OUT★mTcUdgPsAo_hGu
〜龍斗 視点〜
気が付けばここは水中。
どうやら俺は今まで気を失っていたようだ。
どれだけ運が良いのだろう…。
__________そう
俺は飛行機から零と共に日本へ真っ逆さまで落下した。
零の詳細はわからない。
知るわけもない。
…今、俺の記憶に残っているのはガラス越しに見えた優乃の姿までだ。
そこからの記憶が思い出せない。
…だから多分俺は気を失っている間に水へ落ちていったのだろう。
…別に水中でも苦しくはない。
体も元に戻ってはいないから、まだ俺は化け物の状態なんだろう。
俺は体勢を整え、太陽の光が射す水面へと顔を出す。
…周りは防波堤ばかりで、どうやらここは港のようだ。
釣り船が縄でくくりつけられているのも伺えるし。
……そして当然の如くゾンビ共も数匹蠢いていた。
幸いにも俺の姿には気が付いていないようだ。
…俺は釣り船の所まで泳ぎ、船にしがみついて船上に立った。
そしてゾンビ共は俺の姿に気付き、何度聞いても不気味なうめき声をあげながら
俺の元へと寄ってくる。
「…見つかったか」
と、独り言を言いながら
船上から防波堤に飛び移って、とりあえず走った。
ゾンビ共は、動きが鈍い。
鈍くないゾンビもいるのだが、その違いなどは俺も定かではない。
……とりあえずその答えを握っているのは
通称:O.T.M. と呼ばれる謎の組織だ。
零の話によると、この組織は人体実験を平気でするような人間が揃っているらしく
そのあまりの過激さと残虐さに日本政府は組織を恐れ続けてしまう。
そのまま月日は流れていく。
そして、その結果がご覧通りってワケだ。
"死者が甦って人を喰らう"
そんな映画や漫画の世界であるような出来事が
俺達の日常に現れてしまったんだ。
日本もどんどん人口が減っていくばかりであり
もう日本はもう救いようがない国へとなってしまった。
…しかし驚愕の事実がひとつ。
このOTMはまだ実験を続けている。
そして…挙げ句の果てには日本から世界へと感染が広まりやがて…
世 界 は 死 へ と 直 面 し て し ま う 。
それだけ阻止するべきだと思う。
少なくとも俺は…組織を全滅させるつもりだ。
俺には可能性があるのかもしれない、と自分自身で思ってしまう原因はただひとつで…
俺は人間でもあってゾンビでもある、という事なんだ。
といってもこんな曖昧な答え方じゃ分からないのも無理はない。
具体的に言えば、人間とゾンビの両方の性質を持っている。
だから俺は人間でもなく、ゾンビでもない。
ただ自分を "化け物" だと解釈している。
化け物になれば俺は圧倒的な力を手に入れる事ができるが
精神と感情のコントロールが不安定になってしまう。
……でも俺はあるひとつの約束の為に
俺は普通の人間に戻ってみせるつもりだ。
それが例えどんな危険をさらそうとしてでも。
あの時の約束は……俺の生きている価値と言っても過言ではないハズだ。
2011/09/18 21:43 No.1
OUT★mTcUdgPsAo_hGu
〜優乃 視点〜
窓の外には鮮やかな雲…そして海が鮮明に映し出されている。
私が乗っているこの飛行機の行き先は…アメリカの首都であるワシントン。
日本はもう…崩壊する寸前と化した。
だから、私達の生きる手段はもう限られている。
日本じゃない、違う国で生活すること。
確かに違和感はあるし、不安もある。
不安…具体的に言えば
英語もろくに喋る事ができない私は無事に生活できるのか?
耐えきれなくなって逃げ出してしまう事はないのか?
…そして。
本 当 に こ れ で 感 染 は な く な っ た の か ?
私の不安は考えれば考える程、深い所までえぐられてしまう。
すると、私の横の席の綾瀬が話しかける。
「どうしたの?うかない顔して…」
綾瀬の心配そうな表情を見かねた私は笑顔をとりつくって
「ううん。なんでもないよ!」
「あ…そう」
気付いているんだろうな…と私は思う。
それは私が綾瀬に"嘘"をついたこと。
なにもないだなんて…こんな状況であり得ない。
みんなだって…いろいろと不安な事はあると思う。
綾瀬の不安だって
耀君の不安だって
護君のだって…
先生の不安だって…
もちろん…龍斗だって。
でもこんな状況でも、いつかは変えないといけない。
リーダー的存在だった龍斗がいなくなってしまった今。
このメンバーをまとめる役の人がいなくなってしまった。
こんな事を考えているのなら自分がやってみせる
…なんて考えはしても、行動に出来ないのが私の悪い所だ。
克服したと思ったのに…龍斗がいないと何も出来ない
私は自分自身に嫌気がさす。
そんな時、一言喋ったのは
私達の前に座っていた耀。
彼は椅子と椅子の隙間から顔を覗かせ
「アメリカに行ったらどうするよ?」
彼の一言はみんなを動かした。
2011/09/20 17:04 No.2
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〜龍斗 視点〜
走りながら汗を流す俺の後ろには、変わり果てた姿をした猫。
皮膚は剥がれ落ち、背骨は飛び出している。
…いったいなんで猫までが感染しているのだろうか。
可能性として考えられるのは…猫にゾンビが噛み付いた事くらいか。
正直…考えただけでゾッとする。
でもまぁ俺の正体だって客観的に見ればゾッとするだろうな…。
そう考えるとなんだか笑えてくる。
その時…規則正しく並ばれた住宅街の1つの家から出てきた少女が
「アンタ!!こっち!!」
「お…おう!」
俺は言われるがままに方向転換して少女の家に飛び込んだ。
その瞬間、少女は思いきりよく玄関を閉め
二重ロック式の鍵を丁寧に掛けた。
「…アンタ…どこから来たの?」
「…港…かな?」
その瞬間、少女は驚いた口調で
「ええ!!アンタ…ここから港まで約10qくらいあるよ!!
よく生きてたよね…それに…息切れしてないし。キツくないの?」
「…まぁ別にキツくはないけど…正直、死ぬかと思った」
ホントのホントを言うと、死ぬかと思った事はこれまでも結構あった。
だからこのくらい平気だ。
あまり人間とかけ離れた能力を目の前で発揮し過ぎると
怪しまれるし…それに恐がらせてしまっては悪い。
こんな小さな子を……ん?
俺はよくわからない覚悟をして少女に質問した。
「お前…小学生?」
その瞬間、小声で 死ね と聞こえたかと思うと
この世のモノとは思えないスピードで拳が飛んできた。
それは俺の顔面にジャストミート。
半開きになった俺の視界に少女の睨む表情が見えたかと思うと
「私は中学3年生なんだよね!」
俺の体が地面に付く。
そして少女の足が俺の腹部に命中。
「うぁ!!!」
俺は思わず飛び上がってこう言った。
「悪かった!!許してくれ!!」
手の平を合わせる。
「…次言ったら殺すから」
……ちょっと待て。
これじゃ外に居た方が安全なんじゃ…。
「名前なんていうの?あと高校生?」
「高校生だ。あと名前は龍斗」
「ふ〜ん…高校生でもこんなヘタレな人いるんだね。
私の名前は…海原瀬奈。よろしく」
「ヘタレは余計。よろしくな」
瀬奈と名乗る彼女の容姿は
いかにも男気があって髪型は耳が見えるくらいのショート。
その瀬奈は唐突に俺に言った。
「ここで一緒に待とう」
?
「誰を?」
そして彼女は言った。
「お母さんが助けを呼んでくるって言って外に出た」
俺は少し胸の痛みを感じる。
思い切って聞いてみた。
「いつお母さんは出て行ったんだ?」
「丁度、一週間前」
俺はその言葉を聞いた瞬間、顔を背けた。
嫌だった。
確かに自分の両親じゃないけど…やっぱり思ってしまう。
同情に似ている……いや…似ていないか。
ただ俺は…彼女を早く立ち直らせたかった。
すると瀬奈が言う。
「なんでそんな顔するの?」
俺は何も言えなかった。
「ふん…どうせアンタの考えている事くらいお見通しだわ。
お母さんが死んだとか思ってるんでしょ?」
俺は何も言えない。
かける言葉すら見つからない。
「…そうよね。もう一週間もたってるんだよね。
……薄々気付いてたんだ。お母さんはもう…」
俺は黙って彼女の話を聞く。
…前もこんな人を見たな、と思い出しながら。
「…私…泣かないもん。家でずっと喧嘩ばっかりしてたし
お母さんの事なんか大嫌いだもん!!うるさいし…」
…母親の事の悪口を言っている彼女を止めるべきだと思うが
俺は黙って彼女の話を聞き続ける。
「だって…お母さん…いつもうるさいんだよ!?
偉そうな事言ってばかりだし…私の気持ちなんてわかってくれてない…」
俺はここまで聞いて、やっと口を開く。
「…でもわかってるよな?」
「え…?なにを…?」
瀬奈はもう…目に涙をたくさん溜めて震えた声で問う。
「なんでお母さんが助けを呼ぶって言って自分で危険な外に出て行った理由くらい、わかるよな?」
そして彼女は涙を流した。
声をあげながら。
「う…ん…しっ…てる…」
「…気づいてるか?」
「…ひっぐ……なに……を?」
「お前が泣いている数だけお前はお母さんの事、好きだったって事。
それにお母さんも命を懸けて助けを呼ぼうとしたんだ。
それ程お前の事が好きだったんだと思うぞ」
瀬奈は顔をくしゃくしゃにして
「うん……うんッ」
そう言ってまた泣き始めた。
もう…泣き疲れるまで泣いていいと思う。
全部はき出して、少しでも楽になってくれれば、と思う。
そして俺は思い出していた。
土砂降りの中で彼女出逢ったあの夜。
彼女も瀬奈と同じ事で泣いていた。
瀬奈の姿はあの時の彼女の姿ともの凄く重なって見えた。
そして突然俺の目から涙がこぼれた。
ただ切実に…
優 乃 に も う 一 度 逢 い た い と 思 っ た 。
2011/09/22 23:41 No.3
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「…そろそろか」
俺は小さな窓のカーテンの隙間から、外の様子を見ていた。
さっきまで、この家の周りに集結していたゾンビ共は
時間が立つと同時に数が減りつつある。
「瀬奈…そろそろ出発だぞ」
瀬奈はやっと泣きやんだ状態で今までずっと黙ってたが
このタイミングを逃せば、またいつ外に出れるか分からない。
そう考えて沈黙を破った。
すると瀬奈は言う。
「…家の中の方が安全じゃないの?」
「いや…家の中だと食糧が尽きてしまう可能性もあるし。
それにもしかしたらまだ救出活動を行ってる所もあるかもしれない」
「そうなんだ…でも……」
そう言って瀬奈は顔を俯ける。
俺は近寄って問う。
「どうしたんだ?」
すると次の瞬間
「急になに仕切はじめてんのよーッ!!」
「うおッ!?」
俺はあまりにも突然の大声にひっくり返る。
「いってぇ…。なんですかいきなり…」
「ったく…アンタは年上なんだから年下の私の言う事聞きなさいよね!」
「…いやそれ多分…逆だと…」
俺がボソっと呟く。
「なんか言った?」
瀬奈はそう言って右手に持つ包丁をちらつかせる。
「…いいえなんでもありません」
まるで奴隷だ…。
とか一人で思いながら正座する。
でもまぁ…お母さんの事は少しばかり吹っ切れたのかもしれない。
辛かっただろう。俺でも耐えきれるか分からない。
だから、そんな凄い事をやった瀬奈には正直、頭が下がるのも事実。
優乃と同じように瀬奈も強い。
そんな風に自分勝手に思ってた。
「んで?どうすればいいの?」
聞くんかいッ!
「今、昼だろ?明るい内に生存者とか食糧とか集めた方がいいと思う。
んで暗くなってきたら定期的にどっかの家に入って過ごすってのは?」
瀬奈は頷く。
そして問う。
「分かった。武器は?」
武器…か。
「なんか使えそうな物あるか?バットとか…」
「拳銃があるよ」
「はぁ!?なんで!!」
まさか、とは思ったが…なぜこの家庭に銃という凶器があるのだろうか。
「だって私の父さん…なんか知らないけど、狙われやすいから
護身用に外国からたくさんの銃…買ってた」
…狙われやすい?
一体どういう事だ。
…少しだけ抵抗があったが俺は思いきって問う。
「…お前の父さん…何してたんだ?」
そう聞いた瞬間、瀬奈の表情が変わる。
だけど、すぐに元通りになって
とりつくったような……いや、開き直ったような笑顔で言った。
「O.T.M.っていう組織の研究員なんだ」
しばらく俺はその場で立ちつくしていた。
2011/09/25 20:39 No.4
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「見て…コレ…」
そう言って瀬奈は袖をまくって、腕を見せた。
あちこちに青アザが出来ていた。
こんだけ酷くなるって事は、相当な力でやられてたんだろう。
「いつから…だっけな…」
瀬奈は続ける。
バレバレな作り笑顔を浮かばせながら…。
「私が中2の頃かな…。その頃から頻繁に私とお母さんは
お父さんから暴力を受けててね…。
お父さんは丁度、その頃から組織に加わっててね…」
止まった。
…いや、まだだった。
弱々しく…続いた。
「…お父さんのやってる事…いけない事なんだよね?
あり得ないよね…。ふざけてるよね…。ムカツクよね…」
止まった…そして続く。
「でもね…」
「…大嫌いだけど…それでも…私の親なの……だから…」
「もういい」
俺は瀬奈の言葉を遮った。
瀬奈は驚いたような表情をする。
「もう時間だ。行くぞ」
俺が強気で言った後、瀬奈は顔を俯けながら付いてくる。
「…とりあえず…お前の父さんの所行くぞ。んで、お前が説教してやれよ」
「えっ?」
「…言いたい事たくさん言えばいいよ」
「…うんっ!!」
「おし。それまでは俺が守ってやる!」
___________________そう言って俺達は玄関の戸を開けた。
2011/09/30 23:19 No.5
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外に出れば景色は異常なし。
異常があるのは…周りをうろついているゾンビ達。
瀬奈が口を開く。
「…やっぱり…中の方が安全なんじゃ…」
「…確かに数は多いけど…のろすぎる。
俺達が止まらなければ、捕まる事は絶対にない」
「…絶対ね。言ったわね?」
「あっ…いや…その…絶対とゆーわけじゃ…」
「はっきりしなさいよ!!!!!!」
瀬奈のでかい声にゾンビ達が反応する。
「…なにやってんだよ…」
俺はため息混じりに言う。
「な…アンタがはっきりしないからでしょ!」
「いいから…走るぞ」
俺は瀬奈の手を引き、走る。
「ちょっ…どこ行くのよ!」
「とりあえず…生存者捜しだ」
「お父さんの所は!?」
「俺達二人じゃ無理だって!」
俺達は、ひたすら西に向かって走る。
西に向かうにはある理由がある。
…聞こえる。
…銃声の響きが。
そして、その音はゾンビ達の耳にも入る。
だから俺達とゾンビ達の向かう場所は同じなのだ。
「なんで銃声!?」
「誰かが居るって事だよ。助けるぞ!」
「んぢゃ…龍斗コレ」
「うおッ!」
俺は驚いて止まってしまった。
そして俺は続ける。
「持ってきたのかよ!」
瀬奈が差し出したのは、コイツの父親の護身用の拳銃。
この銃の正確な名称は分からないが
これは日本の警官がよく使うような小型のヤツだ。
…いわゆるハンドガンとか言うヤツか…?
「ぅあぁぁ…」
そうこうしてる間に背後からゾンビ達が迫ってきた。
「走るぞ!」
__________________________俺は再び瀬奈の手を引いて走る。
〜 地下本部 O.T.M. 会議室 〜
真っ白なこの部屋には数人の人間と数個のコンピューターのみ。
彼らは円の形を描くようにそれぞれ座っている。
そして一人の男性が席を立ち、言う。
「…唐突に問う。"彼"は誰に殺されたんだ」
「はい。"彼"は…一人の青年によって殺されました」
「青年…?フッ。冗談もそこら辺にしてくれないか?」
「冗談ではありません社長。"彼"と共に行動した実験体801号までもが殺されています」
「実験体801号…?…あぁ。"彼"が『ゾンビ君』とか言って可愛がっていたあの気色悪い奴か。
しかしまぁ……その青年とやら…何者だ?」
「はい。青年はとある公立高校の2年生。青年は実験体801号に攻撃された後
なんらかの原因で…暴走して…二人を殺害したの事…です」
「そうか…。今後、我々にとっての脅威になりそうだな、その青年は。
その青年の居場所は特定できるか?」
「現在は不明ですがアメリカ行きの便には、青年の友人しか乗っていない模様で
青年は日本には必ず居る、とだけは断言する事ができます」
「…決まりだな」
「はい」
そして、男性は声を張り上げる。
「いいか諸君!!今の話を聞いていたか!?
青年は…我々の大きな野望の妨げとなる人物になりつつある!
なんとしてでも見つけ出して殺すのだ!!
…おい。青年の名前は?」
男性の耳元で一人がささやく。
「いいか!!!よく聞け!!
青年の名前は 星神龍斗だ!
青年を一刻も早く見つけ出して殺せえええ!!!!!!!」
そして人間達は席を立ち…それぞれの任務の為に行動する。
2011/10/02 18:03 No.6
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「…ここか!?」
「そう…みたいね…」
俺達の目の前には巨大な遊園地。
…銃声はこの中で聞こえる。
「…行くしかないよな…手がかりも必要だし」
すると瀬奈が問う。
「手がかり…?なんのこと…?」
「もしかしたら…救出活動をやってる場所を知ってる人かもしれないだろ?」
「そうね…っていうか……来てる!!」
「うおッ!?走れ!」
俺達は、園内へと駆け出す。
銃声のする方へ走る俺達は、ようやく入り口を見つける。
…周りには金属の柱が粉々になって散乱している。
どうやら…園内の進入を防いでいた
バリケードのような物がゾンビ達によって破壊されてたのだろう。
すると
「うあぁああぁ!!」
立ち止まった俺達の背後に居たゾンビが瀬奈に飛び付く。
「きゃあぁぁ!!!」
瀬奈が倒れて、その上に覆い被さるような体勢でゾンビが乗っかかっている。
…そして今にも瀬奈の首に噛み付こうとしている。
「瀬奈!!」
今度は俺がゾンビに飛び付く。
「瀬奈!!銃を貸せ!」
そう言って倒れている瀬奈の方を向く。
その瞬間、俺は肩に激痛を感じる。
再び、俺はゾンビの方を見る。
ゾンビは俺の肩に噛み付いていた。
「龍斗…いや…いやぁ…」
痛い…痛いが…。
このままじゃ二人ともゾンビの餌食だ。
震える声を出す瀬奈に、俺は優しく微笑んで言った。
「…大丈夫だ。早く…銃を」
「…うん!」
そう返した瀬奈は銃を俺の差し伸べた手に投げる。
…その銃をキャッチした後、俺は美味そうに肩に噛み付いているゾンビの脳天に向けて発砲する。
もの凄い爆音と共にゾンビの頭は粉々になった。
そして瀬奈が寄ってくる。
「…龍斗ぉ…いや…アンタまで…」
そこまで言って瀬奈は泣きながら
「ごめんね…ごめんね…」
と、両手で顔を隠す。
……多分…俺は…大丈夫だとは思うが…。
もう…俺が "化け物" って事は隠せないのかもしれない。
瀬奈から見た俺は…ただの人間、ただの高校生。
それなのに、噛まれてゾンビにならないなんて
どう考えても…俺の事を恐れるだろう。
…そうなったら、俺はもうコイツと別れるしかない。
俺を怖がる事だけじゃない。
たとえ、それを受け入れてくれたとしても…。
このまま俺がどう変化していくか…わからない。
ましてや…この噛まれた事が原因で
今度はゾンビ化してしまう可能性だってある。
ど の み ち 俺 と 一 緒 に い る と 危 険 な ん だ 。
…!?
…銃声の音がどんどん近づいてくる。
俺は顔を上げようとする。
すると、後頭部に何か堅い物が当たる。
そして、男性独特の低い声が聞こえた。
「…噛まれたな……わかっているだろう?」
…最悪だな…。
すると、瀬奈が立ち上がる。
「龍斗は…私の命の恩人なの!
…殺すなんて…酷すぎるわ!!」
すると、また一人の男性が叫ぶ。
「この期に及んで、まだそんな事言ってんのかよ!!
いい加減、現実を見ろよ!!このガキが!」
…口調からしてお前の方がガキだろうが…。
そして俺に銃を突きつけている男が再び言う。
「どのみち…コイツはゾンビになってしまうんだ。
わかってくれるだろう…?殺さないと君も危険なんだ…」
この男の言っている事は…確かに正しい。
しかし瀬奈は言う。
「そ…そんなの嫌だッ!!
お母さんも死んじゃったのに…龍斗まで死んじゃったら…
私…独りぼっちになっちゃうじゃない!!」
…独りぼっち。
すると、男は
「…そうか」
そう言った後、銃を俺から離し、瀬奈に向けた。
「…え…?」
「うるさい小娘だ。どうしてもって言うんなら
お前を殺してから、この青年を殺す…いいか?」
すると、瀬奈はとんでもない事を言おうとした。
「…わかっ」
そこまで瀬奈が言った後
「瀬奈ぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
叫んで、瀬奈の言葉を遮った。
「…それ以上なにも言うな」
「…うん」
すると、銃を持つ男は言う。
「…悪あがきする気か青年。
お前はどのみち死ぬんだよ。小娘もな」
…馬鹿野郎が。
瀬奈を独りぼっちなんかにさせっかよ…。
どうにか…平和な場所へと連れて行きたい。
…瀬奈の親父さんと一緒に。
なら…俺はお前に本当の姿を見せてやる。
一緒に生き残る証として。
「おい…おっさん」
「なんだ?この…ゾンビもどきめが…」
「瀬奈も殺すってんなら…まずはこの俺を殺してみろよ……
俺 は お 前 な ん か に 負 け る 気 な ん か さ ら さ ら ね え ぞ 」
___________________________そして俺は体中が熱くなっていく
2011/10/04 19:19 No.7
OUT★mTcUdgPsAo_BZy
…大丈夫…大丈夫だ。
意識ははっきりと残っている。
体のあらゆるヶ所が蒸発するように煙がでる。
「…龍…斗…?」
いかにも消えそうな声で言う瀬奈。
俺は一度、瀬奈の顔を見る。
「…悪い。これが"俺"なんだ」
瀬奈は何か言いたそうな顔をしていたが、俺は男の方を向く。
そして男も驚きの表情を隠せないでいた。
「貴様…何者だ…」
「何者…?"化け物"だよ。わかるか?」
男は俺の言葉を聞いて笑う。
「…そんな馬鹿な事があってなるものか。
そこまで化け物だって事を証明したいなら…散弾銃を体中に降り注がせてやろうか?」
「何言ってんだよ?この姿を見ても理解できねえのか?」
「…理解?笑わせるな。理解する必要なんてない」
「…俺が人間じゃないからってか?」
「わかってるじゃないか」
「まぁいいよ。アンタが散弾銃を撃てば…一件落着だろ?」
「…そうだな。なら…死ね」
その低い声が聞こえた瞬間、散弾銃が吠える。
俺の体中に無数もの弾が降り注ぐ。
そして瀬奈の叫びが混じる。
「りゅ……龍斗ぉぉぉお!!!!!!!!」
2011/10/07 23:03 No.8
OUT★mTcUdgPsAo_BZy
〜瀬奈 視点〜
アタシは叫んだ後、瞬間的に目をつむる。
正直……龍斗が人間じゃなかった事なんてことよりも
"生死" ただ、それだけが心配だった。
「…馬鹿な…」
真っ暗な視界の中で
散弾銃を持っている男性が、まるで弱音を吐いてしまったような
そんな弱々しい声をアタシの耳が受け取る。
そして男性は続ける。
「…なぜよけない…正気か貴様…」
アタシは嫌な予感を感じる。
そしてそれに追い打ちをかけるように
龍斗は返す。
「……ざま……ぁ……み…ろ」
アタシは、その言葉を聞いた瞬間目を開ける。
目 の 前 に は 血 ま み れ で 踏 ん 張 っ て い る 龍 斗 の 姿 。
「…龍…斗?」
アタシ自身なんど弱々しい声をあげたか、わからない。
様々な事がいっぺんに起きて、気が狂いそうだ。
それでもアタシは、もう一度情けなく叫ぶ。
「龍…斗…いやぁあぁぁぁぁ!!!!!」
アタシは両手で自分の頬を包む。
ショックで涙が流れ出る。
アタシの頭の中では
"龍斗は本当に死んでしまうのではないか"
という想像が蠢いていた。
しかし、それでも龍斗は笑ってアタシの方を向く。
そして言った。
「…こんなの…お前の蹴りの方がよっぽど痛いよ」
「…なんで…」
その瞬間、龍斗は咳と一緒に吐血する。
そして
「……大丈夫だ…一緒に父さん所に行くぞ」
そう言って龍斗は、それまで踏ん張っていた体が一気に崩れ
片膝を付いた状態となる。
どうして……どうして?
死ぬかもしれない状況なのに
自分の事は二の次でアタシの事の為に傷ついているの…?
アタシは彼に何かした?
何も恩返しされるような事はしていない…。
逢ってまだ一日も経っていないのに。
流れ出る涙の量が増える。
すると、男性は言う。
「…憎たらしい程…お前は人間ができているな」
龍斗は血を吐くと
「……人間なんかじゃねえよ」
「…悪かったな。もう…君達には手を出さない」
え…?
何を言っているの?
あれだけな事をして…どうしてそんな簡単に謝る?
どうして龍斗に手を差し伸べているの?
… ふ ざ け な い で 。
すると、龍斗は微笑すると手を動かす。
一瞬、アタシは龍斗自身が男性の事を許したのかと思った。
だけど違っていた。
龍斗は手を差し出した後、男性の手を弾く。
そしてその後
「一度殺すと言ったヤツに手ェなんか差し伸べるかよ」
きっぱり、と言った。
今、思えば龍斗の体の流血は徐々に減っているような気がする…いや、そうだ。
と、その瞬間
遠くの空からヘリコプターが飛んできているのが伺える。
やがて、そのヘリはアタシ達の上空に来る。
すると、そのヘリから何人かの…隊員?
銃を持った自衛隊らしき人達がロープを滑り降りる。
やがて、彼らはこちらに向かってくる。
すると先頭の隊員が被っていたマスクを取る。
そして、こう言った。
「久しぶりだね…龍斗君」
その人はロングヘアーで凛々しい女性だった。
そして龍斗は言う。
「…千葉さん」
2011/10/11 20:31 No.9
OUT★mTcUdgPsAo_BZy
〜龍斗視点〜
瀕死の状態の俺の前に現れたのは…あの時の女性だった。
"俺達と共に闘ってくれた千葉さんだった"
千葉さんの声に俺は、他の知らない人のかすれた声で返答する。
「千葉さん…」
すると、手を差し伸べた男性の後方に居た数人の大人達は一斉に敬礼をし
「お疲れ様です!!」
と、まるで狙っていたかのような声を張り上げる。
しかし、男性はボソッとこんな事を呟いた。
「…チッ。隊長のおでましかよ…」
そして不満そうな表情を浮かばせる。
それを見かねた千葉さんは
「なんだ福田?なにか不満か?」
どうやら男性の名は 福田 という名のようだ。
そして福田は
「…いえ」
すると、千葉さんは続ける。
「ところで福田。どうして民間人が傷ついているんだ?」
千葉さんの言う民間人とやらは、どうやら俺の事のようだ。
福田は少々、焦りながらこう答える。
「…民間人…?コイツは化け物だ!下手すりゃ…俺達は殺されてたんだ!!」
…おいおい。
"憎たらしい程、人間ができているな"
さっきのこの言葉は一体、何なんだよ…。
そしてまた、千葉さんは続ける。
「お前ら。この隊における、絶対に守らないといけない掟とはなんだ?」
すると、福田以外の人間は一斉にやすめの体勢をとる。そして千葉さんが
「第一!!」
そして一斉に
『我々の命より民間人の命を優先する!!』
「第二!!」
『我々の目的は民間人、及び国を死守すること!!』
「第三!!」
『民間人に危害を加える事は絶対に許されない!!』
そう、言い終えると千葉さんは
福田以外の人間に一発ずつ殴る。
そして怒濤の表情で
「なぜ止めなかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
そう叫んだ。
2011/10/17 10:03 No.10
OUT★mTcUdgPsAo_BZy
すると、福田は銃を千葉さんに向ける。
そして
「銃を置いて両手をあげてくださいよ隊長……お前らもだ」
福田は一歩一歩後ずさり、やがて俺達と福田の距離は広がっていき
福田は俺達全員を射撃出来る距離に到達した。
「なんのつもりだ…福田」
千葉さんは手に持った銃を投げ捨て、両手を挙げながら言う。
そして、それは俺達と同じ状況だ。
すると福田は千葉さんの言葉に返答する。
「隊長……ソイツらは俺が命令したんですよ」
「……どうゆう事だ?」
「…俺の任務の邪魔をしたら殺す…と」
と、あまりにも自己中心的かつ最悪な言葉に俺は思わず釣られて、言う。
「…上等じゃねえか。俺はいつでも邪魔してやってもいいんだぜ?」
すると、福田は瀬菜に銃を向ける。
そして
「…お前には話していない。次、お前が喋ったら女の命はないと思え。このクソガキ」
俺は、つい興奮してしまった自分と福田の行為と言動に対して、舌打ちをして黙った。
すると千葉さんと目が合う。
千葉さんは軽く頷くと、福田に対してこう言った。
「…いくら班長のお前の指示でも、民間人の命を守る為に
自分の命を張らなかった隊員達がいなかった。
この出来事は、隊のミスとして事を納める事ができるかもしれない。
…でも理解出来ない事がある……お前の目的は一体なんだ?」
その時、遊園地内のバリケードの役割をしていた
高さ2メートル程の有刺鉄線が大量のゾンビの圧力によって破壊される。
大 量 の ゾ ン ビ が こ ち ら に 流 れ 込 ん で く る
俺達が大きな声で話していたから、きっと俺達の場所はゾンビ達にはわかるだろう。
身動きがとれない状態でゾンビの大群が押し寄せてくる。
すると、福田は会話の続きを話し始めた。
「…隊長。俺、実は所属している所ってこの隊だけじゃないんですよ。
もう一つ所属している所では、このガキを抹殺する事が任務なんですよ」
そして、福田は俺に指を指す。
「この半分化け物のガキが邪魔なんですよ、組織にとって。
それと、もうひとつ。
政府の番犬みたいな隊も邪魔なんですよね。
んで、スパイになったというワケですよ。
つまり、俺の目的はですね。
千葉隊長とそこのガキ。
二人を殺す事ですよ」
俺は激しい怒りを感じた。
自分を殺そうと考えている事に対しても多少あるが
一番はもっと…なにか違う事に対して怒りを覚えている。
そして、福田の組織という言葉を聞いて
真っ先に俺は、OTMの事だと確信した。
…それは瀬菜もきっと同じだ。
すると、瀬菜が言う。
「…アンタ人間でしょ!!!
どうして…こんな世界がこんな状況なのに、アタシ達は争わなきゃならないのよ!!
普通、力を合わせてどうにかしようッて思うよね!?
…アンタの入ってる…組織ってホントに… "馬鹿" しかいないじゃない……」
「止めろ!瀬菜!」
「言わせてよ!!」
俺の忠告を聞かない。
すると、福田は微笑して言う。
「…そういうお前の親父も組織で働いているよな?
親父も…馬鹿だっていうのか?」
「うん。馬鹿親父だよ!!
だから、アタシはお父さんに説教しに行くの。
お父さんは、アンタみたいな低脳じゃないから
きっとわかってくれる」
「…そうか。だが、残念ながら
もう親父さんには逢えそうにもないな」
そういって、完全に福田の目線と銃口は瀬菜の方向を向いている。
背景には、ゾンビの大群。
もうすぐそこに来ている。
俺は…
「やめ…」
"やめろ"
そう言おうとした。
その瞬間、千葉さんが飛び出す。
それに気づいた福田は
千葉さんの方向に振り向き発砲した。
遊 園 地 内 に は 銃 声 と ゾ ン ビ の う め き 声 が 響 き 渡 っ た 。
2011/10/18 22:06 No.11
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放たれた銃弾は千葉さんの頬をかすめ、はるか向こうへと突き進む。
瀬奈は、その隙に俺の背後に周る。
千葉さんは福田を取り押さえた後、一瞬で手を何かで縛る。
これで福田は身動きが取れないようだ。
しかし安心したのも、つかの間。
すぐに銃声が響き渡る。
俺は銃声のする方向へと振り返ってみる。
しかし、その前にゾンビの大群が押し寄せてくる。
俺は、瀬奈の手を引き
「みなさん!はやく!!」
千葉さんは抵抗する福田の後頭部辺りを叩いた後
「わかった!とりあえず、反対の出口からここから出よう!」
「わかりました!」
千葉さんは福田を担いで、走る。
福田を担いで…。
福田を…。
「瀬奈!走れ!」
「龍斗は!?」
「俺は一番後ろに行く!お前達は先に行け!」
「でも……龍」
俺は瀬奈の言葉を最後まで聞かずに止まった。
千葉さんがすれ違い様に話しかける。
「龍斗君!なにやってるんだ!」
「これだけの数は園内を抜け出せたとしても、絶対に撒けません!
俺が囮になって、少しだけでも数を減らします!」
「馬鹿な…!!死んでしまうぞ!」
「死にません。絶対に戻ります」
「…龍斗君」
「行ってください!早く!」
俺は体を反転して千葉さんの方を見る。
「瀬奈をよろしくお願いします」
そして俺は返事も聞かず、ゾンビの大群へ突っ込んだ。
2011/10/29 18:25 No.12
OUT★9emSGec3A5_Zsc
「龍斗!龍斗!」
後方で瀬奈の呼ぶ声が聞こえる。
俺の目と鼻の先には300は超えるゾンビの群れが押し寄せてくる。
「…やってみるか」
俺は不器用なりに左腕に力を集中させる。
すると、俺の左腕は少しずつ盛りあがり
爪は、まるでアイスピックのように鋭く伸び上がり
二の腕は腫れ上がり、真っ赤な血管が透けて見える。
そんな腕になった。
これは学校の図書室で男を殺した時の腕と一緒だ。
しかし、その時とは明らかに違う事実に気がつく。
あの時の俺は "怒" という感情がむき出しになっていた。
だけど "今" は違う。
驚く程、そして恐ろしい程
俺の感情は落ち着いていた。
具体的にいえば、俺は我を忘れていない。
これはもう……
完全に力を【コントロール】したことになるのだろうか?
ホッとした反面、着々と化け物になっている事に気づきながら
それを苦笑で全部まとめてごまかす。
「ぅあぁぁぁああぁ」
うめき声と共に異臭のする前方の景色。
少しばらつきのある、その群れ。
俺はその群れの最前列のゾンビに左腕を振りかざす。
振り下ろせば、辺りは血で一色。
それと共に血を噴き出しながら倒れていくゾンビ。
これは…と。
俺は左腕に付いたゾンビの血液を見ながら思う。
余裕、と。
俺は腕から前方に視線を移すと
次なる敵を狙う。
とにかくゾンビを斬りつける。
その度に、ドロドロとした血の返り血を浴びる。
それでもひるまなかった。
…そしていつの間にか俺は
園内のゾンビを一掃していた。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
それすら分からなかった。
もう一度、左腕に力を入れる。
すると、みるみる内に腕は元通りになり
落ち着きを取り戻した。
でもこの力に対しての抵抗は多少ある。
とにかく、俺はこの体を直す事も目的だと感じる。
俺は軽く拳を握って
左腕の感触を確かめた後
瀬奈達の後を追った。
2011/11/03 21:04 No.13
OUT★9emSGec3A5_Zsc
"同時刻 アメリカ上空"
〜優乃 視点〜
『緊急事態の為、当機は着陸することができません。
ご迷惑をおかけしますが、今、しばらくお待ち下さい』
「おいおい!!いつまで待たせる気だ!」
「いい加減にしてよ!!」
機内では罵声が飛び交う。
…しかし、それもそうだ。
ここ2時間、機内には
このアナウンスが流れ続けている。
正直な所、私達もうんざりしていた所だ。
私はふいに綾瀬ちゃんに問う。
「ねぇ綾瀬ちゃん。なにかあったのかなぁ…?」
すると、綾瀬ちゃんは少し不機嫌そうな顔をして言った。
「ちゃん付けはよして!」
「えっ?あ…うん。ごめん綾瀬ちゃん……あっ」
「はぁ…もう…。わざとよねソレ」
「いやっ違うんだよっ!なんか…綾瀬ちゃんって私のお姉ちゃんみたいな
人だから…なんとなく……ねっ!」
すると綾瀬ちゃんは、ため息をつくと
「もういい…で?なんて言ったっけ?さっき」
「もう…。もっかい言うね。
2時間近くずっと同じ場所を飛び続けるなんて
いくらなんでもおかしくない?」
すると前の座席から耀君が語りかける。
「なんかまぁ…異常な事が起こったんじゃねーのか?
…例えば空港がゾンビで溢れ返ってたりして」
と、その横の席から先生の声がする。
「それはないと思うわよ。
他の便に乗ってる人達だって、私達と同じ検査に合格した人達でしょ?」
すると、その先生の前の座席から
顔をひょっと出した護が言う。
「でも実はアメリカにも感染者がいた、とするなら?」
「可能性は0じゃねぇな。
だけど、アメリカに一刻も速く行って
日本の状況を確認したい俺達にとっては
この状況は……間違いなく悪い状況だよな」
耀君がそう言った直後にアナウンスが流れる。
いつもより長い沈黙が続いた後
スピーカーの先の女性が声を震わせながら言った。
『皆さん……落ち着いて聞いてください。
本日、着陸予定だった空港が何らかの原因で音信が不通でした。
…そして先ほど空港側から連絡が入りました……。
着陸予定の空港及び、30km範囲以内…全て
・ ・
全 て 壊 滅 』
2011/11/05 18:15 No.14
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その女性の声が響きわたった次の瞬間。
乗客は全員、絶句状態となる。
もちろん私達もだった。
…この重い空気の中で、再び女性はスピーカの先で言葉を発する。
『…このまま空港に着陸することは大変危険ですので
太平洋のとある島に着陸することが決定しました』
すると、一人の柄の悪い男性がスピーカーに向けて怒鳴った。
「おい!!そんなワケもわかんねぇ島に行ってどーすんだよ!!」
女性からの返答はない。
すると男性は思いきり壁を叩くと
「アメリカが無理なら他の国でもいいじゃねえか!!!」
と叫ぶ。
すると、耀君が声をあげる。
「…そんなの無理に決まってんだろ」
…耀君?
当然のように男性は
「あぁ!?誰ださっきの!」
すると耀君はベルトをはずして立ち上がる。
「俺ですよ」
「どうしててめえみたいなガキが
んな事わかるんだよ!?」
「アメリカがこの有様だ。
感染者が出始めたのは日本だってのに
海を越えて感染するって事は日本の便がアメリカに行って
そこから感染した可能性が高い。
もちろん理由は他にもあるかもしれないが…」
男性は少し驚いた様子でまた怒鳴る。
「だからなんだってんだよ!!」
それでも耀君は落ち着いた口調で
…そんでもって敬語は使っていないけど
私達も普通に頷ける理論を伝え続ける。
「わからないのか?
日本で発生したパンデミックがアメリカでも起こったんだ。
日本で発生したのにアメリカでも起こるなんておかしいだろ?
もうこの時点で世界は日本は危険視する。
なぜか?
日本からの便がアメリカの空港に着陸した事で
パンデミックが起こった可能性があるからだ」
「…な…んだよソレ…」
「コレでわかっただろ?
自国を危険にさらす様な国の便を
みすみす着陸させようとするか?
だから人の住んでいない島に着陸しようと考えたんだろ」
男性はそれを聞くと寂しそうに帰っていった。
耀君もその男性の後ろ姿を見つめながら
ようやく席に座る。
私は声をかけようとしたが
途中でやめた。
私もやっと気づいた。
私も耀君も護君も綾瀬ちゃんも先生も乗客の皆さんも
一言も喋らず、ただただ弱々しい表情している。
よく見れば涙を流して悲しんでいる人もいた。
…私達はもう助からないのかな。
世界からも見捨てられるかもしれない。
みんな…みんな苦しいのに。
どうすればいいのかな…?
ねぇ。
______________________龍斗。
2011/11/08 22:35 No.15
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〜龍斗視点〜
同じテンポで走りながら、どのくらい時間は経ったのだろうか。
遊園地を出て…もう10分は経っているように思う。
園内を出ても相変わらずゾンビは散らばっていて
いたる所から飛び出してくる。
でも今は戦う事よりも追いかける事の方が先決だ。
と…走るものの、一向に瀬奈達の姿が見えない。
今更だが、園内を抜けると
そこから先は一気にいくつものビルが立ちはだかる都会となっていた。
人間達が抵抗した形跡が
ビルからの煙、窓ガラスの破片、さらに銃などでわかる。
俺はとりあえず、落ちていた銃を拾って上着の内ポケットに入れる。
これもまた世間的にはハンドガンとか呼ばれている銃だ。
…それにしても酷い有様だ。
ここが自分の生まれた国だと思うと
なんだか無償に悲しくなって苦しくなる。
もうかつての日本の面影は残っていないのかもしれない。
そんな事を思いながら走り続ける。
すると、上空から大きな翼の音が聞こえる。
ヘリコプターだ。
…千葉さん達の仲間か?
俺は勝手にそう思って少し期待した。
そのヘリコプターは俺を見つけたらしく
徐々に近づいてくる。
でもそのヘリコプターにはこう書かれていた。
"OTM"
まるで、OTMという秘密組織の名を全国に知らしめようとしているように
目立ちやすく書かれていた。
そのOTMのヘリコプターから俺に向けて何者かが喋る。
その男性はスピーカーを使ってこう告げた。
『星神龍斗。星神龍斗。おとなしく我々の指示に従え』
なに言ってんだコイツ。
「その指示にもよるぜ!?」
『我々と来い!』
そんな唐突に言われても行く気にはならん。
それに…
「俺からそっちに出向いてやるから首洗って待っとけ!!」
すると、数十秒で返ってきた。
『命令に従わなければ今すぐ抹殺する』
そう言って
ヘリコプターの機関銃で発砲してきた。
2011/11/14 21:11 No.16
OUT★9emSGec3A5_vDu
「…くるとは思ってたけど!!」
そんな独り言を呟きながら走り出す。
『もう一度問う。命令に従うか?』
そう言うと、相手は発砲を止めたので
俺も同じく走るのをやめた。
その時にチラッと横を見る。
視線の先には崩壊しかけのビルの入り口だった。
ここなら機関銃の攻撃は軽減する事ができるかもしれない。
俺は少しずつビルの方へ寄る。
…少しずつ…相手にバレないように…。
『…ビルに入ろうとしている様子を見れば一目瞭然だな』
あ、バレてたのね…。
『今ここで貴様を殺害する!!』
そうして再び発砲してきた。
赤い球体が俺に向かって飛んでくる。
俺は大雑把に入り口のドアを突き破ってビルに侵入。
ビルの中は焼けた人間の死臭や
今にも崩れ落ちそうな天井。
おまけに薄暗い。
俺にとってこの場所は好都合でもあり不都合でもあった。
「とりあえず…奥だな」
頭の中ではビルの中心部まで行って
そこで様子を見るという設計が立っていた。
…とはいえ安全は保証できない。
なぜ?
俺の設計だから。
「おし。んぢゃ行きますか!」
一体、なぜ一人でいるのに言葉を発しなければならないのだろうか。
そんな突っ込みをしてくれる人がいない現状に今更気づいて
次の瞬間、わけのわからない悲しみが俺を包んだ。
中心部…と言っても奥に進んだだけなのだが
ここまで進むとさすがにヘリからは俺の様子が見えないらしく
さっきまで大袈裟にでかかった銃声もピタリ、と止んだ。
__________________ここまでは好都合だ。
俺は薄々気づいていた。
奥に進めば進む程、おびただしい数の死体。
そう。死体が奥に進めば進む程、増えているのだ。
「こんなに……酷すぎる」
本当に酷かった。
酷い。酷い。酷すぎる。
こんな有様をまともに見れるようになったのは
一体、いつ頃だろうか?
しかもこれはゾンビの仕業ではない。
死体には銃痕や刺し痕。
中にはナイフが頭部に突き刺さった状態の死体もある。
…すぐに理解できた。
この場所で人間同士で殺し合いが行われたのだ。
なにかこの場所であったのか…。
それとも自分達の意志で殺し合ったのか…。
それはわからない。
わからないけど……。
「くそッ!!」
無償に悲しかった。
次の瞬間、OTMの人間達の表情が浮かび上がる。
その人間達の輪郭とか性別は分からない。
全て黒いシルエットで包まれている。
黒いその人間の表情は全て笑っている。そして俺を見ていた。
いや……国民を見ていた。
殺し、殺されていくのをあざ笑うかのように。
そんな妄想が俺の頭の中に渦巻く。
悔しくてたまらなかった。
激しい怒りで何もかも壊したくなった。
様々な感情が限界にきていた。
喜怒哀楽。
喜怒哀楽。
誰がヤツら止める?
誰かが止めてくれる?
誰にも止める事はできない?
あ き ら め る ?
嫌だ。
絶対に嫌だ。
頭が痛い。
それでも俺は狂ったように自問自答を繰り返す。
誰が止める?
____________止める事のできる力を持っている人間がいる?
わからない。
____________でも可能性はあるかもしれない。
誰に?
俺 だ
気がつくと俺は屋上に立っていた。
俺に気づいたヘリコプターが向かってくる。
その瞬間、左腕が変形していく。
それと比例するように俺とヘリコプターは近づいていく。
誰だ俺の姿をこんなんにしたのは?
誰がこの世界を狂わせた?
誰がゾンビで埋め尽くした?
わかってる。わかってるよ。
目の前にある、ソレだ。
どうする?
正面突破か?
駄目だ。もっと冷静になれ。他に方法はある。
…冷静に。
ならどうして屋上に来た?
真っ正面で壊す為のハズだ。
ならば冷静になる必要はない。
この時点で俺はもう前に進んで、ヘリコプターに近づいていく。
冷静にならなくていい。
違う。ならなくていい、じゃない。
世界がこんな状況に陥った時から俺は冷静になれなかった。
そうだよ、と長い自問自答の中で呟く俺。
「冷静になれるわけねーよ」
2011/11/26 19:07 No.17
OUT★9emSGec3A5_vDu
いつの間にか屋上から飛び降りていた俺の前には
巨大な戦闘用ヘリコプターという大きな壁が立ちはだかる。
ここから真っ逆さまに落ちれば
いくら俺でも体は粉々になるだろう。
俺はヘリコプターの前方に着地する。
ガラスの向こうに見えるのは
ガスマスクのような物をしている男二人。
コイツらが今、どんな表情をしているのかは理解することが出来ない。
俺は変わり果てた左腕でガラスを突き破り
助手席に居た男の首を掴んで持ち上げた。
「やめろッ!やめてくれっ!!」
そう必死に叫ぶ男。
「うおおおおおおおお!!!!」
操縦席にいる男は俺のバランスを崩そうと
操縦を荒ぶらせている。
「…死っ…死ねぇ化け物!!」
首を掴んでいた男は腰から刃渡り20p程のナイフを出すと
それを俺の腹部に突き刺す。
…腹部に激痛が走る。
それでも死んでしまう事はない。
この事は相手にだって理解できているハズだ。
刺したナイフを俺の体内でかき回して
俺を何とか殺そうとしている。
「死ね死ね死ね!!この化け物!!」
俺はグッと力を入れる。
すると男はナイフから手を離し、もがき苦しむ。
そんな男に俺は長たらしく言う。
「俺だってこんな化け物になんかなりたくなかった。
誰だ?俺をこんな姿にしたヤツらは?
いや…違う…世界をこんな有様にしたのは誰だ?」
あまりの苦しみにマスクが取れる。
男はもう…泣き崩れていた。
その涙が恐怖からか
それとも後悔か。
そんなことどうだっていい。
「…許してください許してください許してください許してください」
その言葉を連呼する哀れな男。
鼻水もよだれも盛大に垂らしながら俺に頼む男。
それでも俺の背中には優乃達の思いが支えていた。
「二度と俺の前に現れるな。もう二度と」
そう言って俺は男をビルの中に投げ捨てた。
ガラスを突き破って中に入れられた男は
ごく僅かだが蠢いていた。
「後はお前だけだな」
俺がそう言うと操縦席の男はマスクを外す。
「…調子に乗るなよ」
男はマスクを外し終えた後、俺に言う。
俺はもう一度、腕を突っ込むつもりだった。
だが、もう遅い。
ヘリコプターは一気に傾き、急上昇。
縦の状態でヘリコプターは上昇していく。
俺はバランスを崩して高さ500メートル程の空から落ちていく。
ヘリコプターもバランスを崩し、逆さまに落ちていくが
すぐに落ち着きを取り戻す。
そして体勢を整えたヘリコプターは俺に向かって狙撃してきた。
何発も俺の体に触れ、直撃は今の所、まぬがれてはいる。
「くそ…何か方法は…!!」
俺は落下地点を見つめる。
その途中にも弾は俺の体に触れる。
本当に直撃はしていない。
不幸中の幸いってヤツか。
しばらく俺は落下地点を見つめる。
……!!
…ビル?
そうか。
いいコト思いついた。
「ってゆーかこれしか方法はなさそうだな」
あ と は 俺 の 体 が 持 つ か ど う か だ 。
2011/11/29 20:18 No.18
OUT★9emSGec3A5_vDu
ものすごい風圧と共に地上が近づいてくる。
相手のヘリは相変わらず俺に命中させる事ができていない。
それはそうと……ビルまでの到達時間はあとどのくらいだろうか?
そう考えながら落ちていく。
『お前に勝ち目はないだろう!!なぜもがくんだ!!』
今更ながら操縦席の男は叫ぶ。
男はまだ……若かった。
二十歳……いやそれより下かもしれない。
そんな男がどうゆうつもりで俺に問うたのかは分からない。
なんの抵抗もなく、無傷で俺を殺して終わりたいのか。
もしかしたらそんな意志があるのかもしれない、相手には。
でも俺は生きたい。
生きなきゃならない。
「生きたいからに決まってんだろォが!!!」
そう思い切り叫んだ後、俺は下を見る。
ビルまで約50メートル程だった。
あっという間だった。
40メートル…… 。
30メートル…… 。
でもまだだ…。
ヘリもビルの高さまで到達しないと
俺はなにもできないまま死んでしまう。
ヘリは俺の20メートルくらい上で射撃を続けている。
俺は上のヘリから、もう一度視線を下に向ける。
もう、ビルはすぐそこだった。
3m
2
1…… !!
俺はビルに密着する。
ビルを削りながら、失速しながら落ちていく。
俺は逆さまのままでヘリを見る。見上げる。
ヘリはもうビルの屋上の高さまで来ていた。
もう条件は整っていた。
少し、覚悟を決める時間が欲しい。
失敗すれば本当に死んでしまう。
そうすれば
優 乃 と の 約 束 を 果 た せ な く な る 。
…落ち着け俺。
大丈夫だ、星神龍斗。
俺はこんな所で死ぬわけにはいかない。
"龍斗"
誰かがそう呼んだ気がした。
瞬間、男が叫ぶ。
『死ねぇ!!!!!』
ヘリは俺に向かって突撃してきた。
少し予想外だった……でも今しかない。
俺は左腕と両足をビルの壁につけると
落下した反動と左腕と両足の力で
ヘリに向かって一直線に飛んだ。
落下した反動のおかげか
左腕のおかげか。
双方が合わさったおかげか。
それはわからない。
かなり凄い衝撃と速度だった。
本当にヘリに向かって一直線に飛んだんだ。
そしてヘリは俺に向かって狙撃する。
今度はもう、逃げも隠れもできない。
多分、10割中7割は俺の体に命中していると思う。
『止まれええええええええええええ!!!!!!!』
そんな叫び声が銃声に混じって聞こえる。
額にも弾がかすって、血が顔に流れてくる。
上半身は穴だらけだ。
でも止まらない。
止まれない。
立 ち 止 ま れ な い 。
立 ち 止 ま れ な い わ け がある。
「うおおおおおおお!!!!」
俺はヘリの前方に辿り着くと、ボロボロの左腕で男を殴った。
そして機内に入った俺と男は
地上まで300mくらいの高さから
ヘリごと落ちていく。
2011/12/02 22:11 No.19
OUT★9emSGec3A5_vDu
落下していくヘリの中で
男は顔面を押さえ、もがき苦しむ。
時間がなかった。
俺はそんな男の胸ぐらを掴んで叫んだ。
その勢いでまだ再生されていない、体の一部から血が飛び散る。
「お前はまだ生きたいのか!? 死にたいのか!? 答えろ!!」
男は顔を押さえたまま、何も答えない。
本当に時間がない。
もう地面はすぐそこだ。
「答えろ!!本当に死にたいのか!?」
瞬間、ヘリのプロペラがビルに当たって
大きな振動が機内に広がる。
そんな中、男はこう声を漏らした。
「……好きにしろ」
「ああ!! そうする事にする!」
胸ぐらを掴んだまま
前方で派手に割れたガラスの間に向かって投げる。
男はそのままビルのガラスを突き破って中に入った。
俺はそのまま前方のガラスからジャンプする。
その瞬間、ヘリが地面と接触する。
派手すぎるでかい爆音と共に、もの凄い爆風。
その爆風で俺は着地地点より大幅に飛ばされ
その勢いで地面に叩きつけられる。
「……ってぇ」
地面に落ち、一時して
俺は頭を押さえながら立ち上がる。
「まぁ……痛いだけで良かったな」
足の汚れをはたきながら
口からこぼれた。
すると、上空に一機のヘリコプターが飛行していた。
「おいおい……まじかよ」
だが、俺の悪い予感は幸いにも外れていた。
「龍斗ーッ!!! おーい!!」
ヘリから顔を出した瀬奈が俺に向けて手を振っていた。
瀬奈達も無事だったんだ。
2011/12/05 18:27 No.20
OUT★9emSGec3A5_vDu
少し物騒な機内には
操縦席に千葉さん。
その後ろに瀬奈。
俺が機内に入るとヘリは少しずつ離陸し始める。
「ありがとうございます。千葉さん」
「かまわないよ」
千葉さんは微笑してそう言ってくれた。
「私にはッッ!!」
なんだか後ろから声がする。
俺は恐る恐る振り返る。
視線の先には瀬奈。
瀬奈は少し桃の色をした頬を膨らませ
上目遣いで俺の顔を見る。
「私には何も言うことないのッ!?」
彼女は口を尖らせながら言う。
「……ありがとな。心配してくれて」
そんな一言を瀬奈に伝える。
瞬間、瀬奈は目を大きく見開いたかと思えば
顔を真っ赤にして俯く。
「な……なによ今更っ」
「だってお前が言えって言ったんだろーが」
「普通、自分から言うでしょぉ!?」
瀬奈は体を少し震わせながら怒鳴る。
熱でもあんのか?
顔も赤いし。
「お前、熱でもあんのか?」
俺はそう言って手のひらを
瀬奈のおでこに当てる。
……お。
熱はないみたいだ。
「良かったじゃねえか……ってやめろ!!」
俺が気づいた時には、すでに遅く
俺の腹には強烈な蹴りが入っていた。
「うがッ!」
俺はその場でひっくり返る。
「かっ…勝手に触らないでよッ!!」
「だからって蹴るかよ普通…」
「うん」
「はぁ!!?」
わけがわからない、と心の中で呟きながら
俺はあぐらをかく。
すると
「お取り込み中、ちょっといいかな?」
千葉さんが真剣かつ、真っ直ぐなトーンで言う。
そして続ける。
「さっき入ってきた情報だが
あの空港で飛んだ便……龍斗君の友人達が
乗っている便も含め、日本からの便が
他国に到着することが不可能になった」
俺は、一瞬で優乃達の顔を思い出す。
「それって一体どうゆう事なんですか!?」
納得のいかない千葉さんの情報に食い付く俺。
そんな落ち着きさの足りない俺に
千葉さんは丁寧に教えてくれた。
「どうやらアメリカの方で感染が広がったようね。
便を着陸させる余裕が少しもないんだそうよ。
そしてアメリカがやられたっていう情報が
他国に伝わった瞬間、日本の便が危険視され
どの国も着陸させる気などない……と」
感染の出所の日本の便には万が一の場合がある。
確かに感染の始まっていない国にとっては
それが一番、自国を守るのに適しているのだろう。
でも原因はなんだ?
どうしてアメリカでも感染が広まったんだ?
「アメリカで感染した理由がわからない。
それを知る必要があるんだ。
それにもうこんな事を止めさせなければならない。
だからこそ……龍斗君、頼みがあるんだ」
千葉さんはそう言い終えると
長い間が開く。
そしてようやく口を開いた。
「私達と一緒にOTMの息の根を止めてくれないか?」
瞬間、瀬奈の表情が変わった。
2011/12/17 22:16 No.21
OUT★9emSGec3A5_vDu
「息の根? 皆殺しにする気なんですか?」
俺は千葉さんに問う。
瞬間、瀬奈の表情が一段と暗くなる。
すると千葉さんは、鼻で笑うと
「勘違いしないでくれ。
私が言っているのはOTMそのものの活動の
息の根を止める事だよ。
人を殺すなんて一言も言っていない」
俺は内心、ほっとした気分になった。
「良かったな。瀬奈」
瀬奈は少し笑って頷いた。
確かにこれだけの被害をもたらしたOTMの活動。
本当に息の根を止めないと、もう二度と人間が
この世界に生まれてくる事はない。
その名の通り、世界は死ぬんだから。
「ところで千葉さん。どこに向かってるんですか?」
瀬奈が問う。
千葉さんは吸っていた煙草の吸い殻を捨て
一息おいてから、こう言った。
「本部だよ」
〜優乃 視点〜
『目的地に到着致しました。
まもなく当機は着陸します』
滑走路もなにもないこの島にどうやって着陸するのか
凄く不安だけど、飛行機は徐々に島に近づいていく。
「おいおい、これはどうやって着陸すんだよ。
まさか強引にする気なのか!?」
護君も私と同じ事を思っていたようだ。
護君のその一言が機内に広がった瞬間
機内にはもの凄い振動と共にもの凄い音が鳴り響く。
どうやら地面と接触したようだ。
瞬間、私は意識を失った。
______________。
「……の」
……え?
「ぅの……!」
果てしなく遠い所から呼ばれてる気がした。
「優乃!!」
「うわッ!!」
綾瀬ちゃんの呼ぶ声が聞こえた瞬間、私は飛び上がった。
綾瀬ちゃん達も驚いた様子。
みんな、ひっくり返ってた。
そんなみっともない格好を見ていると、なんだか笑えてくる。
「はははッ」
「何笑ってんのよ!!心配したじゃない!!」
綾瀬ちゃんが肩を揺さぶる。
「あんた着陸した瞬間、気を失ったから……」
顔を俯けて言う綾瀬ちゃん。
「まぁ……あれだけの音と振動だからな」
耀君が腕を組んで言う。
そして続ける。
「でも助かったんだ。なによりだよ」
そう耀君が言い終えた後、私達の前に
一人の男性が近寄り、こう言った。
「ご無事でなによりです。
ここにはゾンビも生息していません。
敷いて言うなら、安全地帯です。
なにか困った事がありましたら
なんなりと申しください」
凄くいい体格をしている、その男性は
まるで戦闘服のようなものを着ていて
後ろ姿には大きく日の丸が記されてあった。
そして私はその服に見覚えがある。
確か、空港で現れた部隊がそんな服を着ていたような……。
すると耀君が問う。
「一体ここはどこなんですか?」
男性は振り返って言う。
「皆さんからすれば、ただの島。
でも自分達からすればここは
ホームグラウンドなんですよ」
男性はそう言い終えた後、凛々しい声で笑う。
そして
「自分は部隊の指揮をしている木山と申します。
ここは、自分達の部隊の本部なんです。
ほら、見えるでしょう?」
そうして木山さんは指を指す。
その方向には、とても大きな施設がそびえ立つ。
ソレはまるで
3000の人数なんていとも簡単にかくまう事ができるくらいの大きさだった。
2011/12/18 15:12 No.22
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「失礼ですが……」
先生が木山さんに問う。
「なんでしょう?」
「木山さんの所属してる部隊って
一体どうゆう部隊なんですか?」
確かに、と私は思う。
私にとって
日本の為に戦ってくれる部隊っていうのは
自衛隊とかくらいしかわからない。
本当はもっとあるんだろうけど……。
で、木山さん達も
最初は自衛隊なのかなって思ってたけど
なんだか違う。
自衛隊っていうよりも……なんかボランティアって感じがして。
最初にこの人達に出会ったのは空港の時で
彼らは私達を守ってくれた。
特に背中に大きく記された日の丸は
彼らの後方にいた私達にとって凄く印象的。
正直、私は今ほっとしている。
でも……それでも私は胸の奥が少し痛い。
"彼"がいないから。
「別に私達の部隊には名前なんてありません。
ただ、日本の国民を守りたい。
そんな志を持った人間が活動しているだけ。
……といっても政府には頭が上がらないんですけどね」
木山さんが先生へ返答している。
木山さんが少し笑った後
次に耀君が問う。
「その政府は今、どうしてるんですか?」
「……詳しい事はわからない。
ただ私達は先日、最終任務を任された」
少し間が空いて
再び木山さんが言う。
「"命を懸けて国民を守り抜いてくれ"
これが最後の任務、だそうだ」
その場の空気が一瞬、凍る。
守る。
それだけでは
もうどうしようもならない事は政府だってわかっているハズなのに。
今の日本は
誰かが守ろうとしている人も
誰かを守ろうとしている人も
みんな消えていっている世界。
そんな重い空気の中
一人の男性が数人の人に囲まれながら近づいてくる。
男性は手を縄でくくられていて
時々、怒声をあげながら連れられていく。
男性は木山さんの前に立つと
物凄い形相で木山さんを睨む。
男性も同じ部隊の服を着ていた。
すると男性は何かブツブツ呟いている。
「そうか……一番上はアンタだったなぁ」
「なんの話だ?福田君」
この男性は福田という名だそうだ。
木山さんは福田さんへの視線から
福田さんを連れてきた数人に視線を向け
「ごくろうだった。
千葉は今どこだ?」
「はい。隊長は、一人の女子と一緒に
またヘリに乗ってどこかに行ってしまいました」
すると、木山さんは深いため息をつく。
「はぁ。
アイツ、なに考えてんだ……」
「どうやら青年を探す、との事です」
「青年?日本での生存者か?」
「はい。しかもその青年。
例の空港での惨事に大きく関わっているそうなんです」
瞬間、私の頭の中で
一人の人間が浮かび上がる。
その青年が
浮かび上がったその人かはわからない。
でも私は願う。
切実に願う。
その青年が"彼"でいますように、と。
2011/12/26 19:05 No.23
OUT★9emSGec3A5_MlW
彼らの話はトントン拍子に進んでいく。
そしてついに木山さんは
「福田……貴様を施設の地下に閉じこめておく。
貴様の顔を見るのは今日が最後かもしれんな」
男性独特な低いかつ、落ち着きのある声で
木山さんは告げた。
「……まぁいいよ。
てめぇらも全員死ぬんだ。
逆に俺の方が安全なんだ。
安心、安全。
ん〜、なんて響きがいいんだ」
福田は、少しにやけながら言う。
「コイツ……おらっ! こい!」
周りの人は強引に福田を連れていく。
やがて施設内へと消えていった。
そんな光景を目の当たりにした私達は
硬直した状態のままだった。
多分、一人の男性が言った言葉に
みんな反応したのかもしれない。
"龍斗は生きてる"
それをずっと信じてきた。
あの空港の時から。
龍斗に会えるのだろうか。
また話す事ができるのだろうか。
……ともかく私は龍斗にもう一度出会って
今まで信じてきて良かったって、心の底から喜びたい。
「すみません、つまらないモノとお見せしてしまいました」
木山さんがくるり、と反転して言う。
「あの福田という人……何かやったんですか?」
綾瀬ちゃんが問う。
「……あの男は部隊の掟を破ったのち、殺人未遂まで起こした。
詳しくは言えません。申し訳ありません」
「……いえ」
施設を見つめながら話す木山さんは
何かを思いながら話しているかのように思えた。
福田っていう人も結局は
木山さんと同じ部隊なわけで
自分の部隊の仲間が
間違えを起こしてしまえば
やっぱり……少し、悲しいのかもしれない。
「まぁこの話はここまでにして、どうぞ。
これからあなた方が過ごす場所へ案内します」
そして私達は施設内へと入った。
2011/12/30 20:35 No.24
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〜龍斗視点〜
「本部って……OTMの所に行くんじゃないんですか?」
千葉さんは少し笑うと
「私達3人であの企業に勝てると思うかい?」
「そ……それもそうですね」
確かにそうだ。
政府を黙らせるくらいの企業だ。
そんなに簡単に壊せるのなら
こんな無理はしない。
「それに……あちらは龍斗君の事気づいているだろう?
だとしたら、龍斗君に対して何か策があるだろう普通。
もしもの事を考えた場合、一旦引いたほうがいい」
……策?
そうか、そうだ。
あのゾンビを作り出したんだ。
死者を生き返らせる事ができるのなら
それ以上の事ができたっておかしくない。
現に俺の体がこんな状態になったのは
学校の図書室であの化け物と研究員と戦った時からだ。
あんな化け物を作るくらいだ。
俺程度の力じゃどうにもならない可能性だってある。
千葉さんはそれを見抜いていたのか。
俺は素直に尊敬する。
「……ねぇねぇ」
俺の肩を二回タッチする。
瀬奈だ。
「なんだ?」
「龍斗……私達が遊園地から逃げた後
どうやってあの場くぐり抜けたの? 普通じゃないよ……」
「だって普通じゃねぇもん」
「そっ……そうゆう事じゃなくて!!
どうやって助かったのって聞いてんの!」
顔を真っ赤にして怒る瀬奈を見ていると
なんだか平和な気がしてならない。
少し、笑えてくる。
「と……とりあえず倒した」
「倒したの!?」
「うん」
「あの数を一人で!?
洒落にならないよ……」
「まぁな。
瀬奈達はどうやってヘリを見つけたんだ?」
そうだね〜
と、呟きながら考える瀬奈。
「遊園地を出て、車に乗って
逃げてる途中に千葉さんの仲間のヘリを見つけて……ですよねっ!?」
「そうそう。
たまたまパトロールしている隊員がいて助かったんだ」
「そうだったんですか…」
だから、今俺たちはヘリにいるのか。
瞬間、千葉さんが言う。
「やばい!! どっかに捕まれ!!」
そして、ヘリはもの凄い勢いで反り返る。
後方を見てみると
巨大な鉄の箱を運んでいるヘリ。
そしてそれを取り囲むように配置されたヘリが5.6台。
その全てのヘリにOTMという印が記されたあった。
2011/12/30 21:34 No.25
OUT★9emSGec3A5_Oz4
俺達の前を通り過ぎていった二機のヘリは
そのままUターンした後、後方のヘリの集団に戻っていく。
「くそっ!いつの間に……!!」
千葉さんが舌打ちをしながらヘリを安定させる。
OTMのヘリの集団は
こちらに未だ射撃はしてこない。
現時点で俺達に敵意はないのか?
それでも、あの馬鹿でかい鉄の箱が気になる。
あれはなんだ?
あれをどこに持って行く気なんだ?
「千葉さん!ここは一旦、引いた方が……」
俺はここまでしか言えなかった。
その先は千葉さんの声でかき消される。
「駄目だ!!アイツらの狙いは私達の本部だ!!
本部には民間人だっている。
今、襲撃されたらパニック状態になってしまうんだ!!」
そう言うと千葉さんは
胸から通信機を取り出す。
その時だった。
後方のヘリ達が一斉に射撃をする。
「きゃああああああ!!!」
後方を見ていた瀬奈が悲鳴をあげる。
無理もない。
無数もの赤く光る弾がこちらに向かって飛んでくるのだから。
千葉さんは持っていた通信機を手から落とし
なんとか回避しようと操縦に専念する。
……キリがない。
何度かわしても
向こうの弾は尽き果てる事のなく、俺達に降り注ぐ。
そして恐れていた事がついに起こった。
もの凄い振動と共にヘリが燃える。
一つの弾がヘリの機体に命中したようだ。
「このままじゃ墜落して……」
千葉さんは壁を思い切り、叩く。
「申し訳ない……」
そう言った。
ヘリは真っ逆さまに落ちていく。
OTMのヘリ達も俺達の墜落を見かねて射撃を止めた。
俺はガラスを覗く。
ここは今、上空150m位の高さ。
い け る 。
そう感じた。
「俺に捕まれ!」
俺はそう怒鳴る。
二人共、驚いた表情で見つめる。
「早く!!」
もう一度、言う。
ようやく二人は俺の腕を掴む。
狭い機内でも
なんとか二人を両脇で抱える事ができた。
瞬間、俺の体は熱くなって変化を遂げる。
「息を止めろ!!」
両脇から息の吸う音が聞こえた瞬間
俺はガラスを蹴って、割る。
もの凄い風圧で吹き飛ばされそうになる。
それでも失わせるわけにはいかない。
渾身の力で俺はヘリから落下する。
「いやぁぁぁぁぁ!!!!」
瀬奈の悲鳴が聞こえる。
俺達の落下しそうな先は
幸いにも水のある場所だった。
落下まであと100m。
……そんな後少しの所なのに
OTMのヘリ達はそこを見逃す事がなく。
落下中のヘリから脱出を試みた俺達に気づくと
また一斉に俺達に向けて射撃してきた。
「容赦ねぇな。
先に行っててくれ」
そう言って俺は落下スピードを上げる為に
二人をかなりの力で押す。
「いっやあああああああああああああああ!!!!!!」
鼓膜が爆発しそうな程でかい瀬奈の悲鳴は
もはや爆笑モノだった。
少し笑った後、俺はヘリの方を向く。
瞬間
赤い無数の弾が俺の体に降り注ぎ
血飛沫が舞いながら落ちていく。
激しい痛みに襲われながら
少し不安定な体勢で着水した。
2012/01/05 19:16 No.26
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水の中には
たくさんの死体と魚の死骸……それから
俺の血でまた少し水が赤く染まる。
どうやらここは湖のようだ。
俺を歯を食いしばると
全身の痛みを堪えながら、水面から顔を出した。
「瀬奈!! 千葉さん!!」
そう叫んでから数秒たった後
「龍斗!!」
瀬奈の声がした。
声のする方へ顔を向けると
浅い水辺に二人とも立っていた。
俺をそこまで適当なフォームで泳ぎながら
二人のいる場所へ向かう。
ようやく足の届く場所に着いた。
まだ全身が焼けるように痛い。
腹部の部分の銃痕が塞がっていなかった。
俺は一足先に岸に上がって
その場に仰向けで倒れた。
「……痛てぇ」
そんな一言をつぶやくと
俺を覗き込む、瀬奈の顔。
「大丈夫なの……?」
「まぁ……慣れてるからな」
瀬奈はその場に座り込むと俯く。
俯きながら
「そんな痛い思いをする事なんて……慣れちゃ駄目だよ」
正座した瀬奈の顎や髪の毛から
湖の水が俺の顔に落ちてくる。
「いいんだって。
お前らだったら死んでしまうような事を
俺は痛みだけで納める事ができるんだ。
命に比べて痛みなんて安いもんさ」
「……でも辛いんだよね?」
「正直な所……そうかもしれないな、ハハ。
でも俺が決めた事だから」
きょとん、とした表情で俺を見つめる瀬奈。
その後ろで千葉さんが頭を抱えて座っている。
「決めた事……?」
瀬奈が問う。
「生きたい」
「え?」
俺は体を起こして
自分の左腕を見つめる。
「……こんな俺でも認めてくれた人がいたから」
俺は立ち上がる。
どうやら腹部の傷も再生し終わったようだ。
「自分が生きたいんだったら
どうしてこんな事するの?
龍斗がいくら強くたって
死んじゃう可能性は0じゃない。
一番、危ないのは龍斗かもしれないんだよ……?」
瀬奈は引き続き、俺に問う。
「そうだな。
俺もいつ死んじまうか分かんねー。
死にたくないけど
大切な人を失う事の方が俺にとって
自分が死ぬ事よりも百倍辛い。
それはお前も同じだろ?」
「……そう、だけど」
「どうせならこの力……。
敵を殺す事以外にだって役に立たせたいんだ」
そう言って俺は瀬奈の頭に手を置く。
「心配してくれてありがとうな」
「……ねぇ」
「ん?」
俺は瀬奈の頭から手を離す。
「龍斗の事を認めてくれた人って……誰の事?」
思いがけない質問だった。
「べ…別に誰だっていいじゃねぇかよ」
少し照れくさい。
でも瀬奈の表情は真剣だった。
「……誰なの?」
どうしてそこまで聞きたがるのか。
今の俺には理解ができなかった。
少し間が空いたが、別に言えない事ではない。
瀬奈の事だ。
どうせ
"早く教えろ!" とか言って腹部を蹴られてしまうかもしれない。
……めんどくさそうだ。
面倒な事になる前に言っておこうと思った。
「俺の好きな人だよ」
瞬間、瀬奈の表情は固まる。
「す……好きな……人」
そう言って俯く。
まずい……。
なんか気に障るような事言ってしまったんだろうか。
またキックが飛んできそうだ。
「いっ……いやっその。
これには深い訳があってですねー……」
「いいよ!!別に!」
俯けた表情を上げ
笑顔で瀬奈は言った。
でもその笑顔はなんだか作り笑顔のように見えた。
理由はわからない。
なぜか、そう感じてしまう。
「せ……」
その時、千葉さんの声が響く。
「ちょっとゆっくりし過ぎたんじゃないか?
まぁ元はと言えば私のせいなんだが……」
岸の周りには複数のゾンビで囲まれていた。
2012/01/06 19:11 No.27
OUT★9emSGec3A5_Oz4
『ぅあぁあぁ……』
男も女も関係なく……。
いや、大人も子供も関係なく
同じ声を上げているゾンビ達。
「とりあえず……走ろうか」
千葉さんは手招きをして先頭に立つ。
「はい!」
そう返事をして俺も走り出す……が。
「瀬奈! なにやってんだ!!」
「えっ? あ……うん」
瀬奈は一人突っ立って俯いていた。
俺は瀬奈に何か言っただろうか?
……でも今はとりあえず脳を使う事より体を動かす事が優先だ。
千葉さんの背中を見ながら走る。
……と、後ろからドサっと音がした。
振り返ると、瀬奈が体勢を崩して倒れ込んでいた。
その周りにゾンビが寄ってくる。
「龍斗君! 伏せろ!」
俺は千葉さんに言われ、その場でしゃがむ。
拳銃の中、火薬の爆裂音が1.2回響き渡る。
瀬奈の周囲にいたゾンビはその場に倒れる。
その隙に俺は倒れた瀬奈に寄る。
「大丈夫か!?」
瀬奈は顔を上げて言う。
「……うん。ごめんね」
クソッ!
どうしたっていうんだよ!!
俺にはまったく理解ができない。
「乗れ」
俺は瀬奈をおぶった。
「急いで!!」
千葉さんが15mくらい先で叫ぶ。
「……どうしたんだ?」
俺は走りながら問う。
「ううん……なんでもないの。ごめんね……」
「……」
俺は意味がわからず、ただ足をひたすら動かす。
ゾンビの集団から逃げ切れた後、俺達は港についた。
どうやらさっき、水のあった場所は
湖ではなく河口だったようだ。
近くに海があるのも頷ける。
「歩けるか?」
「うん。ありがと」
俺はゆっくりと瀬奈を降ろす。
「千葉さん。どうします?」
俺は少しも息切れをしていない
千葉さんに少し驚きながら問う。
「一刻も早く本部に連絡をとらなければ……」
「通信機はどうなったんです……あ。
ヘリの中で落として……」
「それもそうだが、もう一つ予備に持っていたんだけど
水に濡れてもう使えなくなってしまった」
「じゃあどうすれば……」
「本部は孤島だからな。泳いでいこうか?」
「はいぃ?」
俺がそんな事を言うと
千葉さんは軽く笑う。
「冗談だよ。
もうこの惨事だ。船を借りて行く事にあれこれ言われる事はないと思うが。
……って私がこんな事を言ってもいいのだろうか」
と言うと、千葉さんは大きなため息をついて
頭を抱えて座り込む。
「し……仕方ないですよ!
こんな事態なんだしッ……とにかく急ぎましょう!」
「……そうだな。
よし! じゃあこのボートを借りよう」
「……ふぅ」
とにかく千葉さんはしっかりしているのか
実は考えすぎる所もあるのか……。
まぁいいだろう。
早速、ボートに乗り込むと千葉さんが操縦室に入る。
船上には俺と瀬奈。
なんとなく話にくい。
エンジンがかかる。
会話は出来そうにもない。
そしてボートは本部に向かって進み出す。
この時の俺達はこれから先に起こる
最悪の事態に陥る事になる。
どうしてこれだけのんびりとしていたのか。
どうしてこんな事になったのか。
一生悔やんでも悔やみ切れない思いが残る。
最 悪 だ っ た 。
2012/01/08 21:50 No.28
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〜優乃視点〜
施設内の時計の針は
午後7時前を指している。
正確には6時57分だ。
「大きいですね〜」
と、泰子先生の言う通り
施設内はかなりの広大な所で
一階だけでもかなりの人数を保護できるようになっている。
先ほどの木山さんの話によると
この施設は、今私達がいる1階の他に
食堂、寝室、大浴場などが設置しているらしい。
大浴場は別に天然ではないらしい。
そして、2階と地下は部隊の会議室や
トレーニングルーム、拳銃格納庫などなど……。
要するに私達一般人にとっては
あまり行く必要のない所のようだ。
それぞれの場所を丁寧に木山さんに教えてもらった後
木山さんのすすめで浴場に入る事になった。
PM7:45
私達が浴場から上がった後に見た時計の針は
この時間を指していた。
「腹へった……」
護君がくたびれながら言う。
「食堂に行くか」
耀君が護君の肩を叩きながら言う。
そしてまた私達は食堂で時間を過ごす。
今、考えると食べ物を口にするのは
凄く久しぶりだった。
私達の周りには
ここの部隊に所属している人と
飛行機の乗客の人を合わせて
ざっと600人くらいだろうか。
乗客が300、部隊が300。
大体、半分ずつくらいの割合。
すると、一人の女性の隊員から
一枚の紙を貰った。
どうやらその隊員は、乗客全員に渡しているようだ。
紙に書いてある内容は
大体、今日の消灯時間と明日の起床時間。
あとは施設内の詳しい地図。
そのくらいだった。
夕食を終えて
寝室に向かう途中、耀君がこんな事を言う。
「俺達、いつまでここにいる事になるんだろうな」
「それは……次の行き先が決まるまでじゃないの?」
綾瀬ちゃんが言う。
「決まる前にここが襲われたら意味ねぇじゃねーか」
護君が言う。
「まぁそうだけど……。
とにかく今は部隊にかくまってもらうしかないと思う」
瀬奈が返答する。
ここで男女、部屋に別れる通路に着いた。
私達は、耀君と護君と別れた後
私、綾瀬ちゃん、先生の3人で寝る事のできる
寝室、108号室のドアを開け
私は目の前のベッドに飛び乗ると
泥のように眠った。
〜2時間後 施設外〜
もう時間帯は夜中の2時をまわっていた。
施設の屋上で二人の隊員が双眼鏡を持って
外の様子を確認している。
いわゆる、監視をしているのだ。
良い体格をした男性と小柄な男性の二人。
「なぁ……俺達はこれからどうなるんだろうな」
「そんな事、俺に聞いてどうするよ」
「そうだな……。
算数のかけ算も分からないような奴に聞いた俺が馬鹿だった」
「そのくらい分かるに決まってんだろうが!!」
良い体格をした男は小柄の男を殴る。
「ってぇ……冗談だって!」
「……。
まぁ、これからどうなるかって言っても
指揮官の木山さんが決める事だしな。
そういえば千葉さんはどうしたんだ?」
「千葉さんか?
さっき他の隊員の奴が言ってたのを少し聞いた。
まだ生き残ってる人を助けに行ったらしい」
「……凄いよな。千葉さん。
この隊に入ってまだ1年も経ってないのに
どんどん先に昇格していって
今では指揮官に続く隊長だもんな」
「それ程の事をしっかりやってのけてるからな。
ホントにすげぇよ、あの人は。
しかも、かなりの美人だろう?」
「ああ、それは俺も思ってた」
瞬間、二人は俯く。
そして小柄の男がボソりと言う。
「……でもあの人は地獄を経験してる」
「やめろ。
俺達がこんな所で話していい内容じゃない。
千葉さんがこの事をどんな思いで話していたかくらい
お前にだって理解できてるだろう?」
「……そうだな。
あの人にはいつまでも隊にいてもらいたい。
少しでも俺達が励みになってあげなくちゃな」
「ああ」
そんな会話をしていると
そろそろ監視交代の時間が近づいてくる事に気づく。
小柄な男は大きく背伸びをして
「んぢゃ、お先に」
そのまま施設の中に入ろうとした時
良い体格の男が言う。
「おい……アレなんだ?」
指を指す方向へ、小柄な男は視線を向ける。
視線の先には
何機ものヘリコプター。
その瞬間、赤い火の弾がこちらに飛んでくる。
その弾は良い体格の男の頭部に命中し
男は血飛沫をあげながらその場に倒れた。
瞬間、小柄な男は手元にあったスピーカーで
「敵襲ーッ!! 敵襲ーッ!!」
と、何度も何度も叫ぶ。
そして島中に大きなサイレンが鳴り響く。
スピーカーを置き、小柄な男はヘリを見つめながらこう呟いた。
「……終わった」
そして、小柄な男もヘリの狙撃に命中し
その場で倒れる。
2012/01/13 20:58 No.29
OUT★9emSGec3A5_CPd
『緊急指令。緊急指令。
来敵を撃退せよ。緊急指令。緊急指令……』
島中にこだまするサイレン。
その音とアナウンスで私は目が覚める。
「起きた……わね」
声のする方向を向くと、綾瀬ちゃんと先生が窓の外を覗いていた。
「どうしたの?」
「見ればわかるよ」
真剣な眼差しで見つめる綾瀬ちゃん。
私は言われるがままに窓の外に広がる景色を見る。
「……え? どうして……?」
時刻は午前2時過ぎ。
それなのに外は赤い炎がメラメラと燃えている。
外は赤の色をしている、どこかの火山のように思えた。
島に生えている木々には火が燃え移り
音を出して倒れていく。
一番ショックだったのは
地面に血を流して倒れている人間達の姿。
目を覆いたくなるくらいの残酷さと
私全体を覆い尽くすくらい、大きな悲しみ。
空には何十機ものヘリが施設を狙撃している。
……いや、何十機の数機に混じって
襲ってくるヘリに対抗しているヘリもあった。
多分、木山さん達だ。
「優乃!! 行くよ!」
綾瀬ちゃんに手を引っ張られる。
「どこに!?」
「ここはもう危ないんだって!!
とりあえず走って!!」
瞬間、すぐ近くにヘリの弾が直撃し
もの凄い爆発音が響き渡る。
「急いで!!!」
私達は108号室を飛び出ると全速力で駆け出す。
「どこに行けば安全なのかわかるの!?」
走りながら綾瀬ちゃんと先生に問う。
「わからないけど……とにかく今は走るしかないわ!!」
先生が返答する。
やがて男女部屋が別れる通路までたどり着いた。
「お前ら!!」
丁度、耀君達と合流する事ができた。
『落ち着いてください!!
避難場所は地下の一階のホールです!!
速やかにご移動お願いします!!」
一人の男性隊員がスピーカを持って
民間人を誘導している。
「俺達も行くぞ!!」
「うんッ!!」
その時、後方から
もの凄い爆発音と爆風が襲いかかってきた。
砂煙が舞う中で私はゆっくり目を開ける。
通路の大部分は今の爆発で崩壊し
今、私が倒れている所は外だった。
仰向けで倒れていた。
空は赤く、数機のヘリが戦っている。
赤い閃光のような弾が激しく交差している。
「優乃!!」
護君が手を差し伸べる。
「ありがとう」
「行くぞ!! 地下に向かわねえと死んじまう!!」
幸い、施設内に留まる事が出来ていた先生は
手招きをして泣きそうな顔をしていた。
だけど、私は走る為に動かしていた足を止める。
「どうした?」
護君もつられて止まる。
「綾瀬ちゃんと耀君は?」
私は周りを見渡す。
……いた!!
綾瀬ちゃんは私達よりもずっと遠い所で倒れていた。
そして、今にも燃えて折れそうな木の下の場所。
「護君!! 綾瀬ちゃん、助けないと!」
すると
護君が返答する前にいつの間にか現れた人影が一言だけ言って走り出す。
「俺に任せろ」
小柄な体格の耀君だった。
彼はもの凄く足が速い。
それは学校の体育大会の時に知った。
そんなこと今はどうでもいいのかもしれない。
彼はみるみる内に綾瀬ちゃんの所まで走ると
すぐさま、抱きかかえてこちらに向かってくる。
だけど、簡単にはいかなかった。
私達に気づいた相手のヘリが近づいてくる。
射撃しながら。
射撃しながら耀君達に近づいていく。
瞬間、耀君達を追っていたヘリは
空中で爆発して粉々になった。
そして一人の青年がヘリの爆風の中、立っていた。
もはや人間の体じゃないその青年。
その青年を見ている内に耀君達は私達の所にまで来た。
耀君は息切れしながら私に問う。
「優乃……あれって……」
「……うん」
その青年は叫んだ。
「ウアァァァァアアァァァァァァァアァァ!!!!!!!!!!!!!」
あの青年は
空港で龍斗と戦った、あの男だった。
「なんか落とすぞ!!」
護君が指をさす。
その方向には3機のヘリが運んでいた
とてつもなく大きな鉄の箱。
それが島の中央にもの凄い音を立てて落ちた。
その反動で箱が開く。
瞬間、嫌な予感がした。
箱の中で響く叫び声がここにまで届く。
そしてそのヤツらは姿を現した。
大量のゾンビだった。
いや、ゾンビではないのかもしれない。
走っている。
全身の筋肉が透けて見える程に薄い皮。
明らかに感染でのゾンビじゃない。
これは人工的に作られた生物兵器だと思う。
「急げ!!」
私達は地下へと向かう。
2012/01/15 22:36 No.30
OUT★9emSGec3A5_CPd
私達が地下へ向かう途中に
部隊の人達とすれ違う。
みんな、凄い大きな銃を持って走っている。
『絶対にゾンビ共を施設内に入れるな!!』
一番後ろで木山さんがスピーカーを持って叫ぶ。
「木山さん!」
私はいつの間にか、呼んでいた。
「おお、これはどうも。
さぁ、ここは私達に任せて
地下に避難して下さい』
笑顔を見せて木山さんは
優しい声で返答をした後
そのまま、ゾンビ達の方へ消えていく。
私は……わかっていた。
いや。
正確には"予感"がしたという言い方の方が正しいのかもしれない。
「急げ優乃!!」
みんながそう言って
立ち止まる私の前を通り過ぎていく。
そんな中、私は振り返る。
真っ赤に燃え上がる自然。
その自然の森林が燃え上がり
その向こう側から
走るゾンビ達が大群で押し寄せてくる。
激しく、苦しそうに。
又は、殺意を感じさせる叫び声。
それぞれの声を上げながら押し寄せる。
その大群にそびえ立つ、木山さん達。
予感がした。
嫌な予感しかしない。
私の脳内には
木山さん達が血だらけになりながら
ゾンビ達に喰われていくイメージが
勝手に創りあげられていた。
「グギャァァァ!!!!!!!!!」
私のお腹にまで響くその叫び。
私は声のする方に視線を向ける。
その視線の先は
火でオレンジ色に染まった"空"だ。
「あ……ぁ……」
私は"叫び声の正体"を見た瞬間、息が詰まった。
別に残酷なモノを見たわけでもなく
特別ショックな事があったわけでもない。
ただ、信じられなかっただけ。
私が見たモノ、それは。
赤 い 羽 を 持 つ 完 全 な 化 け 物
その化け物の正体。
なぜかだかわからないけど
わかってしまった。
それは……。
空港で龍斗と戦ったあの青年、零。
耀君達を助けた時に叫んでいたのは
もしかしたら変化を遂げる瞬間だったからかもしれない。
ガーゴイルのような体で飛び回っている。
空港で会った時よりも相当酷い体だった。
「あんた!! 何やってんの!!!」
瞬間、一人の女の子に言われる。
ショートヘアーの彼女は
跪く私に駆け寄る。
「立てる!? 立てるなら急いで!」
彼女は私を起こすと
地下の方へ続く階段にまで
手を引いて走ってくれた。
『撃てぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!』
木山さんの掛け声が聞こえた。
でも振り返らなかった。
私達はそのまま地下のホールへ行き
手を膝について息を整える。
「あ……ありがとう」
「ううん! 大丈夫」
「私、桜野優乃っていうの。
あなた、名前教えてくれる?」
「あたし? 海原瀬奈!」
「瀬奈ちゃん、か。
よろしくね」
「瀬奈でいいよ」
そうやって二人で会話している時に
耀君達が駆け寄ってくる。
「何やってたんだよ! 探したんだぞ!」
「ご、ごめんねっ」
私は耀君に怒鳴られる。
すると、瀬奈ちゃんが言う。
「アンタ、うるさい」
「はぁ? なんだよお前」
「私? 海原瀬奈。中学3年」
すると、耀君が笑いながら言う。
「おっ、お前その身長で中3かよ!?」
その時、耀君のみぞおちに
瀬奈ちゃんの拳が突き刺さる。
その場でもがく耀君。
「身長の事を言うんじゃない!
今度言ったら殺すから」
護君が耀君の姿を見てこっそり笑っている。
すると、私はふと思い出し、先生に問う。
「綾瀬ちゃんは?」
「綾瀬なら救護班の方達に見てもらってるわ。
多分、心配ないと思う」
「そっか、良かった……」
私は少し気持ちが楽になる。
そっか、綾瀬ちゃん無事だったんだ。
ようやく立ち上がった耀君は
ふらふらしながらこんな事を瀬奈ちゃんに問う。
「お前、飛行機の乗客か?」
「いや、違うけど」
……!?
ならどうやってここへ来たんだろう。
そして耀君は
その私の疑問を代弁するかのように
瀬奈ちゃんに問う。
「ならお前、どうやってこの島にきた?
それとお前一人でここまできたのか?」
「一気に質問攻めしないでくれる?
私はボートで他に2人の人と来たよ」
「その二人は?」
「一人は上にいると思う。
だってここの部隊の隊長だからね」
……この部隊の隊長?
それはもしかして千葉さんの事なのだろうか。
耀君は続ける。
「もう一人は?」
瞬間、瀬奈ちゃんの肩がびくっと震える。
「もう一人は……」
「もう一人は?」
耀君が聞き返す。
すると、瀬奈ちゃんの瞳から涙が急にこぼれ出す。
今までの雰囲気だと
彼女の涙なんてあり得ない。
彼女の明るく、男気のある性格なのに
どうして泣き出すのだろうか。
も う 一 人 は 一 体 ど う し た ん だ ろ う か ?
『全OTM隊員に告ぐ。
最優先のターゲットを確認。
各機、ターゲットを殺害せよ!!』
OTMの通信が地下にまで聞こえる。
「OTMの最優先ターゲット!? どうゆう事だ!?」
護君が言う。
すると、瀬奈ちゃんが涙を吹きながら
やっとの事で口を開く。
「……もう一人も戦ってる。
ずっとずっと戦ってる。
そいつ、馬鹿でかっこつけたがりなんだけど……」
そこまで言って
瀬奈ちゃんの瞳からは乾いたはずだった涙が再び流れ出す。
それでも彼女は一生懸命に言う。
「誰かのせい……で傷つい……ても
自分の事は……二の次で
いつも……いつもいつも
どんなに辛い事があっても
どんなに痛くても
弱音なんか吐かない人なの」
!?
気づいた時には
私は瀬奈ちゃんの両肩を掴んでこう言っていた。
「その人……名前教えて」
瀬奈ちゃんは驚いた表情で私を見つめる。
だけど、少しずつ和らいだ表情になっていき
最後には納得したような表情になっていった。
……何に納得をしたかはわからない。
そして瀬奈ちゃんは口を開く。
「……星神龍斗」
私は熱いモノがこみ上げて来るのと同時に
階段の向こうへと走り出す。
「優乃!! 今は行くな!!
危険だ!!」
そんな耀君の声も無視して
私は階段を上る。
……やっと階段を登り終えた。
空は相変わらず、赤とオレンジの入り混ざった色をしている。
空から地上に視線を移すと
私はあまりのショックに口を押さえる。
無惨な死体の数々。
これはもう原型をとどめておらず、この死体の全部は
人間の物なのか、ゾンビの物なのか
まったくわからない。
『やれぇぇえぇぇえぇ!!!!!』
地下で聞こえた声とまったく同じ声だった。
数機のヘリが一人の人間に向かって……え?
100m先くらいに私に背を向けた青年が立っている。
私はその瞬間、
こみ上げてきた熱いモノは、"涙" だという事に気づいた。
自然と涙が流れていた。
見覚えのある、その後ろ姿。
私がずっと探していた、彼。
数機のヘリが彼に向かって突撃していく。
2012/01/23 22:16 No.31
OUT★9emSGec3A5_QQs
〜龍斗side〜
オレンジ色に明るいこの島の上空から
俺に向かって数機のヘリが直進してくる。
今、ここにみんなは居るのだろうか?
無事なのか? 傷ついていないのか?
気が付くと、目の前にヘリがある。
「くっ!」
俺はその場で数メートル程、ジャンプをする。
俺の真下には一機のヘリ。
このままの状態で落ちれば
真下のヘリのプロペラで体は粉々になるだろう。
それを見越してなのか、そのヘリはその場から動こうとしない。
「……なんてこった」
俺は一瞬、終わりを感じたがふと思い出した。
ズボンのポケットに一丁の銃。
俺はそれを空中で構える。
狙いはプロペラ。
射撃に腕はない俺だが、一つのプロペラに当たりさえすれば
ヘリはバランスを崩して墜落するだろう。
無我夢中で引き金を引いた。
金属と何かがぶつかる カチン とゆう音が響く。
真下のヘリはバランスを崩して墜落していく。
俺は墜落していくヘリに着地する。
そして、ガラスを破って進入して中を確認する。
「くっ来るなあッ!!!」
マスクをしたパイロットが俺に怯えている。
俺はパイロットの胸ぐらを掴んでパイロットを外に投げ捨てる。
パイロットは叫びながら落ちていく。
地上までの距離は3メートルくらいだから死ぬ事はない。
そして機内には俺一人。
破ったガラスから顔を出すと
遠くで2機のヘリが射撃しながら接近していた。
俺は一度、ヘリから飛び降りて
地面に着地した。
着地した後、ヘリも墜落し
もの凄い爆音をあげ、爆発した。
……瞬間だった。
俺の耳に女の声が入った。
その声は俺の耳に優しく伝わり
その声は少し震える
その声は俺の大好きな声
その声は俺がずっと求めていた声
「龍斗!」
その声のする方へ視線を向ける。
俺は一度、目を疑った。
微量の血が視界に入るが、それでもしっかり見た。
彼女は胸を押さえて顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
優乃だった。
2012/02/11 21:58 No.32
OUT★9emSGec3A5_QQs
〜ALLside〜
まだ高校生の男女が
科学の兵器達と生き残った人間達の戦争の中
もう一度出会う事ができた。
彼、星神龍斗は
自分が化け物になった事を最初は恐れ
そしてまた、認める事が出来なかった。
それでも仲間達の支えがあり
自分の出来る事を自分で探し出し
そして、自分の愛する人を守り抜く為に
生 き て き た 。
彼女、桜野優乃は
この惨事が起こったのが原因で家族を失い
生きる希望を持つことが出来ずに
暗闇をさまよい続けていた。
そして、その暗闇から引きずりあげてくれたのが
今、目の前にいる彼だった。
彼のお陰で少しずつ、生きる希望を取り戻していき
今ではもうはっきりと"生きたい"という願望がある。
そして、はっきりと彼を愛していた。
また彼と……仲間達と過ごせる日を夢見て
生 き て い る 。
二人は抱き合う。
"やっと会えた"という喜びを確かめあうかのように。
やがて、互いの体が離れると彼が言う。
「……行ってくる」
「……うん」
二人、顔を俯かせたまま間が開く。
そこへ一人の女性が走って駆け寄る。
星神龍斗は
「……千葉さん」
と、こぼれるような声で言う。
千葉は優乃の手を引く。
そして龍斗は言う。
「優乃をお願いします」
「分かってる」
そして龍斗は二人に背を向ける。
「……死なないで! 絶対に!」
優乃の声が聞こえた。
彼は思う。
この声を聴くのはもう最後かもしれない、と。
考えてみれば、いつ死んでもおかしくない状況に
何回も陥ったはずだった。
だけど今回は違う。
敵が多すぎる。
例えヘリを倒す事が出来ても
あの詳細不明の化け物の大群を防ぐ事は不可能に近い。
自分もみんなも死んでしまうかもしれない。
それでも彼は振り返って笑った。
思いっきり笑って、こう告げた。
「俺は死なねえよ」
それを聴いた優乃は
あまりにまっすぐな瞳と綺麗な声に少し驚いたが
今、彼女のできる精一杯の笑顔で答える。
「うん!!」
龍斗は頷いた後、再び背を向け
戦場へと走っていく。
2012/02/11 22:35 No.33
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〜龍斗side〜
ボロボロになった上着の袖を捲り
残った2機のヘリコプターが飛んでいる場所へと向かう。
その500メートルくらいの先では
ゾンビ達と隊の人達が戦っていた。
一刻も早く部隊を助けなければいけない状況だ。
やがて、ヘリは俺に気づき
2機が左右、片方ずつから迫ってくる。
……どうすっか。
「龍斗君!」
俺の名前を呼ぶ声がする。
振り返ってみると、千葉さんが何かを投げた。
「っと!」
それは手榴弾だった。
俺はもう一度、千葉さんを見る。
千葉さんはこう叫んだ。
「ピンを外せばドーンだ! よく考えて使って!」
「はい! ありがとうございます!」
よく考えてな……。
ヘリが近づいてくる。
プロペラの音が段々と大きくなっていき
風が俺の髪を揺らしていく。
直感で "今" だと感じた。
俺は手榴弾のピンを外して真上に投げた。
綺麗な縦回転をしながら落下していく手榴弾。
地面と手榴弾が触れあう瞬間、俺は思いきりジャンプした。
瞬間、もの凄い爆発と爆風で俺の体は焼けるように痛む。
だけど
その代わりに俺の体は宙に浮いている、いや違うか。
ぶっ飛んでいる、の方が正しいのかもしれない。
俺の目の前には2機のヘリ。
俺はそのまま、その内一つのヘリの操縦席に飛び込む。
ガラスの破片が操縦士の体に突き刺さっていく。
操縦士は、流れ出る血を止めながら
「……ば、化け物が」
墜落していくヘリの中で俺は操縦士の首を掴んで、問う。
「お前らはどうなんだ?」
操縦士は黙ったまま目を閉じる。
どうやら気絶したようだ。
俺はその男をヘリの外へと放り投げる。
放り投げた先には、数十本の木が生い茂っている林。
そして、そろそろこのヘリも墜落しようとする頃
もう一機のヘリが接近してくる。
突っ込んでくる、そのヘリに俺は迎え撃つ。
変形させた腕で機体を突き破って、その穴から飛び込む。
ヘリは射撃しながら突っ込んでくる為、俺には少し不利だった。
それでも俺はその程度の弾で止まる事はない。
そのまま、すれ違い様に腕でガラスごと操縦士の顔を殴った。
ヘリはフラフラしながら着地地点を探しているようだ。
俺は落下していく。
この高さからだと遠くまで見渡す事が出来る。
俺は落下しながら、ゾンビと部隊の状況を見ようと……。
……!?
な ん だ ア レ は ?
俺の目に一番に入ってきたのは
ゾンビ達と部隊が戦っている場所のずっと向こう。
そこに居る、巨大な鎧をきた怪物。
4メートルはある、その巨体が走りながら
部隊とゾンビがいる場所へと向かう。
まずい。
ゾンビはともかく、あの怪物を相手にすると
いくらなんでも部隊は危険過ぎる。
千葉さん……!
どこだ……!
俺は周りを見渡す。
すると、俺の視線が真上の空へと変わる。
雲の上から何かが落ちてくる。
いや、向かってくる、飛んでくる。
徐々に近づいてくるそれは
赤い羽を持つ、赤い化け物……。
かなりの速度で俺に向かってくる。
落下していく事で風の音が耳に届く中
風のような気持ちの良い音じゃない、
何かを訴える叫びが届いた。
「ホシガミ……リュゥゥトォォォォォォォオォォォォオォオォ!!!!!!」
その声を聴いて俺は直感で感じた。
……零だ。
2012/03/08 20:36 No.34
OUT★9emSGec3A5_xZD
優乃side
もの凄い叫び声を聞き、私は振り返る。
「優乃ちゃん! 急いで!」
千葉さんが私を呼ぶ。
地下の階段まで後一歩の所だったけど
私は龍斗の事しか頭になかった。
自分が助かるなんて事より、龍斗の安否だけが心配だった。
叫び声が聞こえた方に視線を向ける。
私の見た光景は、赤い怪物……零が龍斗の身体に直撃しながら落下していく、その二人の姿だった。
そのまま二人は地面に落下した。
凄い量の砂煙が舞う。 私の視界も閉ざされる。
しかし、強すぎるくらいの風が吹いているため
砂煙は一瞬にして無くなっていく。
私も瞼を少しずつ開いていって、視界を徐々に大きくしていく。
砂煙が消え去った後には、二人はもうすでに体勢を整えて立ち尽くしていた。
すると、私達を目指して走ってくる隊員が一人。
その隊員は龍斗達を通り過ぎた後、第一声に
「千葉さん!」
と、声を張り上げた。
「どうした?」
と千葉さんは真剣な眼差しで見つめる。
息を切らしながら、その男性隊員は告げる。
「先頭部隊と第2部隊が……か、壊滅状態に……」
「な、なんだと?」
「はい……初めのゾンビ達は多少動きが素早かったものの
こちら側が優勢でした……。
……しかし戦闘開始からしばらく経ってから
巨大な怪物が鉄の箱から出てきて……」
「巨大な怪物?」
千葉さんが問う。
「は、はい……。
その怪物は敵、味方関係なく踏みつぶし
もうゾンビ達は脅威にはならないものの
その怪物の仕業で部隊が壊滅してしまう可能性が……!!」
その隊員が言い終えた瞬間だった。
島 が 恐 怖 で 凍 り つ く 。
「シューシュー……」
全身鎧で身にまとったその姿は
まるで映画の中に出てくる大怪獣のようだった。
龍斗も零もその怪物を見ている。
この二人の戦闘を中断させる程、怪物は私達を圧倒させた。
「おい!山内!
今すぐに戦車と残りの隊員を集めろ!
このままでは地下ごと破壊されてしまう! 急げ!」
千葉さんは
山内と呼ばれるその男性隊員に言う。
「はい!」
山内隊員は、すぐさま走り出す。
「優乃ちゃん。
いい加減に地下に行かないと」
「……はい。
だけど私は……」
「優乃ちゃん……」
すると
「千葉。 もういいじゃないか」
振り返ると、木山さんが笑顔で立っていた。
「な……なに言ってるんですか! 木山さん!
これは民間人の命に関わる重要な事です!」
千葉さんが珍しく動揺する様子を見せる。
しかし、木山さんは続ける。
「確かに民間人を守る事は部隊にとって最大の任務だ。
だが、俺達にはそれより守るべき大切な事がある。
それはなんだ? 千葉?」
「……民間人の意志を尊重する」
「そうだ。
どんなに危機的状況な人間でも
"こうしたい" "こうありたい"
と、願う。
それは千葉。 お前にはとくに理解できるだろう?」
「……はい。
それでも生きていく事は
何よりも一番大切な事だと私はあなたから学びました」
「ああ。生きる事は大切だ。
だが、一人一人の人間には
その人の生き方がある。
その生き方を、その人の意志を俺達が邪魔してどうするんだ。
俺達はその人間の生き方を守る為に存在する。
それに、この娘は死のうだなんて思っていない筈だ。な?」
私は大きく頷く。
私は、みんなを守って戦ってる龍斗を見守りたいだけ。
この現実を変えてくれるかもしれない、龍斗を。
千葉さんは小さく呟く。
「生き方を守る為に……」
「そうだ。
さぁ仕事だ!千葉!
このデカブツを倒すんだ!」
「はいっ!!」
そして二人は施設内へと戻る。
私は再び龍斗達に視線を戻す。
しかし、その場所には零はいなかった。
「ウァァアァアアァ!!!!」
その声のする方へ視線を向けると
零が怪物と戦っている。
怪物は両の手に持つ斧を振り回しながら戦い
零は空中からの攻撃。
私は龍斗の方へと向かう。
「龍斗!」
「優乃……」
「どうしたの……?」
「なんだろうな……。
俺、危ねぇかも……ハハッ、今更だな」
この数十分後、私はこの言葉の意味を
理解してしまう事になる。
2012/03/19 22:38 No.35
OUT★k7CdtTRL98_nXr
PCを変更しました^^
OUTですw
お久しぶりですね^^
本文
〜龍斗side〜
激しく頭が痛い
本当に狂ってしまいそうになるほど。
俺の身体の内側で何かが動いている、そんな感覚がする。
足元がもたついて、転んでしまった。
……一体どうしたんだろう。
こんな時に限って。
「龍斗! どうしたの!?」
優乃が心配そうな顔で俺を見つめる。
……ダメだ、言葉も出やしない。
「なんで? なんで? どうしたの!?
誰か……誰か来てください!!」
優乃は大きく首を横に振りながら叫ぶ。
……普段はこんなに大きな声をあげることはないのに
俺の為に助けを呼んでくれているのだろうか。
大きな声を出すことに慣れていないのが、すぐわかってしまう。
震えた声で一生懸命に助けを求めている。
その声は戦いの醜い音声でかき消されてしまうけど
俺にとっては、いちばん心に響く。
その声は俺の中に溜まった熱いモノをこみ上げさせる。
本当に涙が出てしまう。
……それでもその声を聞きつけてきたのはゾンビだった。
もの凄い速度で俺と優乃に近寄ってくる。
俺には力が残っていない。
逃げろ、優乃!
逃げてくれ!!
そんな少ない口数さえも言えず、さらに動くことができない。
……悔しい。
身体のパーツ一つ一つが、いうことを聞かない。
守 れ な い 。
「誰かーっ!! 龍斗を……」
こんな絶望的な状況でも俺の傍にいてくれて
必死に助けを求めてくれている。
俺も心の底で叫ぶ。
”誰か優乃を……”
目前に迫ったゾンビ。
瞬間、俺達に背を向けゾンビに対抗する姿。
「こいつ等に触れるんぢゃねぇぇ!!」
声を聴いて、その人が誰なのか分かった。
右手にパイプを握りしめ、立ちはだかる姿。
耀だった。
ゾンビは耀に飛び掛かり、覆いかぶさる。
それでも耀はゾンビを蹴り返し、頭めがけてパイプで殴りつける。
やがてゾンビは動かなくなる。
幸い、一匹のゾンビだけだった。
「耀君……ありがとう」
優乃の一言に耀は振り返ると
すぐに駆けつける。
「この……ばっか野郎が。
無茶しやがって……。
死ぬなんて言うんじゃねえぞ」
「た……た、たす……かっ……た。
あ……りが……とう」
やっと口にできた言葉なのに
耀は、悲しげな表情をして顔を俯かせる。
「お前……こんなになるまで俺らを守ってくれてたのかよ……。
ったく、無理しすぎなんだよ……なぁ?」
弱々しい耀の声と共に俺の視界が狭くなっていく。
?
薄く映った視界のずっと先で誰かが立っている。
その瞬間、かなり大きな銃声が響き渡り
同時に俺の身体に大量の鮮血が降り注ぐ。
優乃が口を押えて、茫然としている。
そして俺の目の前で耀が倒れた。
2012/04/13 22:06 No.36
OUT★k7CdtTRL98_nXr
「ったく……せっかく2人まとめて殺されるっていう
最高のシーンを潰してくれやがって」
そう言って男は近づいてくる。
俺はさっきまで閉じきった瞼をこじ開く。
ぼやけながらもその男をとらえた。
その男は耀の横たわった体に足を乗せる。
「よぉ? この死に損ないの化け物君?」
俺を見下ろす、この男は
さっきまで地下で閉じ込められていたハズの人物。
「なんだ? その目つきは?」
そう言って俺の目前まで足を運び、俺の顔面を強く蹴りつける。
手足は動かない癖に痛みだけは感じとってしまう。
「ふ……く……だ……」
「ピーンポーン。大正解!
どうだ? この戦い、精一杯楽しんだか?」
!?
「なぜ?……といった顔をしているな。
馬鹿が、まだ気が付いていないようだな」
そう言い終えると福田は大きく笑い出す。
そして笑い終えた後、ゆっくり口を開いた。
「……お前は死ぬんだよ。
今までため込んでいたものが、ついにドーン」
瞬間、横で ドサ と音がする。
「あれ? どうしたのそんな所に座り混んじゃって。
でもそうだよね〜。好きな男の子が目の前で死んじゃうんだもん。
辛くて腰が抜けちゃうよね! なんなら俺の事好きになるぅ?」
福田は座りこむ優乃に向かって
そう言い放った後、高笑いする。
俺は自分の顔が怒りで歪んでいるのが理解できた。
それでも体は反応しない。
だから福田の言っている事が真実……
「とゆーわけで、お前のお遊びはここまで。
星神龍斗、お前にはもうなんの能力も残っていない。
自分がこんな姿になった理由もわからないまま死ぬなんて
とんだ雑魚野郎だなぁ……へっへっへ」
そう言って俺に向けて銃を向ける。
俺は終りを確信し、目を閉じる。
そっか、もう今までとは違うのか。
この弾が当たれば俺は死ぬ。
俺にはまだやるべき事があるってゆーのによぉ……。
「……なんのつもりだ?」
と、福田が言う。
ゆっくり目を開けた。
「私は……絶対にどかない」
優乃が俺の前に立っていた。
2012/04/14 23:09 No.37
OUT★k7CdtTRL98_nXr
声がでない。
俺は絶対にこの状況は避けなければいけない。
でも優乃のその後ろ姿は
俺には力強く見えたのは事実、そしてやっぱり
嬉 し か っ た 。
でもだめだ。
絶対に失ってはいけない、大切な人を無くしてしまう。
……くそっ!!
動け! 動いてくれよ! 俺の体!!
そんな俺の思いとは裏腹に状況は悪化していく。
「もう一度言う。どけ」
「どかない」
優乃はピクリとも動かずにその場にとどまる。
福田の持つ銃から カチャ という音が漏れる。
……やばい、やばい、やばい!!
優乃、逃げてくれ!!
……?
銃声が聞こえてこない。
俺は福田をもう一度しっかりと見つめる。
? あきらかに福田の動きがおかしい。
「離せっ! 今度こそ脳みそにぶち込むぞ!」
叫ぶ福田。
福田の足元には
耀が倒れたまま、福田の足を掴んでいる。
「てめぇが先に死ぬかぁ!!」
たまらず福田は耀に銃を向ける。
ここで優乃が福田に向かって走り出す。
おそらく耀を守るために。
……なにやってんだよ俺。
そう思いながらゆっくりと手を握りしめる。
この程度の力しか残っていない、残っていないんだ。
本当に悔しい。
うぁああぁああぁぁあぁああぁあぁぁぁぁああぁあぁああ
ぁぁあぁぁああぁぁあああぁぁああぁぁぁぁぁぁぁあああ…。
、
2012/04/19 19:31 No.38
OUT★k7CdtTRL98_KMC
優乃side
行かなきゃ。
私が行って助けないと……!
そうやって心の中で叫んでいる裏側では
"私が行った所で何ができる?"
"もしかしたら私が死ぬかもしれない"
そんな不安が頭の中をグルグルと周っていた。
でも、その中で私の背中を押してくれるモノがある。
今まで一緒に戦ってきた耀君達の姿。
そして少しずつ深まっていく絆の中で
私の中で少しずつ"勇気"というモノが溢れてくるようになった。
いつもみんなの足を引っ張っていた私。
そんな自分が嫌で泣いていた時期もあった。
それでも仲間の誰かを失い
自分の非力さを身に沁みながら悲しむのよりかは
ず っ と マ シ だ と 思 う 。
今までの桜野優乃を思い返しながら
私は耀君の元へと向かう。
「え……?」
……覚悟を決めたのに私は走るのをやめた。
「ふん。やっと死んだか、このくそガキめ」
し……死んだ?
誰が?
私は福田の足元を見る。
そこには……
動 か な く な っ た 耀 君 の 体 。
それでも耀君は
ず っ と 福 田 の 足 を 掴 ん で い た 。
2012/04/25 23:04 No.39
OUT★k7CdtTRL98_KMC
数分前 耀side
痛てぇ……なんだよこの痛さはよォ。
「離せ! このくそガキぃ!」
へへっ。
困ってやがる、福田の野郎。
お前みたいなゲス野郎に龍斗達を殺させてたまるかよ。
どーせ、撃たれたんだ。
龍斗、桜野「、それにみんな。
お前らの為にこのボロボロの身体、張ってやるよ。
護、早く千葉さん達呼んでこいよ。
……そういえば護とは小・中・高って一緒だったな。
アイツの馬鹿っぷりには、だいぶ救われたぜ。
得にこないだの集団宿泊の護の一発芸は最高だったなぁ……くくっ。
泰子先生は綺麗だったなぁ。
でも先生のせいで俺は一回、ゾンビになりかけたし。
なんだよ……ゴキブリ程度で叫びやがって、くくくっ。
まぁいいや、綺麗だから許す……あれ、なんだそりゃ。
綾瀬は、なんというか……男だったな。
一回、アイツが振られた時に護と一緒にからかったら
二人まとめて保健室に搬送された記憶が……。
まぁ、持ち前の元気さで頑張ってもらいたいもんだな!
桜野は、タイプだったな〜。
可愛くて、女の子っぽくてさぁ。
でも龍斗にゾッコンしてんだよな〜、羨ましいぜ。
一回、抱きしめたかったなーなんちって。
いや、あながち嘘でもないかな。
ホントに好きだったのかもしれんな。
でも俺じゃ幸せにすることなんか出来ない。
桜野は龍斗を求め、龍斗は桜野を求めている。
桜野を幸せにする事ができるのは、龍斗だけだよ。
……って桜野?
なんでこっちに走ってんだよ。
馬鹿じゃねーの? 死ぬぞ?
いいよ、もう俺死ぬんだよ?
それわかってんの? 助けなんて必要ねぇよ!
……なんで泣かせるんだよ、桜野。
死ぬ間際の顔が泣き顔なんて最高にかっこ悪いんだよ。
……なぁ龍斗、責任取れよ。
お前の恋人だろ?
このままじゃ桜野死ぬぞ?
何寝てるんだよ。 男なら女は守るもんだろ?
お前はいつもそうだ。
肝心な時にいつも倒れてて、どうでもいい時に身体を張る。
あの時だってそうだ。
俺がサッカー部の先輩の反感をかって
ボコボコに殴られた時にだって
『お前は悪くなんかねー』
とか言って、お前は先輩と喧嘩しやがって。
おかげで助かってんだよ、こっちは。
お人好し過ぎんだよ……。
……なんだよお前ら全員、俺を号泣させようってか?
もういいよ。 泣き疲れたよ。
次から次へと涙があふれてきやがる。
もう会えないと思ったら涙が止まらない。
まだ一緒に過ごしたかった。
生まれ変わったらまた会おうなんて事は言わない。
でも……でも。
お前らとの記憶だけは絶対に忘れたくない。
……じゃあ、俺いってくる。
みんな、さよなら。
橋上耀 死亡。
2012/04/26 00:03 No.40