホホホホーなんて言う女性人(主に中年くらい)も多いだろう。
 残念ながら私は良くない、凄くよくない。めっちゃ良くねぇぇぇぇ!!
「いや、俺は悪魔じゃねーよ」
「じゃ、何?」
 パチこくなー、コウモリウィングはやしといて、金色の眼で藍色の髪でイケメンでちょっとアホの子入ってるなんて悪魔じゃねーなら何?
「お前と同じだ。 野菜でも魔人でも、 人間でもない。 」
 ……。
「え?何つったよオイ?」
「だから、オレはお前と同じだって」
 …つまり、だ。
まず、私は魔人族ではない、10歳の誕生日にフクロウは来なかったし、空を自由に飛べたこともない。さっきだって散々疑われたけど全力で否定したし。
 そして野菜でもない、サラダに入ってシャキシャキなんかしてない。断じて

 でも、最後、なにかおっしゃらなかった?
『人間でもない。』 って。
1日に2回も人間じゃねー宣告食らいましたが何か?

 クリスさんはにこっと笑った。 こうやって笑うと本当に綺麗な人だなーって思った。
ローランドも柔らかな微笑みを浮かべている。
リカルドに到ってはゴミを見るようなムカつく目つきだ。……ハハッ、コイツいつか殺そう。


「レイナ、お前は竜だ」


  竜。

 竜か。

竜ですかー。


「マジでぇーーーー!!??」

 冗談きついですーー!
夢なら覚めろ!今すぐ醒めろ!!道路のど真ん中で昼寝してたら危なぁーーいっ!
さて、ドッキリはもう大成功ですよー!カメラはどこ!?看板はどこ!?
ぎゃー!もう何が何だか訳わかめ汁コーンポタージュ。


 でも、心の端っこで、だいたい直角に折れ曲がってるところでこそっと何か聞こえた。


 やっぱりねって。

2012/01/20 17:54 No.36

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8



「それじゃ、行きましょう。」
 ローランドが言った。
何がそれじゃだよ……。ちょっと待て、いや、待とう。待つべきです。
「デュランダル!」
 待ってくれなかった……、
何かデュランダル! とか叫んだ瞬間に上空から黒き翼の竜が舞い降りた。
ちょっと小型の黒い竜。例によって鱗はない、というより鎧っぽい。
頭の部分が特化しており槍のように尖っている。

どっから沸いた。
今のは何だったんだ? カモォーン! って意味だったのかな?
「デュランダルで来たのですか? スピア級で竜姫様をお迎えするなど恥知らずな」
「ソード級は目立つから避けたつもりだったんだけどな……俺は」
 何か含みがありそうな言い方だ。
ついでにデュランダルって何? と聞くと
「コイツの名前です」
 やっぱり名前だった。
「――バルムンク!」
 これも名前だろう。
大きく風が唸り、やっぱり遥か上空から白い龍が旋回して降りてきた。
これは…きれーな竜だなー…美人さんだ。
爬虫類っぽくない。
恐竜みたいじゃない。
やっぱりデュランダルよりは大きめで、色は白。
純白の綺麗な地肌(地肌?)が太陽の光の当たり方によってキラキラしている。
すくっと長い鶴みたいな首、そこに月光のように自ら光を発してるような翼。
おとぎ話には基本美しいドラゴンなんていないだろうが、いたらこんな感じだろう。
姫君に相応しいドラゴン。 …いや、どんな竜だ。
そんな感じです。
こんな綺麗な竜がバルムンクなんてゴツイ名前なんて……。
「遺憾の意です」
「まぁ、お上手ですね、そんなにほめられてはバルムンクも穴を掘って埋まってしまいますわ」
 褒めてません。 しかも穴彫って埋まんのかよ、穴があったら入るんじゃなくってそこ人工的なのね…、いや、竜工的と言うべきか。

2012/01/25 14:48 No.37

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

「乗ってください。どうぞー。」
「えっ、ちょっと待っ……」

 言い終わる前にひょいっとクリスさんは私を掴んだまま騎乗してしまった。
いや、ちょっと待ってくらさい…。

「飛びなさいバルムンク」

 クリスさんはきつい口調で命令した。
バルムンク、とか言う竜の羽ばたきひとつで近くにあった木々が秋でもないのに、わずかに葉を散らす。一気にがくっ、がくっと上昇していく。

 しかしそれはスムーズに、ジェットコースターのような強制力はない、本物の『生き物』の軽やかさだ
バルムンクはその翼で鮮やかに空を切りながら美しくも荘厳に上昇し続ける。
 それを操るクリスさんの手さばきは実に鮮やかだ。
まるで、心が通じ合っているかのように

今まで周りを囲んでいた木々はどんどん低く、小さくなっていく。
遠くに広がっているのは田園風景、畑や村がミニチュアサイズ。
こうゆう光景はテレビとか本とか場合によっては資料集なんかの航空写真として載っている。
 が、実際にこの目で見たことはなっしんぐ。
自慢じゃないが飛行機は通路側に座っちゃうタイプなのです。

一体どこまで上がったんだろう……? ぴったりあう言葉がもうない。
高層ビルの何階らへんだ、と言っても難しいところ。
 だって登ったことないから。
大体こんな急上昇して大丈夫? 物理的になんかマズくないの? そもそもドラゴンが空を飛べる理由って何よ? 鳥とかと同じ? まさか飛行機やヘリとかそっちより!?
 ここまでバッサバッサ飛んでると風圧も気になるし、ドラゴンって結構重そうだから質量も相当ありそう。一体このデカブツが重力にどう抗う!? クリスさんやローランドやリカルドにGはかかってこないの!?? タケ●プターで空飛んだら頭皮が引きちぎれるって聞いたんですけど!?
一体どうなってる物理現象!

「ま、そこはファンタジーなんで気にしないで置いてください」

 そうだな、ファンタジーならしょうがないか。
え? 何? 何でさっきからどうでもいいことばっか考えてるか、って?
空を竜で飛んだんだよ、もっとわくわくすること言え? どんな気持ちか言ってみろ?

 は、いーよ言ってやるし、言ってやりますよ言うよ。
 ……正直に言います。わくわくもしないしテンションも上がらない。
かと言って冷めてる訳じゃないのがヨノツネ。冷静ではないのよ、ハイ残念。
 そう、私の心に今あるのはたった一つの純粋な思いだった。

「たっ……高いトコ……怖い…」

 蚊でもアブでもショウジョウバエでも鳴くかのようなか細い声で言ったのにアレスをはじめクリスさん、ローランド、外道ルドまでえっ!?という顔をこっちに向けた。

 そう、私竜崎礼奈15歳はモノゴコロついたときより軽い高所恐怖症だったのです。


 竜なのに高所恐怖症って意味分かんねーー!? オーラ(←どんなオーラだ!?)が漂う中びゅんびゅん飛走中。
クリスさんはやや強張った笑みで「下をあまり見ず、私の背中をしっかり掴んでてくださいね」と優しく言ってくれた。
 その優しさ痛ぇよ!

乗り物は基本電車、バス、チャリな私、車の中での読書は酔うしバスでも時々酔っちゃったりする。
乗馬経験はほんの2回しかも優しい乗馬のおっさんのエスコートつき。
と言った乗り物暦のわたしがへばったりしなかったのは運転手の腕の良さだろう。
クリスさんさいこー! できるなら今にでもステップ踏んで感謝の踊りイケそうだ。 無理だけど。
 現実は甘くない、捕まってるだけで精一杯。
時々アレス(自力飛行)が横まで来て

「高いところ苦手か? オレもガキのときそうだったから大丈夫」
「いつか慣れるって、人間だって2、3年で慣れるんだ」
「心配しなくてもお前は竜人だからこんなとこで自己不信になったりすんなよ?」
 と、何とも心がアタタカイ励まし(ハゲ増し!?)の言葉をかけて下さった(敬)。
ま、8割聞いてなかったんですけどねー!(ばーん)
恐怖でーwwwww
ただ、何か意外だったのはリカルドとかいう俺様100%野郎が、

「…信じろ。」

なんか不器用に? 慰めてきた。

 アレスの好意とその他人間たちの不安感。ついでに(というかメインに)高いところへの超絶恐怖をできるだけスルーして精神的にも肉体的にも限界突破ァ! の2時間が過ぎた。
 どうやら我々は着いたようです。

件の王都ヴァルハラに
「裏口からーーーっ!」
 裏口、うん、そう裏口。
どう見たって正面玄関じゃない。
なぜなら〜…(ずっぱ〜んドロロロロロロロ×2) 私が高いところ嫌過ぎて死にそうになっているのを見かねたお優しいー方々がそれなりに善処してくださったからなのでーーーっす!

2012/02/01 16:48 No.38

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

 そもそもこれは元々竜人アレス様のおしのびで、レッツゴーだった故そんなアケッピロゲーに行くわけにも行かず
「じゃバレないよーにこっそり城にかえるんでいいんじゃね?」 とのことでぇーっす! イェーイ!!

 ……テンションがおかしい、ちなみにその間リカルドさんはずーっとドライアイスのような目で見つめてました。
ケムいわケムい。

彼の曇りきった眼には一体何が映ったのでしょうか。

 地上に降りた瞬間元気になった私を見てアレスはフツーに上機嫌。
クリスさんはヤレヤレと言った様子でローランドは
「元気なら何よりです」
 と思わずホロリとくるセリフ。

ちなみにその間外道ルドさんは極寒の地に逆巻くブリザードの如き瞳でずーっとガン見していました。彼の冷え切った心は何か感じたのでしょうか。

  期待してないけど

 お城は実のところ薄暗くってマトモに見ていない、が門兵×2が固める裏口といったところをクリス&ローランドが「君たちお疲れー」「いえいえ、隊長たちこそご苦労様ッス」という顔パスで通過。
 後で知ったが、これなるものは『アレス様専用出撃口part1』なるものでアレスイテキマース(※帰りも使用できます)専用口らしい。
 何ともヒマな奴である、解せぬ。

「さぁ、行くぞ! 王城へーー!! いざ出陣敵地粉砕!!」
「いや、これは敵地じゃありませんから」

 あら危ない、危うく味方の本拠地を爆破するところだったヤベェヤベェ。
せっかくレッツゴー! と気合満点ではいった王城は……!

「えー…ただの回廊じゃーん……。」


 現実は甘くなかった。 夢見る乙女のシンデレラ城はどんがらがっしゃーんと素敵な音を立てて崩れ落ちた。
悲しいことよ。ひたすら石でできた薄暗い廊下を歩いていく。

 やがて、これぞお城の門という重厚な石材、さっきの法廷と比べちゃまずい風格をもつでっけー木の扉の前に立った。
2人の門番らしき兵が両サイドを固める。貧相な私の経験値からすると国会議事堂並じゃね? この迫力!
 謁見の間とか言ってたけど一体何がくるんだ……。

「固くならなくても大丈夫ですよ。内内密のため超少数精鋭式ですから。
今この中にいるのはほんの一部の高級貴族、高官だけです。」

 フォローになってないよローランド。ますます上がってきたよ!
血圧が、血糖値が、あるいはテンションが!
「それは上がんなくっていいでしょう。申し訳ないけど我々はお供できませんし」
「えっ……」
 おーっと思わずマヌケな声が出た失礼。
マジで冗談でしょ嘘だと言ってよローランド! って目で訴えた。

「アレス殿が着てくれるから大丈夫でしょう。儀礼とかも全部省いてますしその辺の理解はあるでしょう」
「えー! えーっ!」
 えーで立ち向かってみた。しかし相手の守備は堅い。
 よし、かくなる上は私の最終兵器リ●ースカードで…

「できることならご一緒したいですがっ! くっそー! もうこの際慣例なんてどうだっていいでしょう! 1人くらい大目にみてもらいましょう! さぁ、私と一緒に!!」

「駄目だからなクリス。王命に逆らうことになるぞ?」

「かまいません! 王命の1つや2ぁつ!」

「反逆罪や死刑執行だって可能なんだぞ?」
「死刑執行人が首を切る前にハッ倒せば問題ないわ。その前にそんな理不尽なことで死刑判決食ったらバーロット家の家名において正式に裁判を要求しますそれでもムリなら国外逃亡」

 何か暴走しだしたぞ。
「だっ……大丈夫だよ! 何とかなる。いや、何とかする!」

 我ながら情けないことしかいえない。でも暴走がストップした金髪の女騎士は何とか思いとどまることが出来たのだった。
「ではそろそろご入場ください」
 門番よ、せかしてくれるな。今モチベーションチャージ中。


さぁ、行くぞ謎のカルーシアの王よ! 人とドラゴンと野菜を統べる王様行っくぞー!

「そうだ、入るといい。君には入るしか道は残されていないんだからな」
 門番が言った。
え゛――― 。
もーすっげー入りたくないんですケドー。
何か変なフラグ立ったんですケドー。
門番は大物かも!? なんですケドー。

 アレスは横で気にすんな、と言った。あいまいに相槌を打っておく。
重厚な木の扉が観音開きに開いていく。目にしたのはまさに、メルヘンワールドの魔法のお城。
舞踏会でもできるんじゃね? と思うほど広い大広間、おいおい謁見の間とかうっそだぁー。
と心の中で一人ツッコミ。なんと下には赤い絨毯が敷かれてその少し上の玉座へと続く。これが噂のレッドカーペットか!!
 流石にシャンデリア、とはいかないが十分な明るさはある。
床はお約束の大理石、ぴっかぴかの大理石、こんなことは多分誰もしないだろうが多分この上で思いっきり吐けばCO2は発生間違いなし。
 って場所に…入れと。

「ビビってんのか?」
「はい、超ビビってます」

 おうちに帰りたい。
 でも行くしかない、ここはハチャメチャなのだ。
あの時ネギ抜かなきゃ良かったよ。本当に野菜は喋るわ、人生初公判はやるわ、美形は大漁だったりするわ、果てにはお前は人間じゃないドラゴンなんだー、と。

 こうなったらもうやってやるよ。やってやりますよ。Do my best!
そして私は、謁見の間へと一歩踏み入れた。


後ろで先程の門番がクリスさんにボコられていた。

2012/02/06 17:56 No.39

丸大豆★magy2TXjCl_EP8



 入場口は今度はちゃんとした入り口だった。
ローランドが行ってた通り人は少ない、ざっと見て40人とかそこらがきれいに整列。

 あり余る空間を補正するような立ち位置だ。

1人1人何となく "こいつ……できる……!" というオーラがあり、服装も見るからに金がかかってそうだ。ちょっと触ってみたい。
 アレスを横目で見ると、ポケットに手を突っ込んでいる。
オイ!? テメェ公式だぞ!? 態度悪すぎだろ! それとも何!? 新種の大物なのかこれは!
 しかし貴族の紳士方は流石だった。
全員左手を右肩に当てて優雅に頭を下げている。その様子はさながら全校体操ラストのウェーブ。

 お前らぜ絶対ぇー打ち合わせしただろ。
40人(全部オトコ)に一斉に頭を下げられる私。えーっと……、どうしましょう、どうしようもありません。(←反語)

「も…、問題ない。問題ねーよ。そう、さっきだって男×11にお辞儀されたんだからっ……!」

 そしてフラッシュバックするハゲのカミングアウトの光景……うわっぷ。だーれかぁーエチケット袋もってきてぇー

アレスはつまんなさそうにスタスタスターと歩き、この階段上がればお前はもうシンデレラ、玉座あるからなー、と言った。


 駄目だもう胃が痛い。


 階段を上がったら王様なんて……死ぬ。なんかもう無理。

大人の階段上るとかそうゆう問題じゃない。


 そして階段制覇と同時にばっと頭を下げてしまった。腰90度でそのまま名刺でも出すべきか。ダメダ! 生徒手帳すら持ってない!

「おいおい、頭なんか下げる必要ねーぞ?」

 アレスがちょっとびっくりしたように言った。いや、頭下げるどころか全身で這いつくばって、靴の裏舐めてでも礼を尽くすべき相手ですよアレス様。だって相手は王様だよ! 国家元首だよ!? 竜と野菜と人間に君臨してる奴ですよ!!
 私の脳内王はオクタウィアヌス、ルイ14世、クイーンエリザベス。アレクサンドロス、シャルルマーニュ…全てテラ西洋。
 そこと比べていいのかまぁ……王様だし。
   \オリエントが1人いるぞ!/

「礼の省略を許す、面を上げよ」

 えっ? それって何語デスカ?

礼とかなに!? 省略はよく使うけど!? "面を上げよ" とか殿様か? 将軍か!?
 王様だったよ!! そーだー! こいつ王だーー!

 ファラオって呼んでイイデスカ? いや、他意はない。本当にマジで信じて。
でも、オモテヲアゲヨー、って礼から気をつけ! に移行するんですよね分かります。
 …じゃ、じゃあ……。よっこいせーっと、じゃじゃーん、直立不動です!

 ビシィ!と伸ばした背、足は拳1個分、手は体操着ズボンの縫い目ー!中1の集団行動の成果だ。
 私全然できなかったけどね。
さぁ、顔は上げたぞ、我が眼の先にある王のご尊顔は如何に!?

「えっ? 若っ……」

2012/02/12 09:12 No.40

丸大豆★magy2TXjCl_EP8

ものすごく若かった。
王っていうからてっきりナイスミドルをイメージしていた。ナイスじゃなくっても40代のオッサンを想像していた。
が、この白木の玉座に座っているのは間違えなく若者。
王子でも通りそうだ。
けど少年王、と呼ぶには無理がある。
 見た目は20代中頃から後半くらい。座ってはいるが体格は均整のとれた体つき、いかにも健康そうな肌の色、顔立ちは真顔なんだろうが常に微笑んでいるかの様な穏やかさがある。多分性格も穏やかな人なんだろう、多分。
このタイプは…そう、ハンサム。 うん、まさにホンマモンハンサム。
そのハンサムフェイスには何を思ったのか隈取のように顔を縁取る謎の模様が気になる。ん?これ…
 陛下のお髪は長さのあるフワフワの柔らかそうな猫っ毛で薄い栗色と明るいオレンジの中間のようなヘアー、瞳の色は柔らかな光をたたえた紫色……ってアレ?

 この配色パターンは…!
「え?リカルドと同じじゃーん!」
 あの鬼畜最悪毒舌外道の爆走ドラゴンナイトウザルドじゃねぇ、リカルドとそっくりなのです!
きっと奴があと10年し、髪が伸びて性格が更正すればこうなるに違いありません。ま、多分無理だろうけどね。アレが更正なんかするわけがなry
「リカルド…? あぁ、そなたもう王子には会ったのか」
「お…おうじぃぃーーーー!?」
 王子? 王子!? 玉子じゃねーよオージだってぇ!!?
ありえねぇーアレ王子とかマジあり得ねぇー!?
けど、待てよ私。考えろ、考えるんだ思い出せ、あいつがドラゴンライドしてきたときローランドは何て言ってた? 敬語を使ってなかったか? 明らかに、年下の相手に。
 そう言えばアレスが「ガラス代払うのオレじゃねーし」って言った時舌打ちしてたのって……。
王城についてからイキナリ消えるし、王子ならあのでか過ぎる態度もなっとくでき……
「う…うそダァアアァアァァァア!!! って王子!? ど…どーしよアレス! 私、王子様に……!
王子様になんて無礼なことを……!」
「んー?おうじー? あー…リカルドな。別にいいだろ、あいつ人間の分際でやたら態度でけぇし」
「でもプリンスですよ!? 王子様なら大抵のことは許されるでしょ!」
「類稀なステータスを差し引いてもお釣りがくるほど素敵な性格してやがるよな」
「本当そうだよね。あのウザさは異常」
 ん? リカルド王子説を仮定すると
「王様は……奴の父親か!?」
 有り得ない。
それこそ有り得んぞ! もしだとしてもとんでもないヤンパパさん(※やんごときなきパパさんの略ではない)だろ! 一体いつの子供だ!? 十代かー! 重大だろー!
または若作りなだけの実はオーバーフォーティー。ナイスすぎるミドルなのかもしれない、頼むから兄だといってお兄様と言って陛下。
「こいつはリカルドの叔父だけど?」
「ア、ソーデスカー」
 無難だな、なるほど姉さんの息子ね。
王一家の謎が一段落したところで、王様は赤いケープ……多分ケープ、
ちなみに襟はふわふわのファーだ。すげぇ言いにくいよフワフワファーって、アラビア語みてぇwww
…それた、そのケープをはためかせ、すくっと立ち上がった。
「さて、改めて自己紹介としようか。余は第15代カルーシア王、ハルドル・ヴァン・カルーシアである。
聞こう、そなたは誠に地に飛来せし9人目の竜人であるか」

2012/02/14 17:47 No.41

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

「…エ」
 何言ってんの? 前半は分かった、ハルドル・ヴァン・カルーシア、カルーシアの王。つまり名と称号だ。けど、後半何つった?

「そなたは ”護国”なのかと聞いた。」
「…。」

 黙っているのは否定でも肯定でもない、そもそも質問の意味が分からない。
私は竜だーってさっきアレスが言ってた。彼がそう言った。
けど、自分がそうなのかなんて分からないし本当のところ私って何? この15年間自分が人間だ、ホモサピエンスだ、日本人だってコトを1ミリたりとも疑わなかった、 疑ったことさえなかった。


当たり前すぎて。


 しかし、この魔法と竜と野菜の世界へ来て言われた。 ―――お前は竜だと。

言われてすんなり受け入れはしない、かと言って何故か否定も出来ない。誰も自分は悪魔じゃないということを証明できないのだ。
 私が?ドラゴン?
空を飛んだり、火を噴いたりする生物? ……何それ。そーなのか!? そーなのか!!?

「おい、ハルドル、何だ疑ってんのか?オレを」
 アレスが言った。
「疑っているわけではない。ただ、余は確かめたい。」
 ハルドル王も負けじと言い返す。声音も表情も穏やかなままだ。
「竜人がそう言った、だけじゃ不服か」
「不服ではない、本人の口から聞きたい」
 アレスがハッと鼻で笑った。なぜか威圧感が増す。
「テメェら人間には分かんねぇと思うがな、竜は竜同士ちゃんと分かるんだ。
お互いが何者であるか、名は何か。間違えねぇ、こいつはオレの名が分かったしオレもコイツの名が分かった。オレらにとっちゃそれで充分なんだよ」
 実際分かんなかったけどね、思いっきり荒らしとか悪魔とか言ってたけどね。
「何にせよ、これだけは分かって欲しい。こいつはまだ子供だ。
 しかもずっと異世界育ちときた。何も分からないのも仕方ねぇ、今一番困っているのは…レイナ自信のはずだ」
 はいそーでーす。そのとーりぃ! アレスぐっじょぶ!
心の中で思いっきり親指立ててのグッジョブサイン。ちなみにこの合図は古代ローマでのコロッセオで皇帝の『殺ってよし』がルーツらしいよ。死ね死ねサインはその名残とか?
 さて、ローマ皇帝はさておきカルーシア国王はというと難しそうなお顔をなさっている、眉間にシワ。
が、何か思いついたようです。
 右手をそっと上げ、静かに下ろした。
40人ほどの段下の紳士達はそれで全てを理解したらしい。
「陛下は人払いをご所望である。
おのおの方、下がられよ」
 ハルドル陛下の傍らのナスが言った。

2012/02/18 16:59 No.42

丸大豆★magy2TXjCl_EP8

「今のは、カルーシア宰相のナウス・ヴィ・ナスだ。そのうち正式に紹介もあろう」
 カルーシアの未来はナスの双肩にかかってんのかよ。
 というか、ナスに肩って……いや、言うまい。言わんぞ!

ハルドル陛下は眉間の皺を消し、もとのやさしい微笑顔に戻った。これがデフォルトなのかもしれない、
柔らかなクセのある髪が少しだけ、揺れる。

「疑ったりして悪かったな。悪気があった訳ではない。えー…」
「レイナです。竜崎礼奈」
「そうか。レイナ」

 年上の男性に謝罪された。しかもこんなハンサムガイに。照れる。私竜崎レイナはウブで小心者な乙女なのです(←自分で言った)

「何が悪気はねぇだよ。テメェには分かってたんだろーが」

「あぁ、こやつは『本物』だな」
「やっぱな、分かってるくせに気いてやがる」
「余が分かっておっても他の者達には分かるまい、それでは意味がない、それに……
 何だ? 子供なのか? 」
「雛ってトコだな。まだ完全竜体化も部分竜化も出来ないだろう。護国の証とも言える『力の発動』も出来やしねぇ、やっと歩き始めたってところだ」
「……ややこしいことをしてくれたな、アレス」
「オレがやったことじゃねぇよ、これも古竜レオンの思し召しってやつだ」
「まったく……いつの時代も竜人たちのやることは分からぬな……」
 えwwちょwwwこの雰囲気は……
「あのーー、すいませーん? さっぱりなんですけどー!」

 このシリアスな雰囲気のところにKY台詞をKYテンションで聞いてみた。
アレスがげんなりした顔でこっち向く。せっかくのイケメンが台無しだ。

「レイナ……空気読んでくれ……」

 すいませんごめんなさい。このシリアスに耐え切れずあと意味わかんなさ過ぎて無理やりテンション上げてしまいました。だってだってぇー! 私を無視して私の話をするんだもん! 新しいよ新しいよある意味新種の放置プレイだよコレ!

「よし、なら、レイナ、折り入って相談がある」

「うわ、何か食いついた!? 何スか王様。あっ、政治的な話とか心から無理ですっ!」

 先に言っておこう。私の脳みそは一般女子高校生レベル(?)なのだ、政治? 経済? 知るかそんなもの。政治は選挙をテレビとかで見るレベル。消費税値上げくらいしか経済とは接点ないし。竜人すごいんだなーとか思われて高度な質問されても困るんだよ私は!

ハルドル陛下は優しく微笑んだ。

「心配するな、そんなこと聞いたりなんかしないよ。お前、余の世継ぎのリカルドと同じ年だろう」

「そうですけど……奴の心理を分かれって言うのも無理です」

 外道の心、ココにあらずだろう。
きっと外道の考えることは常人には理解できないようになってるのが、世の摂理だろう。
というか、理解したくないし、奴には理解者さえ必要ないよ、うん。マジデ。

「そう言うな、『アレ』も根はただの子供にすぎないのだ、普通の、お前の尺度でいい」
 あぁ、そう。リカルドも根は高校生なのね、根は。

ここの二文字大事よ、『根は』

2012/02/20 18:50 No.43

丸大豆★magy2TXjCl_EP8

「ぶっちゃけもう王位譲りたい」



「ハァ……?」



 何つった? オイ、今何つったよ?
とても一国の王とは思えないセリフ吐きませんでした!?

「パ、パァードゥン?」


「そろそろ王座譲りてぇ……」


 …オイィィィィィィィィィ!!!???
「えっ? えっ?? エーーーー!? 何なのこの人ーーーーー!! まさかコレが変態!?」

「何を言うかぁー、余の本心だぞー?」

「要らねーよそこの素直さ要らねーよ! そこ隠しといてよ何が何でもどんな手を使ってでも秘めておくべきコトだよね!? あなたの最大の汚点だよね!?」
「駄目だレイナ……。この王様は…ハルドルは……っ! たったの1時間も大人しく化けの皮をカブっていられない……そーゆークソな奴だったんだっ!」
「ネコじゃないのーー!? 化けの皮カブってたのーー!?」
「いかにもっ!(えへん)」
「えへんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 壮絶なキャラ崩れお越しやがったよこの人! これに比べればアレスやリカルドはまだまだマシな方じゃないの…これ…いや、ないわ。マジないわ。

「あのね王様ー気持ちはわかるけどー…。」
「余はそろそろ隠居して縁側で茶飲みながら盆栽でもやってたいんだよな」
 えらいジジ臭ぇなコイツ。
 あんたいくつだよ……。
「もうちょっと、がんばりなよ? あの毒舌プリンスがせめて二十歳になるくらいまでさ……」
「ハタチってあと何年?」
「だいたい4年だな」
「ウワァァ ――――ン。ムリィ ―――!4年とかムゥリィ ――――!!」
 何だかこの2人の掛け合いを見ているうちに目頭が熱くなってくるのを感じた。
おかしいな、悲しくないのに、
どうして涙が出てくるんだろう…。

2012/02/22 17:44 No.44

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8



 朝になった。
王様のお城で一夜を過ごしてしまった私。
トリップしたのはファンタジーな世界、おとぎ話100%のお城にドラゴン、出てくるのは美形ばっかの少女向け小説王道な世界。
が、現実は夢見る乙女にはやさしくない。トリップ方法は戦犯100%だし、出てきた美形はどいつも1クセも2クセもあるやつばっかなのです。
先だって出てきた20代くらいのハンサムガイ、カルーシア王ハルドル陛下はヤル気などミジンコの心臓ほどもないクソだったし、人間らしさが消しカスほどもないリカルド、という同年代の男子はなんとプリンス・オブ・カルーシアだったのですからっ!
 何だか私に親切なアレス公は人間じゃないし、このノリだと唯一の良心は昨日お会いした好青年ローランドさんだけかな?
…な心境の朝です。(←どんなだwww)
さて鬱鬱な気分を晴らすべく良く晴れた朝日を拝んでやろうかと窓を全開にしようと試みた。そこに
「ぐ……ぐっもーにん」
 窓の外側にはコウモリ!? とツッコミを入れたくなるような180度逆転体勢で件のアレス殿が窓のサンの所にぶら下がっていた。
「グーテンモルゲン、レイナ」
 そうでしたね。ドイツ風でしたっけ。
アレスはよっ、と体を空中でひねり人間として重力に素直な体勢にもどった。

2012/02/28 19:23 No.45

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

「よく眠れたかー? お前疲れてんだろ?」
「うん、熟睡☆爆睡☆超快眠!
 おかげでスッキリ目覚めたよ! いつもなら3度寝くらいするんだけどね―――!」
「……そりゃ、よかったな。(苦笑)」

 ふと自分の格好を省みてみる。ブラウス、リボン、スカート、ベスト……。
ありゃー……自分制服のまんま寝てしまったようで。これじゃ昼寝と大差ないじゃん!
ブレザーは律儀にハンガーにかけてある。疲れたとは言え理性は残っていたのだ。
ん……? 制服……?

「やっべ…学校!」

 しくったよ、そーだよ学校あんじゃん学校!でなくっても家に帰ってないし昨日。
いや、そんなことより学校をだ。無断欠席は私のプライドが許さない。せめて欠席の電話を……
電話番号はー、でんわばんごー

カバァァァァァン!!

鞄がねぇぇぇぇーーー!! なんてこと! 鞄がねぇじゃん! 鞄はどこへ!
森、法廷、アスファルト……だめだ、心当たりが多すぎる。
しかも昨夜からは9時からドラマがやってる……あれ?
そっか、そういえばアレは金曜番組。土曜は学校休校日。

あ〜……じゃ、よかったぁ〜〜。

 とりあえず、何か1つ安心できた。これでは……。

何が何でも月曜までには地球へ帰ろう。この際行方不明だったと言い訳して宿題や予習はさぼりましょう。
うん、それがいい。欠席よっかずっとマシ。
「うん、何かスッキリした! イェーーイ! 朝サイコー! モーニングショットだね!」
スッキリ朝専用! 飲んだこと無いんですけどー
 アレスが窓から侵入してきた。どうやら彼には『部屋にはドアから入る』という概念が存在しないらしい。
「朝メシ食おうぜー」
とか言って朝らしく、片手にバケット入りサンドイッチを大量に持っている。お前コレもって吊り下がってたのかと問うと、ま気にすんなよー、とかいってごまかしたアレスはどっから出したのかポットを出してその辺にあったティーカップに緑茶を注いだ。…これは黙殺しよう。

「うめぇー、サンドイッチうめぇー、パンうめぇぇー! すっごいフワフワしてるわ!トマトとかジューシィィィ!! レタスもシャキシャキ! クソうめぇ!」

「あたりめぇーだ。料理人が全力で作ってたかんなー。お前の朝飯用に」

「私のかいっ! アレス、あんたのはー?」
「オレはもう食ってきました」

「2人分食ってんのかよお前…」
 優雅?なブレックファストIN床。何故かフローリングにカーペットという普通の床なので私にはありがたい。部屋だって狂喜乱舞するほどデカかったりするのもじゃなく、割とノーマルサイズだ。マァ……私の部屋よっかデカイけど。家具にしたって、ベッド、机、クローゼット、たんすーそしてちゃぶ台今めしくってんのコレー。というマトモなものだ。観葉植物はなし。サボテンでさえ枯らしたことのある私は観葉植物とは相容れない存在なんだ……
 腹いっぱいになるころには、ドアが叩かれた。

2012/03/09 19:39 No.46

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

「おはよー! ロー…なんだっけ?」
「ローランド・ラーケ・ルーケンハイドです。」

「…ローランドって長ったらしくて呼びにくいじゃん。ローって呼んじゃ駄目?」
「…え゛ーーーー」
 拒絶された。そんなに嫌か。

「…分かったよ。ローランドおはよー」

「おはようございます。竜姫様」
 折れた、私の闘志とフラグが(←何の)
テンションが5度くらいクールダウーン♪した私に対し

「おはようございまーす! ごきげん…ってあら皆様おそろいで」
 金髪碧眼の美人女騎士クリスさんが入ってきた。

「おはよクリスさーん。元気デスねー」
「そうですか? 始業が始まる前にご挨拶申し上げましょうと参りました。朝食はお済みですか?」
「食ったどー! おいしまった! 美味でゴザイマスゥ〜〜」
 OOOKU!!
「竜姫様におかれましては陛下への拝謁、見事クリアなさったとか。喜ばしい限りですね。どうでした?」
「うーん王様か」
 予想外の若いルックス。リカルドに良く似た美形、だが実体は……アレ?おかしいな…頭にモヤがかかって思い出せない…?

「ウ、ウォォォォ!? 何っ!? 何だ!? 思い出そうとすると頭がァァァァ!」
「レ、レイナ様!? し、しっかり! 申し訳ありません! 私っ……」
「やっぱり思い出すのも嫌な記憶ですか。流石陛下……。恐ろしい。」
「過去はわすれるよ……。時間が消し去ってくれるぞ多分」

 ハルドルは黒歴史っと。よし、消し去っておこう。
ローランドがお疲れでしょうが、と前置きして言った。

「本日はレイナ様。もとい竜姫様には我々の隊のほうの見学をしていただくご予定があります」
「隊? …あ――。」
 見学しろと、一体何か含むところは…あるのかないのか不明。
「とりあえず、まだ分からないことも多いだろうが説明して貰え、ということなんだろ?」
 アレスに分かり易すぎる要約をしていただいた。

「ともあれ、こちらのローランドからお聞きになればよろしいでしょう。私も答え得る限りお答えする所存ですわ。何でも質問してきてください!」
 クリスさんメッチャやる気に満ちとるわ。
ローランドがそれではまた後ほどー、第九の鐘がなる頃にまた来ます、と言って2人してスタスタ出て行った。


 う〜ん……、こう見ると二人って……
「ねぇねぇねぇ! アレス! あの二人ってすごいお似合いじゃない??」
 アレスはえっ、と一瞬文字通り真っ青になった。
体だって小刻みに震えていたもん。一体何かマズいことでも言ったのかしら私。
「なァ……お似合いっていうのは、アレか? 人間の言う夫婦とか恋人とかみてェに男女の特別な仲っていうことか?」
「う〜〜ん……。そうゆうことだな。美男美女だしぃー、金髪と赤毛って並んでると凄い絵になると思わない? それに何か仲良さげだしね〜」
「……アレがか…。いや、ねーよ。あの2人に限ってねぇって……」
 アレスはショックというか何やら恐怖すら感じている程の表情になった。
小刻みどころか完全にガクガクブルブルしてる。さてはここまでの分かり易すぎるリアクション
さては、ここまでのビビリよう…思い当たるは一つのみ……アレスお主。

「まさかクリスさんのことが好きだったり!? そーだよな!あんな美人フリーなわけないもんね!何だよーアレスー、そーならそーと早く言ってくれれ……」
「いや、違う。ない、それはない。」
「え? じゃ、じゃあ、まさか惚れてるのはロー…」
「それはもっとねぇ! オレはそっち系の趣味はない!」
「じゃ何? あの二人はオニアイデスヨネー。ねーアレスー?」
 アレスは何か言いたそうに聞こえるもごもごしてる。ごまかそうたってそうはいかないー、そうはいかない。貴様の本心も下心も丸見えなんだよアレス。
「いや、違うからなレイナ。あの二人に限ってそんな恋人とか絶対ねぇってオレは言い切れるわけでどっちかに特別な感情がある訳じゃねーって言えるわけで、それはオレの下心とかじゃなくって」
「はいはい、分かった分かったもういいよー」
「いや分かってねぇ! 全然わかってねぇだろお前!」

2012/03/10 11:51 No.47

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

 ○

その頃、『お似合い』の二人は同じくドアの前に立っていた。
しかし、お互いまっすぐ前をむいたまま、目もあわせない。

 ちょっときまずい沈黙。すぐ近くにいる…けど言葉に出来ない。
うまく言い表せない気持ちがお互いの胸中にうずまいていた。

 巷では若い男女にはよくありがちなこと。
このふたりはいろんな意味で幼馴染でもあり、そして競争相手でもあった。
子供の頃、学舎の頃また、訓練兵期間。それなりの年月を共にすごしてきた。

 ゆえに、ここでちょっと、ほんの少しだけ意識してしまうのだ。幼馴染でもなく、同僚でもなく、お互いに一人の人間として。

「うらやましいです。ローランド、竜姫さまと……竜姫さまと……!」
「あぁ、できることなら代わってやりたいがな、クリス。でも、『王命』じゃ、ね。」
「そんな社交辞令など要りませんわ、あなた第一、そうして朝から竜姫様のところへ?」
「決まってるじゃないか。彼女がアレからよく寝れてたか心配だったから。
 竜だっていってもコンディションは大事だろう。君こそどうしてかな?」

「奇遇ですね私もです。”あの”陛下の毒気に当てられてないか気になりまして。」

 クリスの言葉がやや毒気を帯びる。元々物事をズケズケというタイプ。口より先に手が出る、ダンスより剣術が得意、という傾向にある彼女だが、常より口調に棘があった、しかしローランドの方は穏やかな口調のままだった。

「毒っ気野郎でも王は王。勅よりいただいた命をしっかり果たしなさい。ルーケンハイド卿」

 ルーケンハイドとはローランドの家名だ。ルーケンハイド卿とはローランドの別名である。
「言われるまでもない。俺は自分の役割を果たすまで」

「どうでしょう、あなたに務まりますか。心配ですね」
「自分に至らない点があることは重々承知さ。それでもそうやら俺が適任にってことになっているんだよなコレが。」
「まァ、人事が間違っているといずれ分かるでしょうが」
「案外間違ってないのかもよ、そう思ってるのが自分だけ、ってことに何時気づくんだろうな。君は」
「そうであることを願いますが」
「呪うの間違いじゃないかな?」
「失礼な、呪いならとうの昔にかけていますわ。どうして効かないのでしょうか。」
「こっちも頑張って呪い返ししてるから。その後どう? 呪い効いてる?」
「愚かな、自分の首を自分で絞める様な無様なことは我が一族はしませんよ?」

「ハハハ。それじゃ、最初っから君たちの呪いが効いてないんだよー。」
「あぁ〜〜っら、何処かの性悪にしか効かないように成っているのですよ?」

  ”お似合い”の二人は辛辣とかいうレベルじゃねーぞ?という程の敵意ムキ出しの口喧嘩を披露していた。


 そう、城内で、いや、ひょっとしたら国中でバーロット家とルーケンハイド家との不仲を知らぬものはいない。

バーロット家の令嬢であるクリス、ルーケンハイド家の息子であるローランド。

 対立する家に生まれた二人の男女は某英国文学者の作品ではお互い恋におちるのだが、ここはカルーシアだった。家の教えに忠実で優等生だった二人は真面目に互いを意識し、嫌悪し、領民から兵卒にいたるまで老若男女、上から下まで”超仲悪い”と認知されるに至った。

二人はくるり、と背を向けると正反対の方向に歩き出した。
 それは決してブラックスピア隊とホワイトスピア隊の本部が反対の場所だから、という理由だけではない。怖いからあえて明記しない。
もう振り返ってもお互いの後ろ姿でさえ見えなくなって、二人は違う場所で同じ言葉を口にした。

「「あの野郎……いずれ蹴落としてやる。」」

 あの二人美男美女だしお似合いじゃないっ? という何も知らないレイナの無邪気な憶測は素敵なくらい外れていた。
 そう、カルーシアは夢見るヤツにどこまでも優しくないのだ。

2012/03/13 18:02 No.48

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8


           ○

 同刻、王の執務室。

第十五代カルーシア王、ハルドル・ヴァン・カルーシアは政務を執り行っていた。
 政務と一口に言うと如何にも円やかに聞こえるが、実際は大量の書類に署名し、後日行われる会議に目を通し、軍部からの暫定報告を読み、どの問題にどう対処するか…という中々のハードワークである。
 特に、専門的な部分は国で登用した文官たちが処理し、それらを取りまとめる部署があり、長たる大臣や長官がいうる。そのトップに立つのがハルドル、そして共に政務を行う宰相であるナス、本名ナウス・ヴィ・ナスである。

 無論彼(ナス)の下には秘書官五名、書記官多数さらに右大臣左大臣なる者達が控えている。国のトップが倒れてもどっかしらでちゃんと受け皿がある。というのはカルーシアの至宝ともいえるシステムだった。
 が、残念なのは君主のヤル気のなさ。

午前だけでハァハァゼェゼェしてる、息切れどころか呼吸困難。発作でも起こしそうな勢いだ。

「ぅぅぅぅ…おのれぇぇぇぇ!全く! 何故だ! ネーベルヴァルトの定期市の要請とニーヒェル港の使用許可願い?? 何でこんなものがココまで回ってくるのだ!?」
 王の王らしくない文句に宰相ナス閣下はハァ、とため息をつく。
「ネーベルヴァルトの市場拡大を狙ってのことでしょう。あの地方はどことなく活気がありませんでしたからな。農村部から出稼ぎに近くのエルベルンまで行く農民たちも多いようで」
「ならいいではないかー。そいつらが稼いでくれるんだし良いではないか−−」
 お前本当にトップに立つ人間かよ!? というのはナスの喉元まで来たツッコミをごくり、とのみこむ代わりに消化不良となったため息をまた一つ。

2012/03/20 21:13 No.49

丸大豆★magy2TXjCl_EP8

「えー……ネーベルヴァルトは確かゲーング領でしたな。ゲーング家は新当主になってから改革を進めてきたように見えましたが、ここで一つ大きく出た、というわけでしょう。」
 ナスの的を射た発言にハルドルは一瞬真顔になる。
ゲーングか…、と小さく呟いて机に突っ伏していた顔を上げる。どうやら何かのスイッチが入ったようだ、起動せよ、王。
「ゲーングの改革か、なるほど、未開のネーベルヴァルトを開こうというのか。そこで当たりと出るか外れと出るかは余には分からぬが……ゲーングのことか、勝算はあるのだろう。
 だが、ここでエルベルンだ。ネーベルヴァルトからの出稼ぎ分がなくなると、エルベルンはどうなる?
今まで通り……とはいくまい。それにエルベルンとネーベルヴァルトの間に……」
 うーん、と何か思い出すように唸る王。ナスは侍従に命じてさっとネーベルヴァルト近郊の地図を広げた。
「これですか……ネーベルヴァルトとエルベルンの間……ゾンネフリューゲル。」
「ゾンネフリューゲルはヘッセン領だったか、そうか。よってニーヒェル港の使用許可を、というわけか。
もし、ネーベルヴァルトが開かれれば、ゾンネフリューゲルが打撃を受ける。となると、もちろんヘッセンは商人を通行させたりなんぞせんな。そこでニーヒェル港に目をつけたと、アレならばヘッセン領を迂回できよう。」
 そうか、ここが狙いだったのか。ゲーングは新興勢力だがヘッセンは古くからの貴族、ゲーングをヘッセンが認めるハズがない、そこでゲーング伯は一計案じたとなる訳だ…が、
「では陛下、ヘッセン港使用許可を下すので?」
「…。」
 ハルドルは黙り込んだ、それもそうだろう。
如何なる理由があろうとも新しく市場が開かれればそれなりに変化もある。
栄えることもあれば、富を手にする者がいて。その逆もまた然り。
 ハルドルはどうしても考えてしまう、もし、
 もしゾンネフリューゲルの市場に人が、物資が流れてこなくなったら?
これは、ヘッセンの失墜やゲーングの栄光、などという問題ではない。
市民達はどうなる? ゾンネフリューゲルの市民達は冬を越せなくなるかもしれないのだ。
「…ネーベルヴァルトを開くことを許す。 だがニーヒェル港の件は控えよ。おって朝議にかける」
「御意。」
 双方の望む通りという結果に持っていきたいところではある。
実際ハルドルはいくつも見てきた、うまく言った例と、その逆も。
だからこそ軽々しく出来ない。彼が扱うのは単なる書類上の許可でも、または貴族同士のチェスゲームでもない。領主と国を慕って生きる、民の命なのだ。
 ナスは遠慮がちに声をかけた。
「ところで陛下、先だっての”竜姫”の件ですが」

2012/03/23 16:02 No.50

丸大豆★magy2TXjCl_EP8

「ん…あぁ、そうか。」
 竜姫、――竜人の呼称。 雌なら竜姫、雄なら竜王や竜公と呼ばれる。竜人をそう呼んでいるだけだ。

ハルドルはまた頭を抱えた。こええは市場一つと……いや、それ以上の難題だった。

「まだ真偽も分からぬ小娘、信用にたるとは思えませぬが。どう見たってハルマーク系の魔人族です。
しかしアレス公の言うとおりならば……」
「そうだな。」

 竜には竜同士、同族を感知する力があるという。ならば竜人が同族と言った。

この言葉は何よりも確かな証拠となる…が、アレス一人の言い分で信用は出来ない。

隣国の竜人にも問い合わせてみるべきか、だが相手は人間でも野菜でもない、『竜』だ、何を考えているのかわからない。

 彼女が竜人であると思われる節はある。ひとつはアレスの証言、もう一つは言葉。
竜人はことば(リスニング&スピーキングのみ)で不自由しないという、この世界の理。
 あの娘は苦もなく我々と会話していた。それもアレスだけでなく、”人間”のクリスやローランドとも。

 しかし、逆に竜人であることを懸念すべき点もある。
いくら異世界育ちといえど竜とは自覚がないものか? というか何故異世界までぶっ飛んだ?
アレスは”幼体なら仕方ない”と言っていたが、果たしてそうか?
 そして、こちらがほぼ決定的
竜人に限らず、一部を除く殆どの竜は金色の眼を持つ。
あのレイナ、という娘の目は黒かった。

 ぶちんと、何かが切れる音がした。
ぴしっと伸びていた背がへなへなへな〜と脱力していく。
ナスはまたか!? と身構えた。が、既に時遅し。
「その件はァー、ほりゅーでぇーー」
「陛下ぁ! しっかりしてください! 保留じゃないでしょう!!」
「待ってみよーよ〜。成長期なんだよ―! もしかしたら明日でっかい竜になってたりするかもよ――!」
「それはそれでヤバいですぞ!? 分かってんのかアンタ!」
「あっ、ナス。余、今思いついたぞ。さっきのニーヒェル港のアレだがいっそ、ゲーングとヘッセン、バトらせて買ったほうが港GETな! それでよーし! おーい! 命令書作っちゃってー。」
「へぇぇぇえぇぇええぇいかぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!」
 ハルドル・ヴァン・カルーシア
集中力は八十分しかもたない。

2012/03/30 17:15 No.51

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8




「ヘイヘーーイローランドさんよ! 今からいっちょツアーガイドですかーー!」
「それ程のものでもありませんがねェ……」
 レイナです。こちらレイナでーーす。
王宮とやらは無駄にデカく、そのままブラックスピア隊とか言う…え―――っとなんだ? 軍かな?

 ブラックスピア隊の本拠地まで竜に乗ること十五分。

下を見ると死ぬので上を向いて飛ぼう。涙が零れない様に、恐怖で。
そして到着したのがここブラックスピアの棟。
 いやー、びっくりしたのなんのってー、ローランドの革ジャン、ゴロゴロいる。どうやらこれが隊服らしい、動きやすそうで機能的っちゃキノーテキだけど……。
 さらに驚くべきことに、この軍隊、女性隊員の姿もあり。
麗しの女性隊員の服装パターンは二種類あった。男同様ちょっと可愛くした革ジャンか、先だってのクリスさんのファンタジーアーマー。
「ロ、ローランド! 女のひとがいるよ?」
別に私は女性差別を言ってるわけじゃない、むしろ男女共同参画社会基本法や男女雇用機会均等法なんてものを教科書で発見してるくらいだ。
 でも、ファンタジーわーるどに女性兵士がいるっつーーのはちょっとびっくりしたよ。え?ドユコト?
「え、女性隊員ですか? いますよ、そりゃあ」
 フツーですけど? といった顔だ。
「え? だって女の人でしょ? 戦争いくの?」
「行きますよ。 …まぁ、確かに女性は男より少ないけど、やはり女性は結婚やら子育てやらありますし。
貴族なら夫と共に領地を治めなければならないし平民でも家事や教育がありますからね。
我が国では男女差別が未だに残ってますから」
 パチこくな、残ってなくね? 残ってないよね!? 根元から抹消されてるよね!?
それにしてもこのローランドという男、めちゃめちゃ理解あるじゃん、これぞ紳士だ。ジェントルマンだ。
「例えば、名前です。男より女のほうがやたら長ったらしいでしょ?」
「・・・あ―――。」
 そうね、言われてみればね。
昨日裁判所でクリスさんの名前超長ぇー、と思ったっけ。
「奴の本名はクリスティーナ・ヴィクトリア・フォラ・バーロットです。」
「そーそー、そんな感じだった。よく言えるねぇ」
「いや……これはですね、自分の名前・母親の名前・母方の苗字の略称・苗字 なんですよ。つまり『ヴィクトリアさんの娘のクリスティーナはディフォーラ家の血を引いてるバーロット家の子供だよ』って、感じに名前だけで自己紹介してるようなもんです。
 これに対し男は、自分の名前・母方苗字の略・苗字なんですね。
俺の母はラーケンフェルツ家出身だったので。ローランド・ラーケ・ルーケンハイドってな感じになっているんですよ」
「母親の苗字が大事なのは分かった」
 やたらとこだわってるからな。ローランドは苦笑した。

2012/04/03 17:09 No.52

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

「まぁ、そんなところです。あと、男女差別とはいっても ”女性は守るものだから” という考え方があったらしいんですが。 ……昔のことですがね」
 ふーん、なんか複雑。でも名前って長いほうが偉そうだ。
アメリカとかヨーロッパ人はミドルネームもあるしね、そんなものだろう。
血筋っていうのも貴族の間じゃ大事だったりするんだろう。
何だかかなりレベルの高いお話だ。
 そんなことを話していると、すっげぇ建物に入っていった。広さは不明、かなりでかいとしか。
ただし、如何にも軍事施設ですよといわんばかりの無駄な装飾を省き強度と利便性を重視した石造りになっている。なんだかすごく緊張してきました……。
 どっかの修道院か何かを思わせる石畳の廊下を進んでいく、その間会う人会う人性別年齢問わず皆一様に右肩に左手のグーを当てて頭を下げた。この時、肘は方と同じ高さ。これがカルーシア式敬礼らしい。
「どうですか、 ”黒槍棟” は」
「すげぇーでけぇー」
「国の最重要施設の一つですからね。流石に王城とまではいかなくてもカルーシア最硬度の石材を使用しています。」
「王城か……。そうだね、やっぱ王様大事だからねぇー」
「えぇ、あれこそ我が国のシンボル。しめじ城です。」
「そーそ、やっぱお城の名前はしめじ…ハァ!? 今なんつった!?」
 今すげぇこと言わなかった!? 驚愕の台詞吐かなかった!?
お城の形は間違ってもきのこじゃない! むしろ形状は某テーマパークのお城に近いよ!? テラおとぎ話なのよ!!
この国のネーミング的に……しめじ……アリか……。
元ネタは姫路城。
「江戸城でエロ城とか、大阪城でおーざっぱ城とか言われるよっかマシだけど……」
「? 何か? 」
 何でもないです。

何にも言わないです。

2012/04/07 16:49 No.53

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

ローランドはひたすら歩いていく。って、え? どこまで??
「いえ、これは実際見たほうが早いかなーっと」
 謎の応答、だめだ、意味が分からぬ。
そしたら何か背後からガラガラという車輪の音。……これは聞いたことあるぞ。
見えたのは馬車ってゆう奴。お城と王子様にセットでついてくる…ってほど豪勢でもないがメルヒェンな代物だ。
 でも残念だけど王子様もクソ野郎だし、お城だってネーミング残念なのよねー。 それにセットでついてっくる馬車なんだからやっぱ一癖あった。
 もう、分かるよね……?
「ドラゴ――ン」
「ドラ……? あぁ、竜です。」
 そっか、竜って呼ばなきゃいけないんでしたっけ、ゴメンゴメン。
これは竜……どらごん……よしむしろ、イメージしてください。恐竜映画の飛べない恐竜達を。
イグアノドンだよイグアノドン。ダイ●ソー見ろ。
羽はないらしいし、”このままダチョウとかディアトリマに進化したんだよね”という感じ。
 つまり、どS王子の眷属グラムや何時ぞやの三階建てドラゴンとは違うっぽい。
いや、根拠があるわけじゃないよ、直感直感。 女の子の直感は鋭いんだからねっ!
 自分に自分で元気を与えた。
「どうぞ、足元に気をつけて」
 馬車(竜車?)に乗ろうとしたその時。ビシィッ! と何か鞭が飛んできた。何 故 。
ハイソックスー、むこうずねー、直撃。
「ぐぎゃ、 イテテ」
 弁慶も痛がる向う脛〜。アキレス腱と共に人型生物共通の弱点、え、アキレスの弱点は踵? 知るか。
「すいません、これ、学舎から上がってきたばかりの訓練兵のオリエンテーションで使うもので
何人もの訓練兵がこれで骨折してますよ。中には避ける子もいますが」
 どんな代物だよ!? 危険すぎるわ!! ついでに仕組みは気にしてはいけない。
嫌だわー、コレで乗った瞬間に後ろから剣でズブリとかクッションに画鋲がおいてあるとかあったら嫌だわー。
 大丈夫、なかった。 中は何気ひろい。リムジンってこんな感じ? いや、乗ったことないけど。
「えー、では注目! って言っても今は一人だけですけどね」
「ローランドいつもこんなことやってんの?」
 まさか、とローランドは言う。
「俺も訓練兵のときにやられたクチです。」
 その時の鞭の対処法是非知りたい。

2012/04/07 16:50 No.54

丸大豆★eaDYM2dZjI_EP8

「では、まず、今この竜車を牽いているのを見ましたね?」
「うん、見た。何か竜って感じじゃないよね」
「そうですね。この級は飛べませんから。殿下のグラムや俺たちの竜とは違う。この種は元々野生にいたものでもない。人間の交配の結果生まれた、といわれてます。飛べない竜。一般に『シールド級』と呼ばれます」


 シールド。

脳内検索の結果出てきたのは一つ。

 ――盾

シールドつったら盾でしょ盾。
え、でも実際凄いの? 盾なのこれ?

ローランドが壁方面の板をずらす、スライド式でしょうか、いいえ、ふすま式です

「うおー、スゲェー。黒板きた! 黒板ー!」
 馬車……、いや竜車IN黒板。一家に一台。全自動卵割り機もよろしく。
ローランドは白墨(どっから沸いた…)を手に取り黒板に書いた。
 多分、シールドって。
でも読めねぇ! アルファベットっぽいけど読めねぇえーーーー!!

「どうかしました?」
「お察しください……。ローランド、私は三歳児なのです」
 ローランド・ラーケ・ルーケンハイド。察しのいい男だった。
あー、そっかー。と言い横に盾らしきものの絵を描いてくれた。
 ありがとう、君とアリエール。

「ついでに、三歳児でも読める子はいますよ。竜人たちの『竜文字』ほど複雑じゃないのですぐ覚えられますよ」
 それはアリエーナイ。この頭じゃ無理! THE 不可能!

「……続行。まず、竜は大きく分けると五つに分けることが出来ます。
一つは先程言った『シールド級』空を飛べない種。陸軍も使ってますよ。今の戦場は空ですが。シールド級は庶民でも飼ってたりします」

「そのー……牛みたいな?」

 農耕馬とか農耕牛のことだ、カルーシアにもあるのか? と聞いてみる。

「普通は農耕馬や農耕牛ですね。農耕竜なんて聞いたこともありません。多分、足がデカすぎるし、爪もあるから向いてないんじゃないかな。耕すつもりが根絶やすに……」
 ローランドの思考回路、そりゃアリエーナイ。


「次に、飛べる種族。こっから四つが俗に言う飛竜科。しかしこれも人間の作り出した種類です。
小振りな小型飛行種。アロー級です」
 黒板に≪アロー≫と(おそらく)書いて、弓矢の絵。あぁ、そっかアローって矢だよね。
弓矢なんて素敵〜。使用者は戦国武将or巫女さんorエルフ

矢は繰り返し使おう。なんというリユース精神!

「あ、竜姫様。ここで降りてください」
「何!? 目的地!?」
「いいえ、パーキングエリア」
「トイレ行っとくべき?」
 はいごめんねー、下品でしたねー。

ローランドは貴族らしく下品なジョークをスルーして、空を見てください、と言った。
その言葉に従う、空を見る。

 あぁ、女心と秋の空、って今春だわ(ビシィ)!!

高く澄んだお空には日本じゃイレギュラーだが、カルーシアではメジャーな光景。
 竜とその上に人。

「竜騎士です。まだ訓練兵だ。あの高さなら落ちても痛いで済む。
 見えます? 彼らが乗ってるのが『アロー級』です」
 あ〜、確かにネ。
竜騎士(仮)連中は何となく不慣れに見える。
多分一番前の人が教官だろう。

「二列目三番! 隊列から外れている!」やら「三列! 前へぇー進め!」 「騎乗したまま! 右向けぇー右!」 「体操の隊形! 中心四班山下!」 「はいっ!(山下)」

 ……何かどこの中一? ここは体育館かっ!


 ローランドはいやぁ、懐かしいなぁ、という顔だ、おいオッサンか。オッサンなのかー?
アロー級と呼ばれた竜は、うん。小さい。割と小さい。
でかくてバイク、小さくてチャリってものじゃないか?
少なくとも昨日の奴らよっか小さめ、ひょっとしたらシールド級より小さいのかも。
 色は様々だが暗色系が多い。くすんだ〜色という表現がフサワシイ。
 まー、竜だからね。そんなショッキングピンクとかアイボリーとか蛍光色とか居られても困ります。


 でもとりあえず聞いてみるか。
「ねーねーロー」
「略さないでくださいよー、何ですか?」
「もっとパステルカラー! っていうのは居ないの?」
「明るい色ですか? そうゆうのはアロー級にはいないけど。薄い色になるかこうゆう暗い色になるか。
薄いとホワイトスピアに行っているので、もしくは本隊」
 竜騎士団にもイロイロあるらしい。
場面は再び車の中。はい、スパスパ行きますよ、次、
どこに行くのかなー? 何が出るのかなー?

2012/04/11 18:14 No.55

丸大豆★magy2TXjCl_EP8

「次はスピア級。槍です。大きさはおおよそ馬位のものからでかいと体高さ四メートル。アロー級より高く飛び、持久力だって勝る。実際の野生種はコレです」
 チョークで≪スピア≫って書いて、アバウトな槍の絵。

「スピア級の竜舎はちょっと案内できませんね。
 昨日俺が乗ってた竜がそうです。実際の空中戦でもスピア級とアロー級が主戦力です。」

 フムフム。OK。スピアね、一瞬スピアってスパイかとおもった、 ミッションインポッシブる人たちかと。

「そういえば、そっきからブラックスピアーとか言ってるけどそれ何よ? 文字通り黒い槍?」
「それはですね。いいですか? カルーシアにはそんなに多くもないけど、野生のスピア級が何種類もあります。体型や攻撃パターン。食べ物や棲みか。体色、鳴き声なんかで分けます、ここまでいいですか?」
「任せろ」

 ライオン、チーター、トラ、黒豹くらいに違うってことだろう。
みんなネコ科の肉食動物だけど皆違う。
 みんなちがってみんないい。比較物が小鳥と鈴じゃないだけだ。

「カルーシアにはある二つの種類だあります。”ホワイトスピア”と”ブラックスピア”
 元々は同じ種類からの派生で進化の途中体色がステキなくらいはっきり分かれた」
「白と黒……もともと灰色だったんじゃね?」
 ホモサピエンスとネアンデールタール人みてぇ。
ネアンデールタールよ永遠なれ。僕らは君達を忘れないよ!

「世界中の全スピア級の中でも最速レベルです。特にホワイトスピアはソード級というこの上のランクの竜にもひけを取りません。この竜を使う騎士達、これがホワイトスピア隊、その中の3人の隊長のうち、一人がクリス」
「え、マジ。 クリスさんスゲ――」
「えぇ、忌々しいこと…じゃねぇ…悔しいですが彼女は一流の竜騎士です。
ブラックスピアの方は速さだけならホワイトスピアに劣りますが、それでもスピア級のなかでは最速クラスです、同じく三人の隊長から成るブラックスピア隊、本隊、王室護衛兵。とまぁ、こんなところですね、お分かりいただけました?」
「多分」

 あとで総復習しても危ういです。本当は
そこは察しのいいローランド。今は無理でもそのうち覚えられますよーだそうで、いやいやそんなこと覚えるまで滞在するのか私!でもね、覚えられなかったりするのよコレ。あなたみたいに顔、頭、運動神経、性格ついでに社会的地位まで五拍子そろったパーフェクトガイ! には判んないんだろーなーこの気持ち。
コレは何!? 思春期特有のこの気持ち!
この胸を焦がす嫉妬の炎ぉ――!!
妬み僻みの火力MAXで炙った心は中まで肉汁たっぷりでとてもジューシィィィィ!
一口噛むとじゅわっと口の中で溢れ出す羨望。
舌の上でとろけそうな触感にデミグラスソースの香ばしい風味が……
じゃない! ただの食いもんだよそれ! つかどんなメシだよ! 嫉みハンバーグ!?

「そして、ソード級」
 盾、矢、槍、……そして剣。
武器関連ということは分かった。そして多分、強さもその名の通り。

「ソード級は一等でスピア級一個小隊に相当するほどです。
色、大きさ共に多種多様。ソード級騎士というのはそれだけですごい。」
 続いてローランドは≪アロー級≫と≪スピア級≫の間に線を引いた。
「アロー、シールドは”下級竜”。スピア以上は”上級竜”。
 そしてその全ての竜を凌駕するのが≪最上級≫」
 ローランドは≪ソード≫と剣のイラストをばばっと描き、その上にさらに文字を書いた。



「『護国』です」


2012/04/14 16:52 No.56

丸大豆★k0EzdIKbFa_cSt

 ○

「ゴコクとはなんぞや?」


 ローランドは異世界人、いやそれ以前に生態系から違いそうな相手に懇切丁寧に説明してくれるからかたじけない。
ただ残念なのは教師が優秀でも生徒の脳容量がクソなのでオーバーヒート寸前。

「護国とは、文字通り、国を守る竜のことです」
「国を守る竜?」
 ずいぶんとご大層な竜だ。これは剣や盾より格段にアップしてるな。

「地上最強生物といっても過言じゃない。一度に合計八体までしか確認されません。
人の姿を取り、目は他の竜と同じく金色(こんじき)。多くが頭部に角を持ちます。
竜と人、異なる生き物の言葉を解し、永い時を生きます。二百年に一度、天から飛来してくる竜達で気に入った国に入り、その国の民を守ると言われています。最高の戦力、あるときは戦で『剣』となり、あるときは外交の『盾』になる。それが護国の竜です。」

 そんなスゲー竜あり!? よくもまぁ、ファンタジーの世界の住民はこんな理不尽に耐え切れるものだ。

ルール違反、反則ってレベルじゃないよね。チートっていうんだよこれは。
ローランドは紅葉のように赤い赤毛とその下の輝く若葉のような目でじっくり見てくる。
ナンデスカ顔に何かついてますか。
あれ、なんだろう。何だろ、何だろ?
そんな目でじっと見られると…。見られると見られるとぉ!?

「え、ちょっと何? 何ですかーその哀れみの目はぁぁぁあ! 『こいつかわいそう』とかいう目か!コノヤロー!」
 これはちょっと自己中だった……。言った後後悔した。
右も左も斜め四十五度も分からないような小娘(竜?)にここまでレクチャーしてくれた人に対し言う言葉じゃないよね。
マジで人間の所業とは思えない……ガチで人間じゃないんだっけ。
「……思ってないですよ、可愛そうだなんて、ただ、あなたも大変だなと思っただけです。」
「ろ、ろーらんど……!」
 神だ。
これがイニシエより伝わる現人神かぁぁぁ!
人の皮をかぶった神!イエース! いや、ユピテーール!
もう十二神だろうが八百万だろうが、唯一神でもどーでもいい(お前ww)!
涙腺ダム決壊注意法発令、ビィービィー、周辺住民の皆様すぐに避難をーすいません、じいさんの位牌は持って行っていいですかい。Ok! さぁ、バアさん早くヘリへ!
 ローランド、と言って泣きそう

2012/04/28 17:35 No.57

丸大豆★k0EzdIKbFa_izB

になってると、ドゴッとか言ってまたしても急停止。
ってそりゃないでしょ!? にわかにバコンとコケタ。

「クッソォォォォー! せっかくいい感じだったのにぃぃぃぃ!!」
「何がですか……。あ、ついた」
「着いたって何に!?」
「いや、もう見たほうが分かりやすい」
 何が!? と突っ込む前に何やら前方に目立ってる集団発見。
「模擬戦です。 訓練兵同士の戦いですよ」
「模擬戦ですか。そうですか」
 場は今から模擬戦を始めるからだろうか、コレはコレで物凄い気配が充満していた。
戦うなんていうから円形闘技場でコロッセオるのかと思ったらなんてことはない。
サッカーコートみたいな場所だった。ただし、ゴールはなくキーパーもボールもなし。
何十人ものの人間が遠巻きに見ている。
だけど……あれ?

「あれって、子供……?」

中学生っぽい連中が沢山いた。
ちょっと前まで私もあんなだったのかー。うん、今はもう懐かしい思い出です。
最早校歌すら歌えねぇという。

「子供…、そうですねー、十三くらいですかね。訓練兵一回生でしょう。まだ飛び始めでしょうね。
普段は学舎にいるけど、今日は三回生の応援に着たんだと思います」
「応援団ねー、そーいえばそー見えないこともない」
 それっぽい連中たちはやんややんや騒ぎ出した。
テンションがヒーットアップしている理由、それは……
「お集まりのしょくぅぅぅぅぅん! この日を待ちわびたかーーー!?」
「「イエーーーーー!」」
「待ち焦がれたかーーーー!?」
「「イエーーーー!」」
「ちゃんと予習したかァーーーー!?」
「「イイエーーーー!」」
「香典持ってきたかぁーーーーー!?」
「遺影ーーーーーーー!イヤッホォォォォォォォ!!」
「ちょっと!? 駄目だ理解不能……」
 ヒートアップしすぎだよねコレ!? もう言ってることオカシイヨ!?
「それはですね。ワカゲノイタリィーってヤツですよ」
「え!? ちょ!? ローランド!?」
 マズイ、ローランドまでこの空気に呑まれてるよ!
何だよワカゲノイタリィーってどんなイタリアだよ!?イタリアの空気ってこんな筈ないじゃん!
若気の至り…血気はやって思慮分別を失うこと(出典『広辞苑』)

2012/05/17 18:23 No.58
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